外国人客にも人気の現代アートの島

外国人客にも人気の現代アートの島

全国通訳案内士として各地をめぐり、日本の魅力をガイドする松本美江さんに、リピーター客も訪れる「アートの島」を紹介いただきます。


時間がかかっても行きたいアートの島々

瀬戸内海の小さな島々が「現代アートの島」として、外国人に大人気の訪問地になっています。特に有名なのが直島と豊島(てしま)です。共に岡山県の宇野港か香川県の高松港からフェリーに乗る必要があり、気軽に行ける場所ではありません。

こうしたひと手間かかる場所にありながら、島には外国人観光客が溢れていて、日本人の観光客数を超えるそうです。直島に向かうフェリーの中でも、乗客のほとんどが外国人で、島のシンボルである草間彌生作の大きな赤いかぼちゃのオブジェ『赤かぼちゃ』が見えてくると一斉に写真を撮り始めます。

アートファン以外でも楽しめる島の成り立ち

私がガイドする個人旅行のお客さまの多くが、日本に2週間ほど滞在します。そして約3割の方の旅程にこれらの島が入っています。以前は現代アートに特別関心のある方だけでしたが、今ではご家族連れの方なども穏やかな瀬戸内海に面した人口約3000人、面積わずか8km²の小さな島をサイクリングでアート巡りをするなどして楽しんでいます。

ほとんどのお客さまは直島にある美術館併設のホテルに宿泊し、そこを拠点にフェリーで豊島や犬島(地図の右上の島)へも足を延ばします。

かつて漁村として栄えた直島は、明治以降、人口流出と漁業の不振から金属製錬の工場を誘致して島民は生計を立てました。しかし1970年代になると公害が問題になったため、それを解決しつつ島の自然を生かせる方策を求めて、当時の町長が福武書店の創業者に相談。著名な建築家、安藤忠雄氏にシンボルとなるホテルや美術館の設計を依頼して、世界にもまれな現代アートの島に成長したのです。

リピーターを作る「世界で一番すてきな場所」

お客さまが感激するのが、直島の地中美術館と豊島の豊島美術館です。両方に共通しているのが、建物とアート作品、そして周囲の自然が一体化していること、また作品数がとても少ないことです。

地中美術館では、クロード・モネを含む3名のアーティストの作品と建物のテーマが、どちらも「光」であることも興味深いです。お客さまも、自然光が入ってくる白い部屋でモネの『睡蓮』と対面し「まるでモネの庭に立っているような気持ちになるわ」と感動されます。

さらに圧倒的な印象を残すのが、建物そのものがアートの豊島美術館です。靴を脱ぎ、水滴のような形の真っ白な空間に入ると、天井の大きな丸い開口部から自然の光が入り、足元の床のあちこちから水が湧き出てきます。それが丸い水滴になって床を流れるのを見ていると、時間のたつのを忘れます。2年前にご一緒したテキサスからのご家族は、ここをとても気に入って2時間もじっと床に座って動こうとしませんでした。「世界で一番素晴らしい場所だと思うわ。絶対にまた来るから」と言って帰国され、約束通り今年の夏にも豊島にご一緒することになっています。

そこに行くためだけに旅をする価値がある新名所

日本にはたくさんのアートの名所ができて、日本人以上に外国人の間で知られるようになっています。有名なミシュランの三つ星の基準は、「わざわざ旅行する価値がある場所」とのことですが、瀬戸内の島々をはじめとして、滋賀のMIHO MUSEUM、島根の足立美術館、小田原の江之浦測候所、熱海のMOA美術館金沢21世紀美術館なども、そこへ行くためだけに旅をする価値がある新しい日本の名所になっています。


文: 松本美江 (全国通訳案内士)
イラスト: つぼいひろき

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