TOEICスコアは高いのに会話が苦手。そんな悩みを解消する方法をご紹介します

冨田三穂先生

「TOEICのスコアは上がったけれど、会話になると自信がない」といった悩みを持つ方は、少なくないのではないでしょうか。日本人英語学習者のスピーキング力習得の過程を研究する冨田三穂さんに、会話力を向上させるための戦略と練習法をお話いただき、参加者全員でトレーニングを体感したセミナーの模様をお届けします。


誰にでもできる「英語スピーキング脳」のつくりかた
日程: 2018年11月2日
会場: TKP市ヶ谷カンファレンスセンター(東京)
講師: 冨田三穂氏
流れ:
・スピーキング理論~「話せる」とは?
・実践編<スピーキング脳づくり・鉄板ステップ>
・英語スピーキング<お悩み相談>
~ビジネスで使えるスピーキング力~
・スピーキングテスト「TSST」、研修、事例のご紹介
誰にでもできる『英語スピーキング脳』のつくりかた

日本人学習者に必要なのは「知識の自動化」

スピーキング力を上達させるには、どうしたらいいか。冨田先生の答えはシンプルです。

「できるだけたくさん英語を使って話す。最善の方法は、これただ一つです」。

ただし、やみくもに練習すればいいわけではなく、そこには戦略が必要だと強調します。

「日本人は英語の学習時間が長いのにもかかわらず、なかなか話せないという傾向があります。単語力や文法など、知識は十分あるのに話せないんですね。なぜかというと、知識を上手に使えていないから。

第二言語の知識は二段階あり、文法や単語の理解など意識的に身に付けるレベルの“宣言的知識”と、意識しないでも使える“手続き的知識”があります。英語が話せるようになるには、宣言的知識を手続き的知識に移行させる必要があり、これを“知識の自動化”といいます」。

冨田先生は、こう英語学習者の課題を指摘しました。自転車を例にするなら、「ハンドルを握る、サドルに座る、ペダルに足を乗せる、交互にこぐ」という“宣言的知識”があり、これを自動化して“手続き的知識”に移行すると、頭で考えなくても体が動き、自転車に乗れる状態になるということです。

誰にでもできる『英語スピーキング脳』のつくりかた

インプット、インテイク、アウトプットを適切に行えば、会話力は向上する

知識を「自動化」するには、どうしたらいいのでしょうか。そのキーワードが「インプット」「インテイク」「アウトプット」の3つです。

「インプットは文法や単語、発音など、良質の情報を脳内にたくさん取り込んでいく作業。インテイクは取り込んだ知識を脳に浸透させ、内在化させる作業で、アウトプットは実際にすらすらと言えるように知識を自動化する作業です。この3つを適切な順序とやり方で実施することが、スピーキング力を確実に身に付けるために必要な戦略なのです」。

では、具体的にどんな練習が最良なのか。“鉄板ステップ”を冨田先生に教えてもらいましょう。

実践!「英語スピーキング脳」をつくる鉄板ステップ
英語スピーキング脳をつくるために必須のステップです。

インプット
1 ジェネラルリスニング
2 ディクテーション
3 リピーティング
インテイク
4 なりきり音読
5 リード&ルックアップ
6 リプロダクション
7 シャドーイング
アウトプット
8 ロールプラクティス
9 自由会話

1分程度のダイアローグを素材に、「鉄板ステップ」を体験します。まず男女2人の会話を聞きます。
内容は、ラスベガス旅行に誘う女性と、乗り気でない男性です。

誰にでもできる『英語スピーキング脳』のつくりかた

インプットの第一段階「ジェネラルリスニング」では、スクリプトを見ずに英語の音声だけを聞いて内容を推測します。ここでは曖昧な理解でも構いません。

次のステップで「ディクテーション」をして、スクリプトを確認。どこが聞き取れなかったかを把握すると、理解は深まるそうです。続く「リピーティング」は1文ずつ音声を聞き、正確に繰り返します。

