留学をその先の未来へ――中長期留学の生徒がぶつかりやすい“壁”

アルク留学センター

留学生活では、異文化の壁にぶつかることがよくあります。”食事が口に合わない”は分かりやすい例でしょう。ですが、本当の意味での異文化の壁は、日常のささいな出来事に潜んでいるものです。今回はニュージーランドに留学中の高校1年生、A君の体験を紹介します。
※本記事の写真は全てイメージです。本文に登場する人物との関係は一切ありません。


ふとした行動でぶつかった壁

留学して半年以上が経ったA君。学校やホームステイにもすっかり慣れ、楽しい日々を送っていました。もちろん英語に苦戦することもありましたが、授業以外にも得意なピアノの練習をするなど、何事にも精力的に取り組んでいました。

そんなある日、テスト期間のため昼休みの音楽室の使用が禁止されていた週に、クラスメートが利用する姿を目にしたA君は、もしかしたら練習可能になったのかもしれないと、自分も許可を取ろうと音楽の先生を探しました。しかしなかなか先生が見つからず、焦る気持ちを抱えていると、先生が教室に入っていく姿が目に入りました。

A君は急いで先生のもとへ向かいます。そして、先生がドアを閉めようとした瞬間、足でドアを止めたことで引き留めに成功しました。これにより、音楽室を利用していたクラスメートは当日音楽のテストがあり、随分前から練習の許可を取っていたことが分かりました。しかし、この何気ないA君の行動が後々大きな問題となってしまいます。

アルク留学センター

三者面談を受けるも、心に残ったわだかまり

足でドアを止めた行為が問題視されたA君。その場できちんと謝罪の言葉を述べましたが、話はそこで終わらず、学校から三者面談の呼び出しを受けることになってしまいました。

翌週、A君は留学中のガーディアン(後見人)である日本人女性と面談に出席。学校側からは、当事者である音楽の先生に加え、学校で問題が起きた際に客観的な立場から問題解決を行う仲裁専門のスタッフが出席しました。

面談では問題点を注意されるのではなく、双方の考えや思いを互いに伝える機会が与えられ、A君は自分の行動に非があったことを認め、真摯に考えを伝えました。最終的に仲裁役より、悪気のない行動でも自分の話し方やタイミング、行動で相手を尊重した行動かそうでないか異なる印象を与えてしまうこと、それを念頭に責任を持って考えて行動できるようになろうというアドバイスを受け、面談を終えるかたちとなりました。自分の間違えを理解できたA君でしたが、少し心にモヤモヤを抱えることになります。

アルク留学センター

日本流「空気を読む」は通用しない?

今まで経験したことのない状況に加え、英語での面談という緊張状態から解放されたA君は、ガーディアンに率直な気持ちを話し始めました。

その場で自分の非を認め、しっかり謝罪をしたにもかかわらず、面談をするほど大きな問題に発展してしまったのはなぜなのだろう。この驚きと疑問がA君をモヤモヤさせていたのです。ニュージーランド在住歴の長いガーディアンは、A君にニュージーランドと日本の考え方や教育方針の違いを説明しながら、今回の面談の意味を伝えました。

日本では”空気を読む”という表現があるように、他者の考えをくんで行動することがあります。一方、ニュージーランドでは幼い頃から自分の思いや意見をしっかり伝えるのが一般的であり、学校でも自身の意見を伝える教育がなされます。また、自分の意見や行動に責任を持ち、他者の意見や思いを尊重することも大変重要視されます。

今回の面談はA君に謝罪を求めるためのものではなく、「何が悪かったのか、今後どうしていけばよいのか、という点をしっかり考える機会を持ってほしい」という目的のもと開かれたものでした。

しかし、未成年のA君にはそれほど簡単に理解できるものではありません。彼にしてみれば、面談は先生が事を大きくしたように思えて仕方なかったのです。「頭では理解できるけれど……」という気持ちを抱えながら、A君はホームステイ先へ帰っていきました。

心の葛藤は「視野の広がる過程」

その後も、日々の小さな出来事から、A君は”他者を尊重する”という考え方に違和感を覚えることもあるようです。しかし、教師、ガーディアン、保護者は、A君の意見を聞きながら彼自身で深く考えるよう促し続けています。A君もまた日々の生活の中で少しずつ立ち止まりながら、他者の思いを考えると同時に自分と向き合う努力をしています。

こうした心の葛藤はA君だけでなく中長期の留学生の多くが経験することであり、それぞれに答えを見つけています。自分の気持ちや意見から他者に目を向け、考えるこの葛藤の時期を”視野が広がっていく過程”のようにも感じます。A君の留学生活は、現在も続いています。彼が今後、どんな答えを見つけていくのかとても楽しみです。

1学期、1年間など、ご希望の期間で留学いただける「期間留学」をアルク留学センターのウェブサイトでご紹介しています。資料請求、お問い合わせも受け付けています。
https://tanki-ryugaku.alc.co.jp/lp/study_abroad_2019/

アルク留学センター
Tel: 03-3556-1325 (月~土 10:00~18:00)
E-mail: jr-study@alc.co.jp
https://tanki-ryugaku.alc.co.jp/inquiry/


取材・文: アルク留学センター


本記事は、『英語の先生応援マガジン』2019年冬号に掲載した「留学をその先の未来へ」からの転載です。

“本気の英語の先生”をアルクが応援する、登録制(会員制)ウェブサイト「英語の先生応援サイト(LTAF: Learning Teachers’ and Advisors’ Forum)」もぜひご覧ください。

関連記事

  1. キクタン 私と学びとアルクーー50周年に寄せていただいたエピソード【第1回…
  2. もう一度英語 ビジネス Plus スマホだけでも学習できるのが魅力。耳が英語に慣れました
  3. TOEIC(R) LISTENING AND READING TEST 完全攻略700点コース 13カ月で440点→810点達成! 学習が習慣になり、目標以上の…
  4. 島﨑美奈子先生 東京都の訪日外国人医療の現状について聞く ──言葉とコミュニケー…
  5. ヒアリングマラソン 発音が良くなったと褒められ、TOEICのリスニングパートで485…
  6. アルク特製カレンダー アルク特製カレンダー2020をダウンロード【検定カレンダー、英語…
  7. Bell Teacher Campus 【英語の先生向け】夏休み海外研修レポート:イギリス(2)
  8. 外国人観光客が困っていること 外国人観光客は、こんなことに困っています――旅行者フレンドリーな…
PAGE TOP