企業の海外研修プログラム、成功のヒント【第1回:トレンド・基礎知識編】

企業の海外研修プログラム、成功のヒント

「海外研修のことなら何でもご質問、ご相談ください!」
アルク 留学海外研修部 根間ミキ(左)、営業部 酒井俊輔

グローバル人材育成を加速させるために、社員を海外に派遣して研修を実施する企業が増えています。ここ数年のトレンドや研修のメリット、必要な英語力といった実情を海外研修のサポートに当たるアルク社員が3回にわたり、語ります。


短期の経営層向けプログラム「エグゼクティブ・エデュケーション」が人気

――人材教育において、グローバル化への対応を模索し、海外研修に力を入れる企業が増えているようです。企業の海外研修について、最近のトレンドを教えてください。

根間 英語研修に関しては、距離が近くて時差も少なく、コストも抑えられるフィリピンが人気です。ただ、アメリカやイギリスでの英語研修が多い傾向に変わりはなく、そこに新たなデスティネーションとして、フィリピンが伸びているという状況です。

酒井 英語研修以外では、エグゼクティブ・エデュケーション(EE)、いわゆる幹部研修も注目されています。EEはビジネススクールが実施する、短期のプログラムです。マネジメント、ファイナンス、マーケティング、リーダーシップなどの包括的なプログラムを、トップクラスの教授のもとで学び、世界各国から参加する人たちと議論します。他の参加者と共に学び、知識、スキル、経験値などをシェアすることで、次世代経営者に必要な力を身に付けることができます。

EEはここ20数年で日本でも認知されるようになったと言われています。アルクがこのプログラムを取り扱うようになったのも1990年代半ばで、以来20年以上にわたり、先進企業のグローバルリーダー育成を支えています。

――ここへきてEEが人気なのは、どうしてですか?

酒井 企業のグローバル化が進むと、海外にどんどん人を出さなければなりません。多様なバックグラウンドを持つ人材をまとめていく力も必要です。それができる経営層の人材を早急に増やす必要があります。EEは期間的には2週間から8週間程度ですから、MBAより一人当たりのコストが抑えられる分、対象人数を増やせます。

根間 公開プログラムは、階層別、分野別に分かれています。マーケティング、ファイナンスなど個別のテーマに特化した2、3日のセミナーから、経営全般をカバーする包括プログラムでも、最長で2カ月程度です。ビジネススクールでは、参加者の要望やトレンドに併せて期間の調整やモジュール制を導入したり、新しいテーマのプログラムを開講したりと、市場ニーズに応じて内容がどんどん進化していて、その点でも企業に歓迎されていると思います。

エグゼクティブエデュケーション世界各国から集まったメンバーと学びを深める

複数名での参加や国籍混合チーム、ニーズに併せたプログラム活用が可能

――他にもMBAとEEの大きな違いはありますか?

根間 MBAは一般的にアカデミックで、学位取得に1~2年程度の期間がかかります。出願時にはTOEFL、GMATといったテストスコアの条件をクリアする必要があるので、長い準備期間と就学期間が要されます。それに対して、EEはプラクティカルな内容で、短い期間で修了できますが、学位は授与されません。出願時にテストスコアは不要ですが、マネジメント経験年数や英語力などの条件を満たしている必要があります。

MBAの参加者は比較的若い人が中心ですが、EEは若手リーダーからシニア、トップ・エグゼクティブにまで対応しています。マネジメント経験に応じて、課長、部長、社長や役員クラスというように、同じ階層の参加者を世界から募り、その職責ならではの課題や事例を共有しアイデアを繰り広げる中で、それぞれの気づきや課題解決につなげていく。これもMBAとは違うスタイルです。

酒井 このプログラムに企業が期待する背景には、実践で使える知識やスキルをできるだけ速やかに身に付けてもらわなくては、という危機感もあるのではないかと思います。アジアにおける日本のプレゼンスが低迷する中で、グローバルに組織をリードする人材の必要性が、より切実になってきているからです。

もはや自社の日本人社員の教育だけを、しっかりやっていればよい時代ではありません。現に外国籍の社員をEEに参加させるケースも出てきています。経営幹部層全体の教育が待ったなし。それが現状ではないかと思います。

根間 セッションを通して、参加者同士のネットワークができることも、皆さん非常に期待されていますね。実際に参加者同士が長く交流を続けたり、そこからまた新しいビジネスに発展したりしていますので、そういった面も、日本企業を含め世界各国の企業がEEに注目する理由の一つではないでしょうか。

根間ミキ

――20年ほどEEに取り組んできた中で、変化を感じることはありますか?

