社員の英語力アップのために人事担当者ができること【セミナーレポート】

早川幸治さん

ビジネスのグローバル化が進む中、社員の英語力を高めたいと考える企業が増えていますが、課題も少なくないようです。アルクは2019年3月8日、東京・市ヶ谷にて企業の人事・研修担当者を対象にしたセミナー「戦略的自己学習で社員の英語力アップ!」を開催。160もの企業で英語研修を行った早川幸治さんを迎え、学習習慣をつけるコツや成果が上がる学習法についてお聞きしました。

早川幸治さん
早川幸治(Jay)さん
IT企業のSEから英会話講師へ転身。その後、TOEIC対策を中心とした英語セミナー講師として、約160社で研修を担当した他、大学や高校でも教えている。高校2年で受験した英検4級が不合格だったことを機に、英語学習をスタート。苦手意識を克服した経験から、学習者サポートにも力を入れている。TOEIC990点(満点)、英検1級。著書・共著は40冊以上。『TOEIC(R) L&R テスト 究極のゼミ Part 3&4』(アルク)、『はじめてでも600点ごえ! TOEIC(R) テスト全パート完全対策』(永岡書店)、『英単語おぼえ放題』(スリーエーネットワーク)、『TOEIC(R) L&R テスト書き込みドリル』(桐原書店)他。


学習継続の要素は「モチベーションと習慣化」

社員の英語学習の課題について事前にリサーチしたところ、多く挙がったのが「モチベーションの向上と維持」「社内での英語学習の推進施策」でした。特にモチベーションに関しては「次第に下がっていき、学習をやめてしまう」「業務で英語を使う頻度が少ない社員は学習意欲が低い傾向にある」など、さまざまな悩みが寄せられました。

これを踏まえて会場に集まった方々に、早川さんは1960年代にアメリカで活躍した陸上選手、ジム・ライアンの言葉を紹介しました。

Motivation is what gets you started. Habit is what keeps you going.

(モチベーションによって、あなたは始める。習慣によって、あなたは続ける)

モチベーションは英語学習や運動、ダイエットなど、行動を始める力となり、習慣化することで行動は継続されます。早川さんは、モチベーションは1杯のホットコーヒーのようなもので、時間がたてば必ず冷めると言います。

「英語学習を始めるにあたり、モチベーションは大変重要です。でもそれだけでは学習を継続することはできません。後でお話しますが、継続には“学習を習慣化するシステム作り”が必要だということを覚えておいてください」。

早川幸治さん

英語力の重要性を“確実に”社員に伝える

ビジネスチャンスが海外に広がり続け、社員の英語力向上は多くの企業にとって優先度の高い、経営上の課題です。しかし、“自分には遠いもの”ととらえてしまっている社員も少なくありません。社員にモチベーションを高めてもらうには、何をするといいのでしょう? 早川さんは「なぜ英語力が必要なのか」を明確に伝えて、納得してもらうことが大切だと言います。

ある企業では、内定式で「英語がネックになり、やりたい仕事ができない。これほど悲しいことはありません。だから今のうちに学習してください」と、英語力の有無が将来の仕事に影響を及ぼす可能性を強く訴えました。

経営サイドから英語力が重要であることを繰り返し社員にアピールする必要性を、早川さんは力説します。

早川幸治さん

教材を反復練習すれば、必ず英語は上達する

英語研修を担う人事担当者の最大の関心事は、「成果に結びつく学習法」でしょう。早川さんの回答は明快です。「上達するプロセスは、英語もサッカーも料理も共通しています。見本をまねして何度も反復すること。これを実行すれば、必ず上達します」。

料理であればレシピを読んで、その通りに何度も作ればおいしい料理が作れるように、英語も適切な教材を使って繰り返し学習すれば成果は上がります。早川さんによると、社会人の教材に適しているのはTOEICの問題。

「社会人が学ぶべき英語は、仕事で使う英語です。つまり問題解決するための英語と、情報提供で使う英語であって、TOEICはこの2つを効率的に学べる教材です」。

そこで、TOEICのリスニング問題を素材に、先生が日ごろ学習者に勧めているステップを全員で体験しました。まず、次の音声が流れました。

Who’s in charge of the new construction project?

