グローバルビジネスの現場で必須となるコミュニケーションスキルを養成するプログラムが、注目を集めています。アメリカ・ネブラスカ大学オマハ校でこの春、開講されたクラスをアルク 企業営業部の徳村公作が視察。授業や課外活動、受講生の声などをレポートします。
アルクとUNOが共同開発したプログラム
ネブラスカ大学オマハ校 (University of Nebraska, Omaha、以下UNO)が実施する Program for International Professional Development (以下IPD)は、グローバルマネジャーと、将来グローバルマネジャーになることが期待されているビジネスパーソンのためのプログラムです。ビジネスのさまざまな局面で、円滑で効果的なビジネスコミュニケーションを図れる人材の育成を目的に、アルクとUNO国際学部が共同で1989年に開発しました。以来、世界各国の気鋭の若手リーダーをグローバルビジネスの場へと排出し、卒業生はさまざまな分野で活躍しています。日本からは唯一、アルクを介してのみ参加が可能です。
IPDは1セッション8週間で、年に5回開講されています。参加者の年齢層は、25歳から40歳くらいまで。TOEIC 600~800点程度の英語力が必要です。1クラスは8人程度と少人数です。
プログラムは、①英語ビジネスコミュニケーション力、②ビジネス推進のための知識・発想力、③異文化対応力・異文化コミュニケーションの3本柱で構成され、国際的な環境でビジネスを遂行するための基礎力と、実践的な英語運用力を並行して身に付けることができます。参加者はまた、それぞれリサーチプロジェクトに取り組み、プログラム終盤でプレゼンテーションを行います。セッションを通して、自身の専門領域や関心分野を掘り下げながら、効果的なスライド作成とプレゼンテーションの手法を学びます。
タイムテーブル例
受講者主体の授業で、より深い学びを実現
授業は平日の朝8時から午後3時くらいまで、ランチタイムを挟んで基本的に3コマ行われます。今回見学した中では、Listening & Pronunciation が非常に印象的でした。この日のテーマは、TED Talk Project。持ち回りで担当になった受講者が、事前に TED Talks の動画から素材を選び、重要語句の拾い出し、サマリーの作成、ディスカッションのテーマや理解度テストまで、全て自分で考えて用意します。
担当の中国出身の受講生が選んだのは、コロンビア大学の言語学者によるTxtng is killing Language. JK!!!でした。クラスではまず、彼が作成した資料をもとに全員で単語を確認し、それから動画を見ます。その後、理解度テストで設問に答え、ディスカッションへと移っていきました。
自分が担当する回は、英語を精聴する力や内容を英語でサマライズする力が鍛えられ、非常に勉強になります。担当でない回も、一受講者としてその場で初めて動画を見て、必死で内容を理解しなくてはなりませんから気が抜けず、良い意味での緊張感があります。授業の主役はあくまでも受講者で、講師はサポート役だということが、とてもよく分かる内容でした。
企業訪問やアメリカの企業人との交流も
IPD では週に1度、現地の企業を見学する Corporate Visits や、外部講師を招いてのセミナーも行なわれます。一般的なプログラムでは、ビジネス関連の海外研修といっても、現地企業を訪問することはあまりありません。それだけに、これはとても貴重な機会になります。
私が同行した先は、電子商取引や支払ソリューション事業を提供している企業の工場でしたが、オマハは世界有数の投資持株会社バークシャー・ハサウェイのお膝元として知られ、”Fortune 500″(経済紙Fortuneによる企業番付)にランクされる企業を始め、元気な会社がたくさんあります。8週間のセッション中に8回も、企業訪問やセミナーで、アメリカ人経営者やビジネスの最前線にいる人から直接話を聞いたり、質疑応答したりできるのですから、ぜひ積極的に活用していただきたいと強く思いました。
印刷工場を訪問。質疑応答などを通じて、現地スタッフと交流できる貴重な機会
ビジネスパーソンによるメンター制度に注目
もう一つ、このプログラムで感銘を受けたのが、メンターの存在です。地元のビジネス各界から、40名を超えるボランティアがメンターとして登録されているのです。経営全般、財務、会計、人材開発、PL法、M&A、広報、メーカー、販売、エネルギー関係など、さまざまなジャンルのエキスパートがそろう中から、個々の受講者の専門分野やニーズを考慮してメンターがつき、学びをサポートしてくれます。これは IPD の大きな特徴ですし、受講者にとっては、とても心強い制度です。
メンターとのミーティングは、原則として1セッションにつき最低4時間以上ですが、受講生の多くはかなりの頻度でメンターとのミーティングを持っているようです。プログラムでは、各自の専門分野や研修目的に沿ったリサーチプロジェクトが必須ですが、このプロジェクトを進める上でもメンターから有益な助言を得る人が少なくないようです。
さまざまなバックグラウンドの受講生と学ぶ
良い機会なので、受講者にも話を聞きました。リーダーシッププログラムに関心があって IPD を選んだというハイチ人ドクター、別の大学の学部で学ぶ傍ら、将来のために IPD を受講するエクアドル出身の青年など、この時は現地に住んでいる人が多かったように思います。
パートナーがネブラスカ大学に留学中という韓国人受講生は、IPD を受講するのは3度目だそうで、Effective Presentations のクラスを高く評価していました。私が見学したときは、端的に要点を押さえる Pitch Presentations を学んでいましたが、このように具体的な技術を教えてくれるプログラムはあまりないと思うとのことで、とても有意義だと話してくれました。中国や中南米からの受講者は、ビジネススキルだけでなく、確実に英語力が伸びるのがうれしいと言っています。
スポーツジム、ボルダリング、プール、図書館ほか、充実した施設のネブラスカ大学
ランチミーティングで現地のビジネスパーソンとネットワーキング
クラスごとに課題が出るので勉強優先ですが、毎週金曜には NPO法人 Kiwanis International Club が主催するランチミーティングが行われます。地元のビジネスパーソンが集い、交流や情報交換をする場です。IPD では、グローバルコミュニケーション・スキルとして、ミスコミュニケーションの原因を理解したり、ボディーランゲージや質問力を高める練習をするので、学んだスキルをすぐに使ってアメリカで働くビジネスパーソンとのネットワーキングに生かせます。
日本からの参加者は、ホームステイを体験します。私も郊外のお宅でお世話になりましたが、大学がしっかり管理をしている優良家庭ばかりなので気持ちよく滞在できます。一般家庭でのホームステイを通じてリアルな生活を体験し、異文化に対応する力が高まっていくと思いました。
Kiwanisのミーティング会場
受講を検討する皆さんへ
IPD の特徴は、ビジネスやリーダーシップという基盤の上に、「英語を学ぶ」プログラムと「英語で学ぶ」プログラムがバランスよく配合されていると、視察を通じて再確認することができました。IPD で自社・自身のビジネスコンセプトを深く理解し、同時に異文化理解力や異文化対応力を高めることで、英語でビジネスを行なう環境にスムーズに入っていけるものと手応えを感じています。
これまでアルクが築いてきた大学との密接な連携をバネに、グローバルリーダーを目指す皆さんの受講がより実りあるものとなるよう、引き続き私たちがしっかりサポートしていきます。
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文・構成: 田中洋子
写真: 徳村公作