留学をその先の未来へ――英語嫌いの男子生徒がイギリスへ

イギリス現地校体験

短期留学の中には、日本から引率者が同行するグループプログラムがあります。留学に対して大きな不安が拭い切れない生徒でも安心して挑戦できるのが、大きな特徴です。世界各国から参加者が集まるイギリスの寮制私立校キャンパスを利用した、語学留学プログラムに1週間参加したA君のリアルなつまずきや失敗、成長を、引率者の視点からご紹介します。
※本記事の写真は全てイメージです。本文に登場する人物との関係は一切ありません。


保護者さまの強い希望で参加したA君。とにかく「英語が分からない」「次どうしたらいいの?」と引率者にべったりで、他国の生徒との関わりを持ちたがらない生徒でした。現地での生活は楽しんでいますが、臆病な性格も加わり、とにかく英語へのアレルギーとも言えるような苦手意識が強い状況でした。

食事やアクティビティなどは日本人生徒のそばで楽しく参加していましたが、授業となるとA君の様子は一変します。レベル分けテストによって自分のレベルに合ったクラスに振り分けられたものの、“What is your name?”という問い掛けにすら答えられません。とにかく英語に対してアレルギー反応のように「何も分からない」と主張するため、現地のスタッフもお手上げ状態。彼は、誰かが一言でも英語で話し掛けるとすぐに“No English”を連呼し、完全に英語をシャットダウンしてしまいます。本人に何のためにイギリスに来たのか尋ねたところ、「行けって言われたから」と答えました。

初めて英語でスタッフに質問

滞在から4日が過ぎたころ、A君はいつものように日本語で「次は何時に集合ですか?」と引率者に問い掛けました。引率者は常々、生徒の質問に対して日本語で答えるのではなく、現地のスタッフに英語で質問するように促してきました。それでも彼は引率者が教えてくれないとなると、日本人生徒を探して日本語で問題を解決してきました。

しかし、その日はたまたま周囲に日本人がおらず、彼の目に入ったのは学校のネイティブスタッフのみ。一瞬「あっ」という表情を見せましたが、すぐにくるりと引率者の方へ視線を戻し、「ねぇ、聞ける人が他にいないから教えてくださいよ」と懇願し始めました。そんな彼に対し、引率者は従来通り答えを与えず、すぐそばにいる学校スタッフへ質問をするよう促し続けました。

押し問答の中で「どう聞いたらいいか分からない」

「英語がしゃべれない」と必死な彼に、「時間は英語で何て言うの?」「次は英語で何て言うの?」と彼自身に考えさせながら答えを引き出し、最終的にA君は「どのように英語で聞いたらいいのか」が分かってしまったことに気付きました。そして、緊張した面持ちで、初めて自分から学校スタッフに英語で質問をすることができたのです。

イギリス現地校体験プログラムのイメージ(本文に登場する人物とは無関係です)
Photo by Joe Whalen on Unsplash

受け身だった生活に変化が

やっと英語でコミュニケーションが取れたA君ですが、英語の拒否反応はその後も続きます。そんなある日、彼がルームメイトの悪口を言い始めました。彼のルームメイトは、ロシア人のR君。A君いわく、R君はお風呂に毎日入らず数日に1回なので臭くて汚い子だと言うのです。引率者は少し気になり、彼に同行していたロシア人グループの先生に彼らのバックグラウンドを尋ね、A君のもとへ向かいました。

ロシア人のR君たちは、ロシアと言ってもモスクワからさらに4時間以上車を走らせた農村出身で、その地域は大変寒い場所なのだそうです。寒い地域で生まれ育ったR君、寒い季節は毎日お風呂に入る習慣がなかったのです。引率者はA君に、R君が汚い子ではないこと、そして世界にはいろいろな習慣や常識があり、日本の常識が全てではないことを伝えました。その日からA君の態度が大きく変化しました。片言ですが少しずつ簡単な単語を口にして、必要なことを聞くことができるようになりました。

彼は、自分が見て感じたことにいろいろな背景があることを体験したことで、他国の人や文化、考え方への探求心が芽生え、これがきっかけとなり、受け身だった生活に変化をもたらしたのです。また、彼の中で“英語=勉強”から、“英語=他国の友達とのコミュニケーションツール”という認識へと変わっていきました。最終的に彼は、R君と互いの言語を教え合い、お菓子を交換し、簡単な英語での異文化コミュニケーションを楽しみ帰国の途に就きました。

イギリス現地校体験プログラムのイメージ(本文に登場する人物とは無関係です)

A君の留学体験は、前向きでもなければ積極性もありません。また、英語嫌いが克服できたかというと、それも難しいところです。留学の体験談の多くが、壁にぶち当たってもそこから立ち上がり、目標に向かって前向きに進む姿が語られています。しかし、現実にはそのような生徒ばかりではありません。それでもA君は、他国の人に対して自分自身が無意識に持つ偏見や自分の知らない常識があることを実体験から学ぶことができました。

周りから見れば小さな一歩が、彼にとっては大きな一歩の始まりとなったのです。最後に、彼は引率者に「英語は好きじゃないけどまた来たい!」と伝えてくれました。この留学体験は彼にとって決して失敗ではありませんでした。

短期の留学体験は、英語嫌いの生徒を英語好き、英語が得意な生徒へ変えてくれるわけではありません。しかし、今回のA君がそうだったように、彼らの英語に対する姿勢に変化をもたらしてくれることもあります。そういった生徒の意識改革のきっかけとして、まずは1~2週間ほどの留学をおすすめしてみてはいかがでしょうか。

2020年春休みシーズンに参加できるプログラム をアルク留学センターのウェブサイトでご紹介しています。資料請求、お問い合わせも受け付けています。

アルク留学センター
Tel: 03-3556-1325 (月~土 10:00~18:00)
E-mail: jr-study@alc.co.jp
https://tanki-ryugaku.alc.co.jp/


取材・文: アルク留学センター


本記事は、『英語の先生応援マガジン』2019年夏号に掲載した「留学をその先の未来へ」からの転載です。

“本気の英語の先生”をアルクが応援する、登録制(会員制)ウェブサイト「英語の先生応援サイト(LTAF: Learning Teachers’ and Advisors’ Forum)」もぜひご覧ください。

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