会場のほとんどの方は、この音声が「速過ぎる」と感じたのに対して、海外生活の経験がある参加者からは「少しゆっくりしたスピード」という声が上がりました。実際のビジネスシーンでは、普通に聞き取れないといけない速度ということでしょう。

再度、音声を聞いてから、早川さんのインストラクションに従って、リピーティングやシャドーイングなどを繰り返した結果、最初より英語がゆっくり、クリアに聞こえるようになったことを多くの参加者が実感しました。早川さんは、学習の最も大事なポイントを次のように話します。

「英語学習というと、知識を理解する段階で終えてしまう人が多いですが、実践力を身に付けるには、理解した後に何度も音声を聞いたり、リピーティングやシャドーイングをしたりといった練習をすることが必須です」。

戦略的自己学習で社員の英語力アップ!

結果を出す人は、明確な学習スケジュールを立てている

学習成果を確実に上げるには、適切な学習を継続することです。最も大切なのは、「学習を習慣化するためのシステム作り」だと早川さんは言います。

会社員は毎日、職場に出勤します。これはモチベーションの高さや意志の力は関係していません。何時までに出社しなければいけない、というルールがあり、その行動が習慣になっているため、日々当たり前のように出社するのです。

英語学習も同じことをすればいいと早川さん。「意志の力だけで英語学習を続けていくのは大変です。しかしルールを作り、それが習慣になってしまえば、意志に頼ることなく続けられます」。

このとき必要なのは、学習プランをしっかり立てること。「いつ」「どこで」「何を」学習するか、決めると効果的です。

「“毎朝英語を勉強する”といったあいまいなプランでなく、“朝8時から8時半は会社近くのカフェで、リスニング教材を使って学習する”というように、時間、場所、学習内容を具体的に詳しく決めるのがポイントです」。

まずは詳細な学習プランを3日分作って実行。それができたら次の3日分のスケジュールを作る、というサイクルを7回続けます。21日目になるころには、学習が習慣になっているでしょう。英語学習を続けられるようになると、確実に英語力が上がり、結果的にはモチベーションも高まるといった好循環が生まれます。

「英語学習で結果を出している人は、皆さん学習スケジュールが明確です。意志に頼らず、自然と学習を続けられているからです。このやり方でぜひ皆さんに成果を出していただきたいですね」とエールを送りました。

戦略的自己学習で社員の英語力アップ!

他社の成功例に学ぶ

続いて、社員の英語学習の成果を実際に上げた企業の取り組みを3つ、アルクの営業担当が紹介しました。

「グループ受講制度」を導入して、通信講座の修了率を50パーセントから73パーセントに上げたA社。この制度は、3名以上のグループを作ってメンバーで励まし合い、全員修了を目指します。達成するとインセンティブが提供される仕組みで、結果として修了率だけでなく受講率もアップしました。申込者数は1.25倍になり、さらには次年度に継続して講座を受講した人の数も増えたそうです。

B社は英語レベルが近い社員でグループを作り、全員が同じ講座を受講。各グループ、目標を設定します。定期的なミーティングに加え、プロの学習アドバイザーも参加するミーティングを行ったところ、9カ月後の終了時にはTOEICスコアが平均150点伸びました。

仲間と競争することで、eラーニング(6カ月コース)の成果を上げたのはC社。学習時間と進捗状況をもとに毎月、優秀者を発表し、学習スタイルやモチベーションの保ち方といった情報も共有したところ、75パーセントがコースを修了しました。

以上のように、組織としての仕組みや環境作りが、社員の英語学習に効果があることが明らかになりました。成果を上げる学習や継続法について、有効なヒントがいくつも得られた、非常に内容の濃いセミナーとなりました。

アルクでは、人事教育担当者さまに向けてセミナーを開催しています。
6月21日(金)開催、外国籍社員を輝かせる「日本ビジネス異文化研修」のお申し込みを
先着16名様限定(参加費無料)で受け付けています。

それ以降のスケジュールは、こちらをご覧ください。
https://www.alc-education.co.jp/business/seminar/

関連記事: 英語研修の成果を上げるには学習者の「意識改革」がカギ


取材・文: 原 智子
写真: 横関一浩

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