母の話が聞きたい娘として、そして娘の助けになりたい母として企画した本『Mommy Book』

アルクが、2021年2月19日に出版した、母と子で贈り合うためのライティングブック『Mommy Book』(以下、マミーブック)。

マミーブックは、2万7000人に聞いた「お母さんに聞きたいこと」が200問収録された本で、お母さんが質問への回答を書き込んで子どもに渡す、という使い方をします。

ここでは担当編集者・峯山が、なぜマミーブックを作りたかったのか、そして本書が母と子にとってどのような役割を果たすのかについて、考えをお伝えしたいと思います。


元々は、自分が娘に書くために韓国で購入した本

マミーブックは、原書が韓国で出版されており、この度アルクが出版したのはその日本語翻訳版です。韓国では、刊行以来毎年5月のベストセラーになる、つまり母の日のプレゼントとしてよく子から母へ贈られる書籍であり、累計販売部数は38万部に達しています。

私が原書のマミーブックを韓国の書店で発見した時は、日本版を企画する考えはもっておらず、ただ自分の韓国語の勉強もかねて娘に向けて書きためたいと思って購入しました(娘は生粋の日本人ですが)。

マミーブックは韓国では、子から母へ「書いてね」と贈る使い方が主流ですが、母親が買って、勝手に埋めて、子どもに贈っても意味がある本です。友人女性への出産祝いに使われたりもします。

私が娘にこの本を書きたいと考えたのは、書いたことが一言でも、彼女の助けになったらいいなと思ったためです。ページをめくると、私が娘にいつか伝えたいと思っていることをちりばめられる質問が、たくさん入っていました。

「20代の価値観を表すお母さんだけの人生哲学(名言)があるとしたら?」

「私がお父さんとそっくりな人と結婚すると言ったら賛成する?」

「今までで一番悔しかったのはいつ?」

言いたいことがたくさん浮かんできました。

生きていれば、つまずいたり心が折れたりすることが必ずあると思います。中には、女性特有の苦労も。そういうことを私も経験してきた中で、私の実体験や考えが、娘の悩みや不安を軽くするヒントや反面教師になったらいいなと思います。「お母さんも失敗を繰り返して今なんだかんだ幸せそうだから、私も何とかなるか!」でもいい。

また、日本の感覚より少しだけストレートな質問内容が、「日本人が持つ一種の羞恥心や謙遜を捨てて惜しみなく愛情を伝えて育てたい」という自身の子育て方針にもなんとなく合致し、本書をレジに持っていきました。

母の病がきっかけで日本語版を企画

本を購入して数カ月後、コロナウィルスが日本にもやってきました。地方にいる両親に会いに行けない日々が続く中、母が持病の糖尿病をこじらせて片目を失明させました。見舞いに行けない状況で、「当たり前にいると思っている母も、老いるしいつかいなくなるんだ」と実感しました。

それと同時に、「会えないままの別れになったら、後悔する」とも思いました。話し足りないし、仮に今葬式になっても、母としての母は知っているけれど母の人生がどんなものだったかはいまいち語れる自信がないのです(さっきから縁起でもない)。今までも母と二人で旅行に行くなど、話をする機会はいくらでもあったのに、いざ深い話をするのは照れくさく、つい日常会話に終始してうん十年でした。

そのような時期に、日本語のマミーブックがあったら母も書けるのに、書けるうちに母のことを書いてほしい、と思い至り、日本語版を提案しました。かなり私情から企画していますが、母としての私、子どもとしての私と同じような思いでマミーブックを手に取ってくれる方が他にもいるだろうと思いました。

後に知ったことですが、韓国の版元でマミーブックを作った編集者の方は、お父様が脳卒中で倒れられたときに、この本を思いついたのだそうです(韓国では、マミーブックより先にダディブックが出ています)。

本書は、アルクにとって新しいジャンルの企画であり(出版事業は英語学習書籍が主力)、社内上層部の理解を得るのに苦労もありましたが、コロナ禍での需要も見込まれて企画が実現しました。実現までは、普段淡々と仕事を共にしていた社内の女性の先輩方が処々で背中を押してくれたり、助け船を出してくれたりしたのが印象的で、本書に共感してくれる人はいるという実感もだんだんと強くなりました。

