高校生の英語スピーキング力の育成と評価を考える【講演レポート】

アルク総研

新学習指導要領を踏まえた授業が2020年度にスタートするのを受け、「大学入学共通テスト」に英語の4技能試験が導入されます。生徒にどのようにして4技能のバランスが取れた英語力を身に付けさせるか、頭を悩ます高校の先生も多いのではないでしょうか。特に、他技能に比べて高校での取り組みがまだ限られている「スピーキング能力の育成・評価」については、大きな課題となっています。アルクがお話をする機会をいただいた講演の様子をレポートします。

静岡県高等学校英語教育研究会 定期総会

講演: 英語活動の活性化とスピーキング能力の評価 (アルク)
【日程】2019年5月17日
【場所】静岡県産業会館


静岡の先生100名以上が参加

静岡県高等学校英語教育研究会 (以下、静英研) は、県内にある高校および特別支援学校の英語教育振興を目指す団体です。英語科教員を対象とする研修や、生徒のスピーチコンテスト、ディベート大会などのイベントを定期的に実施しています。

年に1度の定期総会では、教員向けに外部講師による講演も行われます。今年度は、アルクが「英語活動の活性化とスピーキング能力の評価」と題する講演の機会をいただき、100名を超える先生が「実際に授業の中で何をすれば生徒のスピーキング力が伸びるのか」「効果的なフィードバックの方法」といったトピックに高い関心を示されました。

高校生のスピーキング能力を「どこから」「どこへ」伸ばすのか

前半は「高校生のスピーキング能力を高校3年間でどのくらい伸ばすことができそうなのか」、そして「そのために授業や自宅学習で何をどれだけやればよいのか」について、アルク教育総合研究所 (以下、アルク総研) の木下あおいが、調査結果を基に話しました。
アルク総研

この調査は、3つの協力高校の生徒約300名を対象に、3年間、アルクのスピーキングテスト「TSST (Telephone Standard Speaking Test)」の受験および学習状況アンケートから、「スピーキング力と学習実態の関係」について考察したものです。

学校によって能力分布に違いはあるものの、高校入学時はTSSTレベル3(CEFRのA1レベルとA2レベル相当)の生徒が多く、高校3年次までにTSSTレベル4(CEFRのA2レベル相当)を目指すことができそうだ、という結果が出ました。

スピーキング力が上がった生徒は、高校3年次に授業・自宅などを合わせて1週間に平均して7時間以上の学習をしており、自分で英文を作って話す学習だけでなく、既存の英文を声に出す学習、単語や文法、英作文などをまんべんなく実施していました。

ここから得られた「特別なことをしなくても、適切な学習時間を確保し、基礎を定着させた上で英語を声に出し、文を作って発信する学習を積むことで、スピーキング力の向上が期待できる」という結論に、うなずく先生の姿も見られました。

調査の詳細はこちら>> アルク英語教育実態レポート Vol.11
「日本の高校生の英語スピーキング能力実態調査 Ⅲ -高校1年次から3年次で高校生の英語力はどのように変化したか-」

「口頭運用能力」の育成に効果的な指導と評価方法とは

後半は英語研修講師であり、TSSTの評価官や、評価官のトレーナーも務める尹 英海(イン エイカイ)が話しました。
アルク総研

講演の冒頭、ペアになり、今週末の予定について英語で45秒間、話し合う活動をしました。聞き役に回った先生は、「相手のスピーチの良いところと改善点を見つけて指摘」します。突然のアクティビティに驚きながらも、そこは英語科の先生、臆することなく話していました。

フィードバックした内容を数人の先生が発表。「自分の予定だけでなく生徒の予定についても話していた」「最初に『明日はPTA総会で、その翌日は代休』といった概要を示してくれたので分かりやすかった」「時系列で理解しやすく、発音も聞きやすかった」など、次々に挙げられました。

場の空気がほぐれたところで、尹がこの活動の目的を説明します。「45秒スピーチは、実はTSSTの疑似体験です。話し手を担当した先生には受験者役を経験していただき、聞き手に回った先生には、スピーチの良かった点や改善点に意識を向けることで、TSSTの評価基準を実感していただく狙いがあります」。

TSSTは、受験者の「知識」ではなく「知識を活用して実践する力=口頭運用能力」を測定するテストです。評価は、①言語機能、②どのような話題・場面で話せるか、③テキストタイプ(構文・論理構成力)、④正確さ(語彙、文法、発音、流ちょうさなど)の4つの基準を総合的に決定します。

例えば、前述のスピーチにあった「生徒の予定についても話す」は、話せるトピックの幅を評価する②、「最初に概要を伝える」「論理的に話す」は論理構成力に関して③の評価ポイントになります。

TSST評価基準

期せずして、スピーキング評価を体験したことになり、スピーキングをどういう観点から評価・フィードバックするといいか、ふに落ちた先生も多かったようです。

生徒に効果的な発話練習をさせるために必要なこと

教師は生徒のレベルに合った言語機能と話題を選び、タスクの難易度をコントロールすることが大事だと尹は言います。また、発話に対するフィードバック、特にエラー・コレクションについては、英語の正確さの誤り自体を指摘するのではなく、エラーの原因を究明することで、それを減らしていく方法を述べました。

実践例として、静岡県立三島北高校の取り組みを紹介。同校では、1年生の「コミュニケーション英語」の授業で毎回5分間のスピーキング活動を実施し、TSSTを参考に作成した独自の評価基準により簡単な自己評価を行っています。

静英研の野村賢一会長は、「ほとんどの学校でスピーキングの帯活動をしているが、生徒が話して終わりで、フィードバックまでできている学校は少ない。実践的なフィードバックの方法に光が当たったのが良かった」と言います。

スピーキングの評価基準についての詳細はこちら>> TSST アルクの英語スピーキングテスト

アルク総研

静英研・アルク総研の共同研究
「先生の英語力に応じたソリューションを考える」

アルク総研は、静英研の先生方の英語スピーキングレベルをTSSTで測定するとともに、授業の目的や理想形をアンケートで調査する共同研究を企画しています。

アルク総研所長の平野琢也は、「先生が望む授業は実践できているか、また、先生自身がスピーキング力に不安があり目指す授業が実施できていないのであれば、どのような支援があるとより良い授業ができ、生徒の力を伸ばせるのか。研究結果を元に、研修や教材の開発を共同で行うことを目指します」と話しました。

野村会長からは、「先生にも働き方改革は必要です。この研究がうまくいけば、先生方の仕事が良い意味で楽になり、生徒にとっても良い授業になるという点で期待しています」という声をいただきました。

アルク総研では、今後もさまざまな自治体・教育機関にご協力いただき、学習に対するニーズや学習実態、教材・学習法、学習の効果検証など、語学教育をめぐるトピックについて調査・研究をしていきたいと考えています。共同研究にご関心をお持ちの自治体・教育機関の方は、ぜひお問い合わせください。
問い合わせ先メールアドレス: souken@alc.co.jp


文・写真: アルク教育総合研究所

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