「英語のリズムや脱落する音、つながって変化する音など、音の変化を認識しながら正確にまねをして脳内に刻み込んでください。意味も理解してリピートすることが大切です。何度も練習しましょう」。

英語学習者にはおなじみのリピーティングですが、ただ繰り返せばいいのではないことを改めて認識した方が多かったようです。

作動記憶を鍛えることが、スピーキング力アップにつながる

知識を内在化させるインテイクの練習に入ります。話者になり切って、抑揚もそのまま再現する「なりきり音読」の後は、「リード&ルックアップ」。音読しながら内容を頭に入れ、次に顔を上げてスクリプトを見ずに会話を再現します。ここで難易度が上がりました。

隣の人とペアを組んで、男性パート、女性パートに分かれてやってみると、1文でも詰まってしまう人が続出。冨田先生は、内容や音を記憶してから繰り返すには作動記憶(=ワーキングメモリー)を働かせなくてはならず、実は難易度が高い作業なのだと言います。

作動記憶とは、情報を一時的に記憶しつつ、別の作業をするための能力。スピーキングにとても重要であることが近年の研究で分かってきており、英会話力を向上させるにはこの働きを高める必要があるのだそうです。リード&ルックアップは、作業記憶を鍛えるよい練習法なのだとか。

「最初は1文でもいいですが、慣れてきたら3文くらいまとめてやってみましょう。少しキツい方が作動記憶は鍛えられます」。冨田先生の励ましを受けて、もう一度ペアでリード&ルックアップの練習をしました。

こうして一生懸命、口と耳、頭を働かせた後、インテイクの仕上げとなる「シャドーイング」を実践。皆さん、非常になめらかに言えるようになっていました。

冨田三穂先生

これまでの練習を踏まえ、知識を固定化させる

いよいよアウトプット。内在化してきた英語を、自分の言葉として固定する練習です。「ロールプラクティス」でスクリプトを暗記して、ペアでロールプレイを行った後、締めくくりとなる「自由会話」では本文の流れに合わせつつ、内容を少しアレンジしてオリジナルの表現を作ります。これまでの練習と異なり、発話力も鍛えられます。楽しそうに会話や表現例を考え、実演する姿が見られました。

「日本人学習者はインプットばかり熱心に励む傾向があるのですが、その後にインテイクで英語を内在化させ、アウトプットで固定化することも大切。順番に練習をすれば、必ずスピーキング力は身に付きます」と、冨田先生は力強い言葉でトレーニングを締めくくりました。

誰にでもできる『英語スピーキング脳』のつくりかた

オンライン英会話とスピーキングテストで発話力を効率的に高めよう

最後は、冨田先生が学習者からよく質問されるお悩みから、いくつかヒントをお話いただきました。

会話力アップのために冨田先生は、知識の自動化を目指す「精話」と、自由に話して発話力を高める「多話」をバランスよく行うことを勧めます。精話は鉄板ステップなどの練習、多話は外国人と英語で話したり、独り言をつぶやいたりするような行動です。

「スピーキング力を効率良く上げるためには、オンライン英会話とスピーキングテストの組み合わせがお勧めです。週に何回かレッスンを受けて発話力を鍛え、定期的にテストで会話力のレベルや弱点を客観的に把握すると、さらに会話力の成長につながります」。

これに関連し、アルク企業営業部の担当がスピーキングテスト「TSST」と、オンライン英会話のプログラム、そしてクリエイティブ・スピーキングといった会話力を伸ばすための研修などを説明し、濃厚かつ実践的な内容のセミナーは終了しました。

アルク

冨田三穂先生
冨田三穂 先生
神田外語大学講師。通信講座「1000時間ヒアリングマラソン」の「スピーキング魂」担当コーチ。企業セミナーで講師を務める。慶應義塾大学文学部卒業。上智大学大学院言語科学研究科博士前期課程修了(専攻は言語学、英語教授法)。英検1級、TOEIC(R) L&R 990点(満点)、TOEIC(R) S&W 200/200(満点)。「TOEIC(R) LISTENING AND READING TEST 完全攻略500点コース」監修。


取材・文: 原 智子
写真: 横関一浩

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