「観光立国」の前進には、通訳ガイドが必要です

通訳案内士

インバウンド業界への提案、そして全国通訳案内士(通訳ガイド)の窮状を島崎秀定さんにレポートいただきます。


新型コロナウイルス感染拡大の影響

新型コロナウイルスの影響は、日に日に深刻さを増しています。私の所属する団体、日本文化体験交流塾では3月中旬、全国通訳案内士の会員に稼働状況をアンケートしました。回答した60人によると、1月24日から7月までの約半年の収入見込みが平均して前年比75パーセント減、金額にして110万円の減少となることが分かりました。

この調査は3月17日~18日時点のものですので、東京オリンピック・パラリンピックの延期が決まった今、実施すると減少幅はさらに拡大するものと思われます。私自身も4月13日現在、7月までの収入見込みは前年比95パーセント減になっています。

国へ支援のお願い

全国通訳案内士の収入の外国人観光客依存率は100パーセントです。この状態が長引けば、多くの全国通訳案内士は廃業せざるを得なくなるでしょう。そうなると、外国人観光客が戻ってきたときに案内するプロがいないという状態になります。

将来的にも観光立国という方針を継続するのであれば、決して通訳案内士を消滅させてはなりません。そのためにも、ぜひ国には、全国通訳案内士が業務を継続していけるための収入面での支援をお願いしたいと思います。

インバウンド関連企業へのご提案

全国通訳案内士は、観光・宿泊施設、飲食店、ショップ、交通機関などを毎日のように外国人と利用しています。すぐ隣で彼らの反応を見ており、さまざまな施設の長所短所を把握しています。

現在、インバウンド関連企業はどこも収入減で苦しんでいることとは思いますが、新型コロナ収束時に他社と差別化して成長するために、全国通訳案内士の意見を取り入れてみてはいかがでしょうか? 必ずや業務改善につながるものと思います。普段忙しくてガイド以外の業務ができないベテラン通訳案内士も、今なら時間が余っています。非正規社員での仕事を求めている人も多いと思われ、マッチしやすいはずです。

全国通訳案内士へのご提案

通訳案内士は国の支援を期待して待っているだけではいけません。この機会にできることをしませんか?

①自己研鑽に努める
ここ数年は訪日外国人が急増し、勉強をする間もないほど忙しかった人も少なくないと思います。ここで一度立ち止まって、スキルアップや振り返りをしてみてはいかがでしょうか。

例えば茶道や着付けといった、ある程度時間を要する日本文化を学ぶのに良い機会です。忙しくなると、決まった日時の講座は取りにくいものです。また、外出自粛の状況が続く場合は、オンラインを活用した学習もいいでしょう。ネイティブスピーカーによるレッスンもありますし、一歩進んで通訳・翻訳など専門的な技術を学ぶコースもあります。

読書をして知識を広げるのもいいですね。私は新人の頃に受けた研修の資料を読み返していますが、せっかく高いお金を払って参加したのに内容をすっかり忘れているものも多く、いい復習の機会になっています。収束が見えてきた際には、日本各地を下見に訪れるのもよいでしょう。

②ガイドに関連する仕事に幅を広げる
全国通訳案内士は語学のプロであり、インバウンドのプロです。こうした経験を生かせる仕事をしてみてはいかがでしょう。例えば、通訳・翻訳の仕事。新型コロナの影響で対面の仕事は減少したかもしれませんが、一方で報道に関わる仕事は増えています。語学関連の仕事は、本業のガイディングの幅を広げることにもつながります。

また、収束後に今から備える積極的なインバウンド関連企業もあり、語学のプロやインバウンドの経験者を求めています。契約社員やアルバイトという働き方を選べば、いずれ外国人観光客が戻ってきたときに、ガイドに復帰することができます。やまとごころキャリアなどで情報が探せます。

仕事の幅を広げておくと、将来また難局を迎えた際にも役立つはずです。

③情報発信をする
これまでに習得したインバウンド分野の専門知識を、通訳案内士仲間やインバウンド産業に関わる方、外国人に向けて発信してはいかがでしょう。ウェブサイト、ブログ、SNSの他、電子書籍の発行もあり、収入につながる可能性もあるかもしれません。こうした活動は、必ずガイドの仕事にもプラスになります。

延期になったものの、2021年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。いずれまた多くの訪日外国人が戻ってきます。そのときに良い仕事ができるように、一緒に危機を乗り越えていきましょう!


文: 島崎秀定 (全国通訳案内士)
イラスト: つぼいひろき

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