英語教師 Naoのケニア授業日誌: 第7回「与える」のではなく「寄り添う」存在

コイノニア

左から市橋さらさん、筆者、市橋隆雄さん

スラム街に暮らす子どもたちが通う「コイノニア教育センター (以下、コイノニア)」を訪れた飯塚直輝先生(鎌倉学園中学校・高等学校)によるケニア滞在記。いよいよ最終回です。


今回でこの連載も最終回。旅の最後に市橋隆雄さんとスラム街に行き、その現状や市橋さんの振る舞いを拝見しました。

スラム街という日常

ある日の放課後、生徒たちが住む(ナイロビ・キバガレの)スラム街を訪れようと市橋さんに誘われました。子どもたちに伝えると、「ぜひ私の家に来てほしい!」と大喜び。スクールバスの乗り合い場から20分ほど歩くと、スラム街に着きます。

これまで僕は、インド、バングラデシュ、フィリピンのスラム街に行ったことがあります。ケニアのスラム街も同様で、家はトタンで作られ、地震が来たらすぐ崩れてしまいそうなものばかりです。実際、過去に火災で多くの家が燃え崩れてしまったこともあるようです。トイレはスラム街の中に一つあるものを共同で使い、ほとんどの家庭では、七輪のようなもので火を起こして料理をします。

コイノニア

毎回、どの国でも感じるのは、そこに住む人たちは彼らの日常を過ごしていて、不自由さをあまり感じていないということです。家にトイレがない、風呂がないので水道で体を洗う。こんなことは日本の貧乏学生にだってあることです。スラム街には彼らの生活があります。マーケットがあり、ビリヤード場があり、屋台もあっていつも笑顔があふれているのです。

コイノニア

人恋しい酔っぱらいおじさんの街

屋台で売られているものをよく見て、「うわっ」と叫んでしまいました。何か分かりますか?

鶏の頭です。びっくりしていると、酒に酔ったおじさんがやって来て「これうめーんだよ、おごってくれない? お前も食うか?」と鶏の頭に塩をかけて食べ始めました(まだ誰もお金を払っていないのに! 笑)。焼鳥屋さんには鶏の首の肉を焼いた「せせり」があるし、おいしいはず……と思いましたが、市橋さんの助言もあり、食べるのはやめておきました。

コイノニア

それにしても、おじさんのTシャツのメッセージ、笑ってしまいますよね。酔っぱらいの自分を全面肯定するかのような言葉。会った途端に大好きになってしまいました。日本からの来客がうれしかったのか、僕と何度も握手をし、笑顔でスワヒリ語で話し掛けてきます。スラム街の夕方は、東京の新橋と似ているのかもしれません。人恋しい酔っぱらいおじさんの街キバガレ……。

スラム街に住む人たちの暮らし

コイノニアに通う子どもたちが「Mr. Nao、私の家を見て!」と言うので、見せてもらうことに。3畳ほどの部屋にソファー、食器棚があり、少し割れた小さな鏡が壁に掛かっています。七輪もあり、まさに炭火焼きで毎回の食事を味わえる快適な暮らしをしていました。

すると「僕の家も見てよ」という男の子が現れました。彼はコイノニアの子ではないのですが、日本から来た僕に自分の家も紹介したくなったのかもしれません。彼の家をのぞいてみると、大きなソファーが3つ、冷蔵庫にテレビもあります。奥にはベッドルームがありました。これは僕の大学時代よりも豪華です。

キバガレの住人全てが貧しいわけではないようです。というのも、ここの土地はかなり安く買えるため、お金を貯めて別のことに使う目的で住む人もいるようなのです。これは驚きでした。

スラム街は「惨め」ではない

市橋さんがスラム街を歩くと「調子はどう?」「久しぶりだね!」と周りには常に人だかりができます。コイノニアを作る前からこのスラムに通い、子どもだけでなく大人ともコミュニケーションをとっていたようです。

コイノニア

校舎が建つ前は広場で青空教室を行ったり、スラム街の近くで子どもたちとサッカーをしたりしていた市橋さん。スラム街に通い、大人たちの声に耳を傾け、生活の助言をする。子どもたちには勉強を教え、一緒に体を動かす。そしてたまにスナックをごちそうする。

そのようにして、ただ何かを「与える」だけでなく、彼らに「寄り添う」存在になることで、長い時間をかけて信頼関係を作ってきました。結果、スラム街の人々に学校へ行くこと、教育を受けることの意味を理解してもらい、教育の機会を創り出しているのです。
コイノニア

もちろん、スラム街にはドラッグや酒に溺れる人もいます。しかし、子どもたちは笑顔で、大人たちもこの場所で自分たちの生活をしているのです。「スラム」と聞くと、「かわいそう」「惨め」と感じる人もいるかもしれませんが、実際、彼らの生活をのぞき、交流して分かったことは、彼らは決して「惨め」ではないということでした。

人は自分から遠い世界の人をイメージだけで判断したり、ある基準だけで自分と比較して、誰かを劣った存在として見てしまったりすることがあります。しかし、実際に訪れるとそのイメージは違っていて、子どもたちの笑顔は最高に輝いていました。

コイノニア

ケニアのスラム街の子どもたち、そして保護者と共に生きることを決意し、教育を通して子どもたちの成長を願う市橋夫妻。お二人の挑戦はまだまだ続いています。日本からお二人の健康と、コイノニアの発展を祈っています。ケニア訪問記はこれにて終了させていただきます。ご愛読いただきまして、ありがとうございました。

新校舎建設のための、学校運営の募金にご協力ください

NPO法人 ケニア・コイノニア友の会ジャパン
お振り込み先:
ウェブサイトから>>
・郵便局振替口座 00110-3-291395
・三菱UFJ銀行 板橋支店 0117029

※認定NPOを取得しましたので、所得税控除の対象となります。銀行からのお振り込みは、住所とお名前(団体は正式名称)をメールでお知らせください。領収書をお送りします。
koinonia.kenya.j@gmail.com

http://www.kirakame.sakura.ne.jp/amaniafrica/
コイノニアエデュケーションセンター


文・写真: 飯塚直輝先生(鎌倉学園中学校・高等学校 教諭)
2010年より同校に勤務。2014年からESS同好会「鎌倉学園ESS」の顧問を務める。“言語を通じて、生徒の心を揺さぶり、人間的な成長を促す”をモットーに、授業のみならず学級運営や特別活動などにおいても、常に生徒の表情の変化が絶えない実践を目指し奮闘中。

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