こうして日本語版が出版され、娘も将来韓国語を解読する必要がなくなりました。

今、マミーブックがあることの意義

私のような状況ではなくても、今はコロナのせいもあり、両親や身近な人の明日が当たり前のものではないと再認識させられることが多いときではないかと思います。そしてそれは自分にも言えることで、今伝えられることを子どもに残すことに意味を感じます。

コロナでなくても、私が急にぽっくりいったとして、成長した娘が私のことを思い出せなくても(まだ小さいので)、本書があれば「母がどんな人間だったか」と「自分が愛されていたこと」を少しは感じられると思います。それがあるのとないのとでは、私には大きな違いです。いなくなってからでは聞けない・伝えられないことを、いつかではなく今、書き残しておくことは、母や子にとって大きな意味を持つと思います。

そして、本書はコミュニケーションツールとしても母と子に新しい発見や互いの理解をもたらすと考えています。書く形だからこそ、日本人が面と向かって聞けないようなことを、お母さんにインタビューできるのです。

「どんな20代を過ごしたの?」

「お母さんに家庭がなかったとしたらやりたいことは何?」

「老後を過ごしたい場所はある?」

今まで頭によぎったことがあるけれど、一度も口に出したことがない質問がたくさん入っています。聞かないと知らないままだった話が聞けることと思います。忘れていた自分の子ども時代について、お母さんが新たな事実を教えてくれることもあるかもしれません。

私の場合は母が筆不精で、誕生日に手紙が欲しいと言ってもくれない人ですが、さすがにこの本を渡したときは、「頭の体操ありがとう、全部は無理かもしれないけど書くわ」と言いました。質問に回答する形式なので、そういうお母さんでも書きやすいと思います。

実際に書いたページを少しだけ見せてもらいましたが、数ページだけでも感動したり、共感したり、回想したり、笑ったり、いろいろな気持ちになりました。本当に渡してよかったです。

一方、自分が書く側なら、普段は伝える機会を逃しているけれど、いつか必要な時に伝えたいと思っている大事なメッセージを、伝え漏らさないように書き溜めておくことができます。「困ったことがあったらいつでも頼れ」「あなたは愛されている」「こんな異性に気を付けろ」など、200問の回答の中に、親として言っておきたいことはだいたい含ませることができると思います。

これを書き溜めて、成長した娘に渡したときの反応が、今からすごく楽しみです。

私も含め、日本人は照れくさくて感情や愛情を素直に伝えるのが苦手だったり、遠慮して聞きたいことが聞けなかったり、「察せよ」に頼る場面も多いですよね。そんな方にこそ、マミーブックで小さな「聞いてみてよかった」「伝えておいてよかった」体験を届けられればいいなと思います。

もしこの本の質問を日本人が考えていたら、安全で差し障りない、常にあったかい質問ばかりになりそうなものですが、本書には、韓国の方の合理的に聞きたいことを聞くような部分やユーモアが反映された質問がちょうどよい塩梅で入っています。そんな質問たちの力を借りてみてはいかがでしょうか。もちろん、元から率直なコミュニケーションを好む方にはぴったりの本です。

お母さまやお子さまにマミーブックを贈ってくださる方々にとって、本書が何らかの役割を果たすことを願っています。


峯山麻衣子(みねやま・まいこ)

株式会社アルク・書籍編集チーム所属。大阪大学外国語学部卒業後、損害保険会社を経て編集職へ。アルク入社後、主に英語学習書籍の企画・編集に携わる。直近の担当書籍は『英語で仕事をすることになったら読む本』(マヤ・バーダマン著)

Instagram: https://www.instagram.com/felizviaje/

twitterはじめました: https://twitter.com/maiko_mine

 

▼書籍の詳細はこちら

『Mommy Book』

◇プレスリリース

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001400.000000888.html


文:アルク 第3編集部

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