英語教師 Naoのケニア授業日誌: 第3回 ルールに従うことよりも大切なこと

コイノニア

ケニアのスラム街に住む子どもたちが通う学校「コイノニア」を訪問した、飯塚直輝先生(鎌倉学園中学校・高等学校)。授業では、どんな発見があったのでしょう。


僕自身がケニアで行った授業を2回にわたり、レポートします。今回は、「ペーパータワー」と「言葉でお絵かき」という思考力を鍛える教材を使いました。これらは、僕がフリータイムに関わっている「いもいも教室」(花まる学習会主催)でも使用しています。いもいものメンバーと毎年行っているフィリピンでの教育支援で、小学生に実践した結果、大成功したのでうまくいく確信を持って臨みました。

紙のタワー作りに挑戦

ペーパータワーはテープやのりを使わず、紙だけで高いタワーを作る活動で、チームビルディングでもよく使われます。大人は無難なタワーを作りますが、子どもたちが取り組むと工夫や試行錯誤が見られます。この教材の面白さは、どれだけ丁寧に作っても倒れてしまうことです。倒れた結果、何が悪かったかをメンバーで考え、修正を繰り返します。

丁寧に紙を折り地道に作る子、速さ重視で紙を適当に折り、どんどん積み重ねる子、紙を折るのではなくひねり始める子、それぞれのやり方でいいですし、それが大事なのです。なぜなら、そういった個々の工夫、遊び、ふざけ、脱線から思わぬアイデアが生まれ、とんでもなく高いタワーが完成してしまうこともあるからです。

国別で見ると、日本の中高生は丁寧さを大事にし、フィリピンでは雑でもいいから、とにかく高いタワーを作りたがる印象です。そしてどちらの国でも、男子が女子の邪魔をしたがる傾向にあります。男子は足踏みをしたり、息を吹きかけたりと、女子が激怒するようなことばかりするんです。さてコイノニアではどうでしょうか?

笑顔いっぱいのフィリピンの小学生

とんでもなく高いタワーに!

この教材に取り組んだのは、8歳から10歳までの16人。とにかく元気がよく、常に飛び跳ねています。“Today we will see who can make the tallest tower, but you can only use paper!”と言うと、目が輝きだしました。

スタートの合図の前に、どの子も紙を折り始め、夢中でタワーを作り出します。最初はどのグループも土台の柱を2つほどにし、ビルのような高く細長いタワーを作っていました。しかし、当然高くなればなるほどバランスが悪くなり崩れます。こうなると日本では土台を重くしたり、接続部分の紙を重ねて厚くしたりして安定感を出します。フィリピンでは、紙を重ねている子が多かったです。

コイノニアでは、最初は崩れては嘆き、崩れてはまた嘆くことが多かったのですが、工夫をし始める子が出てきました。広く土台を作り、三角すいのようなタワーを作り始めたのです。今回は広く高いスペースで行ったせいもあるかもしれませんが、この方法は日本やフィリピンでは見られませんでした。結果的に、コイノニアの子どもたちは僕が今まで見た中で一番高いタワーを作ってしまいました。

コイノニア

授業に参加したのが小さい子どもたちということもあり、崩れた時のリアクションが大きかったのも印象的です。次回も触れますが、彼らの感情表現はとても力強く、豊かです。崩れた時に本気で自分自身に怒ったり、一番高いタワーが崩れてしまった時には、みんなで頭を抱えて悔しがったりする姿が見られました。

一方、うまく行った時は、喜びからすごく高くジャンプする子も。全員の身体能力が高いというわけではありませんが、全体的に身体表現も豊かだと思いました。これは彼らがケニア人だからというわけではなく、コイノニアは普段から音楽、ダンス、空手などの体を動かす活動を多く取り入れているため、こういった表現が生まれるのでしょう。

コイノニア

ルールに従うことよりも大切なことがある

「言葉でお絵かき」も、いもいも教室の思考力教材の一つです。1人の生徒が黒板前に立ち、その子は後ろを向けません。教師は残りの生徒にあるお題(図形や絵)を見せます。生徒たちは言葉だけで黒板前の生徒に説明をし、お題を再現できるように導きます。

“information gap”を利用したこの教材が素晴らしいのは、年齢、言語に関係なく誰でもできること。 既に日本とフィリピンで成功したことを考えれば、ケニアでもうまくいく予感しかありません。

8~9歳のクラスで行ったときは、細かいこと(数や正確な位置)にこだわる子はあまり多くなく、とにかく大盛り上がり。コイノニアはしつけが厳しく、授業中に席を立ったり先生の許可なく発言したりすることは許されていませんが、先生が常に「席に座りなさ~い」と大声を出し、結局あきらめてしまうほど熱中してくれました。

13~14歳の生徒たちは、とにかく正確さにこだわります。「もう少し下かな」「ここは線に付いている」と指示を出したり、しまいには紙の汚れまでお題だと思って再現してくれました。こちらも大熱中です。先生は静かに見守りながらも、最後には子どもたちの言葉をうれしそうに聞いたり、描くものを見て吹き出したりしていました。

コイノニア

ケニアだから、コイノニアだから、という話は一概にできません。でも一点だけ印象的だったことがあります。コイノニアにはいわゆる学習障害や発達障害の生徒もいて、その子たちが前に立って描くことがありました。「違いを受け入れる教育」を大事にする市橋夫妻の哲学が子どもたちにも浸透していて、なかなか説明を理解できない生徒には、みんなでいろいろな言葉でヒントを与えていました。次第にジェスチャーを使ったり、黒板前に来て指をさしたりして、その子が描けるまで全力サポートをしてしまう子もいたほど。

ルールとしてはアウトなのですが、そんなこと構いません。ルールを守ることよりも、他者に寄り添うことの方が大切だと、コイノニアの子どもたちは教えてくれたのです。

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koinonia.kenya.j@gmail.com

http://www.kirakame.sakura.ne.jp/amaniafrica/
コイノニアエデュケーションセンター

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文・写真: 飯塚直輝先生(鎌倉学園中学校・高等学校 教諭)
2010年より同校に勤務。2014年からESS同好会「鎌倉学園ESS」の顧問を務める。“言語を通じて、生徒の心を揺さぶり、人間的な成長を促す”をモットーに、授業のみならず学級運営や特別活動などにおいても、常に生徒の表情の変化が絶えない実践を目指し奮闘中。

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