英語教師 Naoのケニア授業日誌: 第5回“I still say YES to life.”

コイノニア

ケニアのスラム街に住む子どもたちが通う学校「コイノニア教育センター(以下、コイノニア)」を始める前に、創設者の市橋夫妻がスタートしたキューナ幼稚園(以下、キューナ)について紹介します。


キューナ幼稚園(Kyuna Kindergarten)

園の遊び場には一年中黄色い花をつける大きな木があり、晴れた日に空を見上げると明るい気分になれます。園舎も子どもたちの作ったものが至る所に飾られ、壁には子どもたちが描いた絵があります。一人一人を大切にすることがよく伝わってくる風景が、そこにはあります。

コイノニアはスラム街の子を対象にしていますが、この幼稚園は30もの国籍の子どもたちが通う、いわゆる「富裕層」向けのインターナショナルスクールです。一緒に遊んでいると“Do you speak American English?” と聞かれたり、 “He is from India.” と教えてもらったり、 “こんにちは” と日本人の子に声かけられたりと、混乱してしまいます。

キューナ幼稚園

「人間力」を育てる教育

一日の流れは日本の幼稚園とあまり変わりません(と思います)。朝9時に登園、10時におやつ、外遊びをして、英語や算数などの勉強。12時にランチを食べ、年少さんより年下の子は帰宅します。午後はバレエや水泳で体を動かしたり音楽の時間があり、勉強だけではない、情操養育や創造性、考える力を育てる教育をずっと行ってきました。

言語教育は、例えばジョリーフォニックス(英語の発音と文字の関係を学び、読み書きの力を付ける学習法)で正しい発音とつづりを学ぶ、算数は外部の先生や保護者を講師にするなどして、特に力を入れています。

キューナ幼稚園キューナ幼稚園の外観

先生たちにも浸透する哲学

コイノニアと同じようにキューナでも大切にしていることは、一人一人の違いを受け入れ、それを大切にする教育をしているということです。多国籍の子が集まると、それぞれの「当たり前」も異なってきます。キューナでは市橋さらさんが園長として方針を決め、職員への教育を徹底することで、市橋夫妻の哲学が先生たちにも流れているように思えます。

例えば、夫妻は「時間を守る」ことを大切に考え、普段から子どもたちはもちろん、先生たちにもそれを強調しています。

ある先生は勤務し始めてから20年で体調不良も含めた遅刻欠席が5回しかなく、毎日6時半には学校に到着して準備を進めているそうです。これは誰かが強要したことではありません。

ケニア人の先生たちの振る舞い、子どもたちへの接し方からも分かる教育哲学。この哲学があるからこそ、地域社会から信頼をされ、多くの園児を集めているのかもしれません。

「家族とは何か」を伝えたい

コイノニアはスラム街の子どもたちを対象にしているのに、なぜキューナでは富裕層の子を対象にしているのでしょうか。

スラム街の家庭の多くは崩壊しています。親は子どもの教育に興味がありません。「食べさせているからいいでしょ」「学校に行かせているんだからいいでしょ」と、子どもに関心を示さない無責任な親もいるようです。夜の仕事も多いため、夕食を家族一緒に食べたことのない子もいます。コイノニアでは、先生も生徒もお祈りの後、同じテーブルを囲んで一緒に食事をします。そのようにして家族の概念を知らない子どもに、優しさと喜び、共に実感を持って「家族」とは何かを教えるのです。

コイノニアスラム街の一角

一方、ケニアの富裕層の中にも、お金を稼ぐことだけに集中する自己中心的な人は多く、他者のことを考えなかったり、子どもに向き合えなかったりする人もいるようです。

スラム街だけではないケニアの問題は、日本、そして世界にも当てはまるところがあるかもしれません。だからでしょうか。現在は大きな宣伝はしていないのに、キューナの教育方針が口コミで広まり、世界各国の子どもたちが通っています。

その中にはコイノニアの支援をしたり、自らスラム街で活動したりする保護者もいるようです。「幼稚園を始めたときはこうなると思っていなかったけれど、今ではキューナという存在が、ケニアの富裕層とスラム街に通う子どもたちやコイノニアとの架け橋になっています」と、さらさんは語ります。

コイノニアには、ギリシャ語で「共有」「交わり」という意味があります。さまざまな国籍、さまざまな境遇を持つ人、それぞれの個性や特徴などを生かし、共に生きる社会、それが市橋夫妻の理想のコミュニティーであり、学校名の由来なのです。

コイノニアとキューナの二つが、それぞれの役割を担うことで、実現されようとしています。

We still say YES to life

コイノニアを卒業した大学生が、キューナでインターンをしていました。名前はGraceです。
コイノニア

コイノニアの印象を尋ねると「私にとって最高の学校だった」と話してくれました。スラム街で生まれた彼女は、周りの友達が暴力を受けたり家族の問題を抱えたりする姿を目の当たりにしてきました。

コイノニアに通い始めて、先生たちが親しみやすく、自分の才能を見つけれてくれることに喜びを感じるようになっていきました。もともとは人見知りで人と話すのが苦手でしたが、コイノニアでの歌唱発表や演劇発表などを通して音楽の才能に気がつき、自分に自信を持ったのです。

「他の学校の先生は、勉強を教えるだけでいいと思っているけれど、コイノニアの先生は一人一人の話をしっかり聞いてくれます」。それが本当に良かったと言う彼女は今、幼稚園の先生を目指しています。印象深かった授業を聞くと、「授業というよりはモットーかな」と応えてくれました。

コイノニアのモットーである、“I still say YES to life.”
どんな状況にあってもそれを受け入れ、前を向いて生きていく気概を持つこと。『夜と霧』を書いたヴィクトール・E・フランクルの本のタイトルにもなっている言葉です。

日本でも、アフリカのスラム街でも、アウシュビッツでも、どんな状況でも、自分の人生にNOと言った時点で、その人は「死にます」。そんな人は、どんな幸せな状況でも、自分の人生に文句を言い、自らの人生を否定しながら生きていくのではないでしょうか。

“I still say YES to life.”

この言葉が、スラム街の生活に苦しんでいるコイノニアの子どもたちに勇気を与え、大きな影響を及ぼしているのは間違いないでしょう。

新校舎建設のための、学校運営の募金にご協力ください

NPO法人 ケニア・コイノニア友の会ジャパン
お振り込み先:
ウェブサイトから>>
・郵便局振替口座 00110-3-291395
・三菱UFJ銀行 板橋支店 0117029

※認定NPOを取得しましたので、所得税控除の対象となります。銀行からのお振り込みは、住所とお名前(団体は正式名称)をメールでお知らせください。領収書をお送りします。
koinonia.kenya.j@gmail.com

http://www.kirakame.sakura.ne.jp/amaniafrica/
コイノニアエデュケーションセンター

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文・写真: 飯塚直輝先生(鎌倉学園中学校・高等学校 教諭)
2010年より同校に勤務。2014年からESS同好会「鎌倉学園ESS」の顧問を務める。“言語を通じて、生徒の心を揺さぶり、人間的な成長を促す”をモットーに、授業のみならず学級運営や特別活動などにおいても、常に生徒の表情の変化が絶えない実践を目指し奮闘中。

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