【英語の先生向け】夏休み海外研修レポート:イギリス(3)

Lesson

世界各国から集まる英語の先生のための夏季研修プログラム「Develop Your Professional Teaching Skills」に参加した、高橋みどりさん(愛知県立刈谷北高等学校)のレポートを7回に渡り、お届けします


前回に続き、コアプログラム(Core Programme)の授業について紹介します。2週目に入ってから、内容がより深く面白くなってきました。今週もグループワークで進行します。

絵、写真を授業にどう生かすか(月曜日のテーマ)

授業で絵や写真を、単に「理解の助け」として使うだけでなく、体操の踏切板のように利用して、もっと深く読み取り、表現力を高めて活用するためのアイデアを得ました。

深夜の食堂にいる男女4人が描かれた“Nighthawks“は、アメリカ人画家、エドワード・ホッパーの作品です。グループのメンバーは各自、絵の中の誰かになったつもりで以下の答えを考えます。

① How old are you? ② How are you feeling? ③ What did you do before coming to the bar? ④ What are you going to do after leaving the bar? ⑤ What regrets do you have? ⑥ What are you looking forward to?

メンバーに自分の答えを言い、互いにどの人物になったのかを当てます。さらに、自分が5人目になるとしたら、絵のどこに、どんなふうに入るのかも考え、みんなでシェアしました。

6つの問いは、現在時制や現在進行形などターゲットとなる文法項目があり、先生はグループワークの間、私たちの様子に注意を払っています。例えば⑥の答えで、toの後に動名詞ではなく原形を使うといったミスを見つけると、活動のまとめで全員にフィードバックします。

校舎2週間学んだ校舎

次の活動も印象に残りました。まず都市のイメージを表すポジティブな形容詞と、ネガティブな形容詞をできるだけたくさんグループで考えます。東京の雑踏の写真が提示され、1人目は見たものをそのまま描写、2人目は「夢見ていた町にやっと来られた」という設定で気持ちを込めて描写、3人目は「夢見ていたのに訪れて失望した」という設定でやはり気持ちを込めて描写します。

既にグループでいろいろな形容詞を考えているので、それが足がかりとなって語りがよりスムーズになり、使う語彙も内容も豊かになりました。

また、いろいろな見解ができる写真を見ながら、見たものを“I see …”、思ったことを“I think …”、疑問に感じたことを“I wonder …”を用いてペアで語り合います。相手が「なぜこの学校には屋根がないんだろう」と言った場合、「写真の隅に新しい木材があるから、改築の途中なのでは?」という具合に、自分にはどう見えて、どんな感想を持ったかを意見交換しました。

少し変わった写真を例に、新聞記者になったつもりで質問を考え、別のグループがそれに答える活動もとても興味深かったです。

授業

歌を授業にどう生かすか(火曜日のテーマ)

warmerも含めて、わずか2コマの授業で6曲もの歌を授業に生かすアイデアが紹介され、強く心に残りました。私たち研修生は活動一つ一つに、いつのまにか生徒になったような気持ちで取り組んでいました。特に印象的だったものを2つ取り上げます。

If I had $1,000,000 (Barenaked Ladies)
1. 17枚のカードをカテゴリーに分ける。
a house, furniture, a K-car, love, a fur coat, an exotic animal, a llama, an emu, a limousine, a green dress, some art, a Picasso, a monkey, rich, a Mustang, a round-the-world ticket, a Rolex watch
2. 歌が2回流れるので、登場した順にカードを並べる。
※カードが3枚余り、聞き逃した不安が漂うので、2回目をさらにしっかり聞くことになる。
3. 答え合わせ。残った3枚は、先生自身が100万ドルあれば買いたい物だと明かされる。なぜ余分なカードを入れたのか、グループディスカッション。
※「よりチャレンジングにするため」「先生が自分の夢を語ることで、生徒も自分の考えを人に伝えやすくなる」といった意見が出た。
4. スクリプトの空所補充。
5. 100万ドルあったら買いたい物を3つ紙に書き、丸めて箱に入れる。
6. 先生が“Be a dream-catcher!”と言って箱から紙を取り出して、高く放り上げるので、研修生は夢をつかまえるような気持ちで紙をキャッチする。
7. 6の書き手を予測し、質問しながら当事者を当てる。全員、見つけるまで行う。
8. 数人がクラスに紹介したい夢を発表。それぞれの夢がかなうようにみんなで願ってから、紙を本人に戻す。

※私は“I would self-publish a book of poetry.”と書いたので、すぐに突き止められました。先生は活動の間、全員の様子を観察していて、このユニークで私らしい夢をクラスにシェアしようと私の紙を「つかまえた」クラスメートに発言を促しました。別のクラスメートにあっさり「オンラインで出版すれば安く済むのに」と言われましたが、Midori = poetryというイメージがクラスに浸透していたことが分かり、うれしかったです。

この曲を仮定法の導入に使おうと考えるのは自然なことと思いますが、私はこれまで「空所補充→答え合わせ→歌う→自分自身について英作文」程度の活動だけでした。今回、歌を聞く前の語彙の導入から聞いた後の落とし込みまで、アイデアにあふれていて大変参考になりました。特に「余分な3枚を入れる」「ドリームキャッチャーになる」アイデアは、思いつきそうでひらめかないことでした。

Activity

Do You Remember? (Jack Johnson)
5人グループを3つ作る。
1. ハンドアウトの問題を読み、答えを予測。
2. 歌を聴きながら、グループで協力して問題を解き、答えを確認。
3. 先生がメンバーにNo. 1からNo. 5の番号を指示。同じ番号の者でグループを組み、2の答えを持ち寄る。
※各グループ、違う問題を与えられていたと気付き、声が上がる。例えば歌詞の冒頭 ♪Dear Daisy, Do you remember when we first met? は……

グループA 適語選択      Do you remember when we first ( met / kissed )?
グループB ヒント付き空所補充 Do you remember when we first (m )?
グループC 指定語の誤り訂正  Do you remember when we first (1)kissed?
グループD 指定なしの誤り訂正 Do you remember when we first kissed?
グループE ヒントなしの空所補充 Do you remember when we first (  )?

4. 文法のターゲットと、どうクラスに応用できるかをディスカッション。
※「Daisyになったつもりで返信を書く」などの活動が挙がった。

クラス全員に同じ問題を与えなければいけない、という思い込みから脱する貴重な時間になりました。5種類の問題を用意するのは大変ですが、コピー&ペーストを利用すればそれほど時間はかかりません。生徒が自身の力に応じて、複数のタスクから行いたいものを選べるようにすることも大切だと言われました。なお、有名な歌を選ぶと知っているかどうかで差がつくので、少しマイナーな曲にするのもポイントだそうです。

いつも先生は「この活動のまとめは、どんなことをしたらいいか」「自分の生徒にはどう応用できるか」と、私たちに問い掛けます。受け身の姿勢ではなく、自分のことに置き換えて考え、アイデアをシェアする時間が与えられるのが、この講座の魅力だと感じました。

ターゲットとなる文法や語彙をしっかり見極め、生徒の力や興味を考えながら、どのように絵や歌に深く入っていきcreativityを高めるか。大変、刺激的で示唆に富む授業を受けることができました。絵や歌は自分も好きな分野だからこそ、授業への有機的な生かし方を今後工夫できるのではないかと改善点がたくさん見つかりました。

時間割


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E-mail: jr-study@alc.co.jp
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文・写真: 高橋みどり

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