「ストレスフリーなおもてなし」の始め方<前編>

「ストレスフリーなおもてなし」の始め方

接遇英語のプロが教える「出だし」だけ+ジェスチャーから始めるおもてなし英語』の著者で、おもてなし英語の研修やセミナー講師を務める中野美夏子さんが、英語で接客するためのヒントを2回にわたってご紹介します。


海外からのお客さまが増えてストレス増加!?

外国人観光客が順調に増え続けています。「順調に」というのは、自然の流れでこの状況になったのではなく、官民協働で一生懸命に取り組んだからこその「今」だからです。「ビジット・ジャパン・キャンペーン」が国土交通省主導で始まったのが2003年。その頃、通訳をしていた私は、日本にそこまで観光客を引きつける魅力はあるのかな、とさえ感じていました。

ところが、どうでしょう。今では毎年過去最高値を更新し続けて、「外国人観光客」のいる状況が私たちの日常になりつつあります。目標に向かって懸命に頑張る文化が、日本文化の素晴らしい面の一つであることが、この分野でも実証されました。

しかしながら、せっかく目標が達成されているのにそのことを喜ぶ、あるいは「うれしい悲鳴を上げる」のを通り越して、「疲れている」現場が増えていると、おもてなし英語の研修やセミナー講師をする私は感じるようになりました。力を入れた結果、ストレスが増えただけでは、あまりにも悲しいですよね。もちろんそのような現場だけではありませんが、ラグビーワールドカップ2019日本大会や、来年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、その傾向は強まってしまうかもしれません。そうなる前に「ストレスフリーなおもてなし」へのヒントを、海外からのお客さまをお迎えする方々に2回にわたり、ご紹介したいと思います。

異文化を知るって楽しい! を忘れないで

これまでに他国の文化に触れて「そんな習慣があるんだ!」とうれしい驚きを感じてワクワクしたことはありませんか? 自分の慣れ親しんだモノやコトと「異なる」ということは時に緊張感をもたらしますが、新しいことを知るのは楽しい経験でもあるはずです。例えば、食べたことのないものを初めて口にする時、「どんな味がするのだろう」と少し不安を感じても、それがおいしければうれしいですよね。

その「文化を知るって楽しい!」という感覚が異文化理解を支え、ストレスを感じる状況においても少し余裕をもたらします。具体的に考えてみましょう。

海外からのお客さまの対応をしていて、このような経験はありませんか?
一列に並んで待っていてもらいたいのに、お客さまが人だかりになってしまう。「どうして並んでくれないの? 日本では何かを待つ時には列になるのが常識なのに……」。

しかも、このような状況は忙しい時に起こります。ただでさえ忙しいのに、ストレスはたまる一方。ただ、もしかするとそういう習慣がない文化もあるのでは? こう考えてみてください。目の前のお客さまは、他の文化を背景に持つ方なのです。お行儀が悪くて人だかりになっているのではなく、人だかりになって待つことが自然なのかもしれません。

異なる文化に接する際は、その文化を尊重して理解することが大切である、とよく言われていますが、根底に「文化を知るって楽しい!」という考えがあれば、ストレスのかかる状況でも、より前向きに、積極的になれるように思います。実は私自身も、かつて接客業に従事していた頃、この「お客さまが人だかり」の状況を何度か経験するうちに自分が異国の活気溢れるマーケットにいるような気分になり、その感覚を楽しみながら、(ここは日本ですから)「どうぞ一列になってお待ちください」とお願いすることができるようになりました。

お客さまの文化に起因する問題が起きた時には、「他の文化を知ることを楽しもう!」という考えに戻ることでストレスが減っていくと思います。

コミュニケーションが止まってしまった!

相手に伝える言葉が出てこなくて「コミュニケーションが止まってしまう」という状況もストレスになります。自分も相手も「どうしよう……」と黙ってしまう。せっかくの一期一会、そのまま「さようなら」となってしまうのは、とても寂しいことです。

コミュニケーションが止まってしまったとき、どうしたらいいのでしょう。具体的な解決策を次回、ご紹介いたします。


文: 中野美夏子
イラスト: つぼいひろき

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