インバウンドに全国通訳案内士の活用を

全国通訳案内士

外国人旅行者を案内するため、日本全国を旅する島崎秀定さんが、全国通訳案内士の活用について提案します。


2年後に迫る国際大会

2020年の東京オリンピック・パラリンピックまで2年を切りました。大会組織委員会ではボランティアの募集を始めるなど、気運が高まってきました。56年ぶりとなる東京での開催、ぜひ国民一丸となって盛り上げていきたいですね。

全国通訳案内士の現状

私の職業は全国通訳案内士です。日本全国を舞台に、外国人観光客を外国語で案内するのが仕事です。これは国家資格なのですが、その試験内容は語学に留まらず、日本の歴史、文化、地理、一般常識と多岐にわたり、さらには受験言語での面接もある難関です。しかしながら、せっかく試験に合格しても実際に通訳案内の仕事をしている人は限られています。その一番の理由は、稼働状況に波があり、収入が安定しないということです。

桜の季節や秋の行楽シーズンには訪日客が増加し、通訳案内士が不足する事態が起きています。しかし、その他の季節では通訳案内士の需要は必ずしも高くなく、特に新人のうちはなかなか仕事をする機会がないのが現状です。実際、各都道府県に登録している通訳案内士約2万人のうち、稼働している人は1/4ほど。そして実際に活動している人でも、その半数は年間の稼働日数がわずか30日以下という現実があります。

通訳案内の自由化

それにもかかわらず、2018年1月に改正通訳案内士法が施行され、通訳案内士資格がなくても有償で外国人に対してガイド業務ができることになりました。急増する外国人観光客に対応するためだと言われています。

法改正以前にも、日本の歴史をあまり知らなかったり、コミッションのために土産物店を連れまわしたりする無資格ガイド(その時点では違法ガイド)の存在が問題になっていました。通訳案内が自由化されたということは、彼らが大手を振って活動できることであり、ガイドの質が低下するとともに、有資格者の稼働がますます不安定になることも危惧されます。

インバウンドに精通する人材としての全国通訳案内士

訪日外国人の増加によって、インバウンドという言葉も浸透してきました。宿泊施設、飲食店、交通機関、観光施設などは、日々外国人と接するインバウンドの現場です。その中でも、全国通訳案内士はこれら全ての施設を外国人と共に訪れ、さらにその反応を直接見ている貴重な存在です。

例えば、インバウンドの現場で以下のような問題が起きていますが、表面的な現象の裏に、あまり認識されていない事実があります。

飲食店で、お客さまは笑顔で「オイシー!」と言ってくれるのに、外国人客が増えない。
→実は、後で通訳案内士に厳しい本音の評価を伝えてくることもよくあります。

外国人客にメニューを説明するのに時間がかかり、他の客が待たされる。
→分かりやすい英語メニューを作れば、効率が良くなるはずです。

列車パスの発行手続きに行列ができ、さらに列車予約は別の窓口に行かなければならない。トータルで1時間をこえることも。
→かなり立腹している外国人は多いですが、それが鉄道会社にきちんと伝わっていないのではないかと感じます。

こうした課題を検討する場に全国通訳案内士がいれば、外国人の本音を伝えたり、改善策を提案したりすることができます。国が認めた制度である全国通訳案内士の資格を持つ私たちの経験は、大いに役立つはずでしょう。

残念なことに、前述の東京オリンピック・パラリンピックでは、これだけボランティアが注目されているのに、私たち全国通訳案内士には何も協力要請が来ていません。大きな国際イベントのみならず、今後のインバウンド業界の健全な発展のためにも、国や地方自治体はぜひ私たちをもっと活用してほしいと思います。


文: 島崎秀定(全国通訳案内士)
イラスト: つぼいひろき

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