酒井 以前は、経営層から単身で派遣するケースが多かったのですが、最近は5人、10人、15人といったグループを同じプログラムに送る企業が出てきています。まとまった人数が現地で一緒に学べば、企業の課題を研修の場で議論することができますし、帰国後、社内で知見を共有しやすくもなるからです。

日本人マネジャーと外国籍マネジャーの混成で、研修に送り出す企業もあります。世界各国の拠点から参加すれば、研修を通じて横のつながりがしっかりとれるようになります。研修の経験を持ち帰って、それぞれの拠点に伝えることもできます。

こうした意義を企業が研修に見いだすようになったので、最近では、まとまった人数での参加をビジネススクールから呼び掛けることもあります。

次世代幹部に求められるスキルをスピーディーに獲得

――海外研修全般の話に戻りましょう。そもそも企業にとって、海外研修(語学学校、大学、ビジネススクールへの派遣)を行うメリットとは何ですか?

酒井 まずスピードです。海外に出ることで、グローバルリーダーとして必要な英語力、異文化対応力、リーダーシップなどが短期間で体験的に身に付きます。

根間 英語に加えて、言語の背景にある文化や多様な考え方にも触れられます。国内ではできない体験をし、世界について肌で学び、理解する機会が多いのです。グローバルな環境で仕事をしていく上で、これは非常に重要な経験になります。

――海外研修には一定の英語力が必要だと思いますが、企業は参加者の英語レベルをどのような基準で考えていますか。また、アルクとしてはどのレベルで派遣するのが適切だと考えますか?

酒井 語学学校では、TOEIC 500~600点くらいを海外研修の参加要件とする企業が多いようです。英語の知識があまりない状態で参加しても、期待したほど英語力が伸びない、十分な成果が得られないという可能性があるので、私たちとしてもある程度、英語の素地がある方を研修に出されることをお勧めしています。

根間 海外の語学学校の受け入れは、一般英語プログラムでは初級~上級の全レベルに対応しており、ビジネス英語プログラムはTOEIC 600点以上が基準となっています。現地の大学が実施するビジネス英語のサーティフィケート・プログラムは、TOEIC 700点程度から。フィリピンの英語研修なら、TOEIC 300点程度くらいで初歩から学ぶ研修の選択肢もあります。EEは、経営に関して英語で議論をする場ですから、TOEIC 800点以上は欲しいところですが、スコアそのものより英語の運用レベルが重要です。

――確かにTOEICのスコアだけでは、スピーキングの力は測れませんね。

酒井 日本人はTOEIC 600点でも話すのが苦手という人が多いため、アルクではTOEICの他に、TSST (Telephone Standard Speaking Test)というテストを提案しています。

TSSTTSSTレベルと業務の目安。レベルの概要はこちらをご覧ください

Level 1から最高Level 9までの9段階評価で、海外赴任レベルの目安はLevel 6。EEに参加する場合はTOEIC 850点、TSST 6以上が一つの目安です。海外研修はアウトプット中心のプログラムが多く、TOEICのスコアに変化はなくても、研修の前後でスピーキング力が大幅に上がるケースが珍しくありません。TSSTの併用は、研修成果をより正確に測るとともに、参加者のモチベーション向上にも役立ちます。

――第1回は企業の海外研修のニーズや、最近の傾向について話しました。次回はフィリピン留学について、詳しくお聞かせください。よろしくお願いします。

企業の人事教育ご担当者様向け
海外研修導入に関するお役立ち資料のご紹介

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今回の記事に関連しまして、「海外研修導入の前に知っておきたいこと ~計画からアフターフォローまで~」という資料をご用意いたしました。これから海外研修の導入をご検討されるご担当者様、また研修計画の見直しにも役立つ内容となっておりますので、ぜひご参考にしていただければ幸いです。

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取材・文: 田中洋子
写真: アルクplus 編集部、留学海外研修部

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