「医学を英語で留学生と共に学ぶ」医学部の挑戦

医学を英語で留学生と共に学ぶ

「本当に使える医学英語スキル」を身に付けるため、大多数の科目を英語で、留学生と共に学ぶカリキュラムを導入した国際医療福祉大学医学部。医学英語教育の責任者を務める押味貴之さんが、これまでの取り組み、成果を紹介します。


医学を英語で学ぶ医学部

国際化が進む現在、日本国内で診療する医師にも英語はもはや「必須のスキル」と言える。しかし国内で高度なレベルの医学英語スキルを獲得することは容易ではない。そこで2017年4月に成田市に開学した国際医療福祉大学医学部では、この難しい目標を達成するために、「医学英語を学ぶ」のではなく「医学を英語で学ぶ」という「内容言語統合型学習: Content and Language Integrated Learning(CLIL)」という専門英語教育方法を日本の医学部で初めて本格的に採用した。

大多数科目での英語による授業を実施すると共に、国際医療保健学、海外臨床実習などを必修とし、留学生と共に学ぶことで国際感覚や英語による診療や議論ができる能力を身に付け、将来国際的に活躍できる医師を養成する」ことをカリキュラムポリシーの一部として設定した。この医学部に医学英語教育の責任者として赴任した私にとって、この新しい医学部での挑戦は本当に面白い仕事となっている。

従来の医学部における英語教育

日本の他の医学部でも、医学英語教育には力を入れている。私が理事を務めている「日本医学英語教育学会(JASMEE)」では「医学教育のグローバルスタンダードに対応するための医学英語教育ガイドライン」の中で、「英語で教科書・論文を読み、理解できる」「患者に英語で面接し診察できる」「学会等において英語で発表討論できる」ことを「必要最低限」の到達目標と設定し、全国の医学部に提示している。

しかし多くの医学部では、医学英語教育が低学年時における「教養科目としての英語教育」として設定されており、医学英語の重要性を実感する高学年時には英語教育がほとんど行われていないというのが実情だ。また多くの医学部では医学を専門としない英語教員が医学英語教育を担当しているため、「一般的な英語を教えることはできるが、実際に医師が行う医学英語スキルを教えることは難しい」という人材のミスマッチも見られている。

「医学を英語で学ぶ」ことで、本当に使える医学英語スキルが身に付く

もちろん医学英語を学ぶ上でも、一般的な英語を学ぶことは大前提である。したがって「英語教員が一般英語を教育する」ということは、どの医学部でも重要である。

しかし「患者に英語で面接し診察できる」というような医学英語スキルは、こういったことが実際にできる医師でなければ教えることが難しいのが現実だ。本当に使える医学英語スキルを身に付けるには、医学に関連する英語表現を学ぶのではなく、「医学を英語で学ぶ」CLILという王道のみで可能となるからだ。

たとえそのようなスキルを教えることができる医師を教員として確保することが困難であっても、ネットにあるさまざまな動画や教材などを使えば、学生たちは英語を使える医学教員から学ぶことと同じ教育効果を得ることが可能となる。このように「医学教員が医学英語を教育する」環境を整備することは、どの医学部の医学英語教育にも必要なことなのだ。

「留学生と学ぶ」ことで日本の医学部文化を相対化できる

日本の医療には日本独特の「医療文化」が存在している。もちろんその中には良い文化も、そうではないものもある。そういった医療文化を相対化して捉えるためにも「外部」の視点は重要となる。

国際医療福祉大学医学部では、各学年に20名の留学生をアジア各国から受け入れている。勤勉で優秀な彼らは日本語も短期間で習得して、日本人の学生にとってロールモデルとなるだけでなく、アルバイトや体育会系部活動などに熱心になりがちな「日本の医学部文化」を相対化させる点でも貴重な存在となっている。

日本の医学英語教育を発展させる「旗振り役」へ

1年生から「医学を英語で留学生と共に学ぶ」環境を提供した結果、一般英語スキルも向上した。2017年に入学した本学1年生のTOEFL ITP(R) テストの平均点は、入学時の519点から約9カ月で32点スコアアップの551点となった。そのうち20人の留学生の平均点は603点 (+25点)、日本人 120人の平均点は543点 (+34点) と、いずれも日本の医学部の平均点483点を大幅に上回る国内トップクラスの平均点を獲得できたのだ。

たしかに「医学を英語で留学生と共に学ぶ」のは本学ならでの取り組みかもしれないが、他の医学部でも実践できることもたくさんある。日本の医学英語教育を発展させるため、そういった教育の知見を他の医学部と共有し、一人でも多くの日本の医学生が本当に使える医学英語スキルを身に付けていってほしいと願っている。


文: 押味貴之(英語医療通訳者・医師)
イラスト: つぼいひろき

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