世界有数のビジネススクール、IMDの授業を体験【デジタル時代のビジネスモデル】

IMD

スイスのローザンヌに拠点を置くビジネススクール、IMD。リーダー育成と組織変革に特化したプログラムを展開し、Financial Times 紙の Executive Education ランキングでは短期公開プログラムが8年連続で世界1位の座、Executive Education 全体でもトップ3を維持するなど、高く評価されています。毎年98カ国から9,000名を超えるエグゼクティブが集い、日本企業からも多くの幹部・幹部候補が参加しています。

2019年8月28日、IMDのプログラム「Building on Talent (BOT)」のディレクターを務めるサルバトーレ・カンターレ教授と、IMD北東アジア代表の高津尚志氏をお招きし、プログラムを実際に体験できるセミナーを開催しました。当日は企業の人事ご担当者様やIMDに参加予定の方などから定員を超えるお申し込みをいただき、熱気あふれる体験授業が行われました。その模様をレポートします。


学びを実践で生かすプログラム

初めに、高津尚志氏よりIMDとそのプログラムが紹介されました。IMDのプログラムは、特定企業の参加者のみを対象とする「企業カスタマイズ型」、さまざまな企業の参加者が共に学ぶ「公開型」、両者の組み合わせで行われる「ハイブリッド型」の3つに分けられます。また、提供手法の観点では「対面型」「オンライン型」「ブレンド型」の3つに分類されます。

このうち短期公開プログラムは、テーマや目的、階層、期間などに応じて30種類以上から選択が可能。以下のようなプログラムが提供されています。

1. General Management Programs: マネジャー、エグゼクティブとしての全般的な能力向上を目指す
2. Digital Transformation Programs: デジタルビジネストランスフォーメーション(改革)に特化
3. Leadership Programs: 自らを深く掘り下げ、リーダーとしての行動変容を目指す
4. Focused Programs: 特定の機能や役割、テーマにフォーカスしたもの
5. Online Programs: オンラインプログラム。内容や学習目標はさまざま

General Management Programsの一つである「Building On Talent (以下、BOT)」は、28~35歳の若手マネジャーを対象としたもの。サルバトーレ・カンターレ教授は、このプログラムのディレクターを務めています。BOTでは6週間の遠隔学習を行った後、スイスのIMDで2週間のプログラムに参加します。会社に戻った後も6週間にわたってIMDのコーチによるサポートを受けながら、学んだことを組織や自己開発に生かせるよう実践します。

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「プログラムに参加して勉強になりました、というだけではつまらない。学んだことが実際にビジネスで生かされることが大事です。IMDでは、ラーニングインパクトとビジネスインパクトの両方を求めます。だからこそ、いいプログラムになっているのです」(高津氏)

ビジネスモデルを公募したTwitter社

続いて、カンターレ教授が登壇。「今日はぜひ、活気にあふれたインタラクティブな授業にしましょう」というあいさつの後、早速、体験授業が始まりました。

授業のテーマは「デジタル時代のビジネスモデル」。教授が参加者に「ここ数年の間に、所属する企業でビジネスモデルの転換を経験した人は?」と問いかけると、挙手した人はいませんでした。「とても興味深い結果です。ビジネスモデルの転換がどれほど難しいものなのか、今日は見ていきましょう」。

教授はまず、Twitter社のビジネスモデルについて紹介しました。2006年にサービスを開始した同社には当初、明確なビジネスモデルが存在せず、4年もの間利益が生まれなかったそうです。そこで、Twitter社は自社の収益モデルを募集するコンテストを開催。ツイートを分析し、マーケティングデータとして企業に販売するビジネスモデルを構築し、2010年~2011年の2年間で10億ドルの資金調達に成功しました。現在は時価総額330億ドルを超える巨大企業に成長しています。「企業にとって、ビジネスモデルを持つことがいかに重要か分かる事例です」。

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企業はなぜOfferingに投資するのか

次に、ビジネスをFinance(財務やビジネスモデル)、Process(工程)、Offering(商品・サービス)、Delivery(流通やチャネル、提供手法)の4項目に分けたスライドが示され、教授から参加者に質問が投げかけられました。

「この4項目のうち、企業が過去10年に最も多く投資してきたのはOfferingです。ところが、投資に対するリターンを見てみると最も高いのはFinanceで、逆にOfferingは最も低いのです。なぜこのような現象が起きるのか、理由を考えてみてください」。

テーブルごとに活発な意見交換が行われました。参加者からは、「近年は世の中にモノがあふれていて、価値の高い商品を生み出すのが難しくなっている」「ビジネスモデルを変えることは難しく、Offeringに投資して変えるほうが簡単なのではないか」などの意見が出ました。教授もこれらの意見に同意。Offeringに投資している例として、BMWが他社との競争の中でモデルチェンジを繰り返している例が紹介されました。

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一方、2018年にアメリカ企業として初めて時価総額1兆ドルを突破した Apple社は iPhone や iPad のメーカーとして知られていますが、「彼らのビジネスモデルを本当に転換したものは、2010年にリリースされた iTunes であった」と教授。「プロダクトメーカー」から、「プラットフォームカンパニー」へと変革を遂げたことが、その後の同社の成功につながったと説明します。

「ビジネスモデル」の定義

「ビジネスモデルの定義とは何か、テーブルごとに話し合ってください。Google検索はしないようにね!」とカンターレ教授。再び議論が交わされ、参加者からは「価値とお金の交換」「価値を生み出すための持続可能なプラットフォーム」「社会に価値を届けるためのシステム」などの意見が出されました。

教授は「私はGoogle検索してみました」とジョークを挟みながら、そこで見つけたビジネスモデルの定義を「組織がいかにして価値を生み出し、顧客に届け、成果を手に入れるかの原理」と紹介します。

さらに、ビジネスモデルを支える要素として、Key Partners(パートナー)、Key activities(アクティビティー)、Key resources(リソース)、Value proposition(価値の提案)、Relationships(顧客との関係)などが紹介されました。ビジネスモデルを考える上では、これらの要素を整理することが大切だと言います。「皆さんが自社のビジネスモデルについて説明するとしたら、これらの要素を明確に言えますか?」と質問がなされ、参加者はしばし考えていました。

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最後に、ビジネスモデルの転換をして成功を収めた企業の事例がいくつか紹介されました。その一例であるポルシェは、2017年に北米の一部地域で「ポルシェパスポート」という定額制のサービスを開始。契約者の中心はそれまでポルシェを購入したことのない若い世代で、このサービスをきっかけにポルシェの愛好家となるケースも多く、顧客層の拡大につながったといいます。

「ビジネスモデルを転換することは根本的な部分を変えることなので、困難を伴いリスクも高いです。それでも、成功した際に得るものはとても大きい。私は、組織が収益を上げて成長する上では、ビジネスモデルの転換が最も大切だと思います。今日の授業で、皆さんにもその大切さが伝わったのであればうれしく思います」。

カンターレ教授はこのようにまとめ、体験授業が終了しました。

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事前準備で発信力を身に付ける

アルク企業営業の担当より、「Executive Education」プログラムの参加企業に向け、アルクが提供するサポート内容の説明がありました。

Executive Educationでは、多くのケースを世界中のリーダーたちと議論を交わしながら学んでいきます。そのため、基礎的な英語力はもちろん、発信力が大切。また、各プログラムは数日~数週間という短期間で行われることが多いため、初日から力を発揮できるように十分な事前準備をしておくことが重要だといいます。

「アルクでは、派遣先プログラムの選定、出願手続きのサポート、国内事前研修という3つの領域で、Executive Education プログラムへの参加を総合的にサポートしています。事前準備をしっかりと行えるよう、できるだけ早く参加者を選定することが大切です」。

続けて、アルクのサポートを導入している企業の事例が紹介され、全セッションが終了しました。

カンターレ教授の体験授業は全て英語で行われましたが、どの参加者も積極的に発言しており、IMDの授業に対する関心の高さがうかがえるセミナーとなりました。終了後、参加者からは「現役教授の熱意あるレクチャーを肌で感じることができて良かった」「ビジネスモデルとは、という根本的な概念を考えるいい機会となった」などの感想をいただきました。

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サルバトーレ・カンターレ 教授
ファイナンス専門。イタリア出身。価値創造とその評価、企業の資産形成方法、資金調達方法を主な研究対象とし、リーダーシップとファイナンスの関係性、ファイナンス機能におけるリーダーシップの役割についても研究する。若手ビジネスリーダー育成プログラム「Building on Talent」のディレクターを務める。

高津尚志 氏
IMD北東アジア代表。早稲田大学政治経済学部卒業。フランスの経営大学院INSEADとESCPに学ぶ。日本興業銀行、ボストンコンサルティンググループ、リクルートを経て2010年よりIMDに参画。著書に『ふたたび世界で勝つために―グローバルリーダーの条件』(共著、日本経済新聞出版社)、訳書に『企業内学習入門―戦略なき人材育成を超えて』(英治出版)などがある。

人事教育ご担当者様へ
今回ご紹介したExecutive Educationをはじめ、海外研修に関する資料をご用意しています。ぜひご覧ください。
<お役立ち資料ダウンロード>
https://www.alc-education.co.jp/business/materials/


取材・文: いしもとあやこ
写真: 横関一浩

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