進化する訪日観光、その時通訳ガイドは?

訪日観光の今

日本を何度も訪れるリピーターが増え、旅のスタイルが多様化しています。外国人旅行者と日々、接する通訳ガイドの松本美江さんが、「訪日観光の今」を紹介します。


定番観光のその先は?

訪日観光客数が急増していますが、訪日観光の最前線にいる通訳案内士の仲間の就業状況を見てもそれは明らかです。その急増の理由は、春や秋のシーズン以外でも訪日客が増えたこと。そして定番の有名観光地以外の所に行く人たちが増え、滞在期間も長くなり、リピーターになる人が多いからなのです。

ピンポイント化するお客さまの情報元

私が実際に感じるお客さまの変化はというと、あらかじめ自分たちが日本で何をしたいか調べてきている人が増えたということです。それも有名観光地のことよりも、どこで何を食べるか、何をすると面白いかなどの情報を、同じような年代と好みを持つ人のSNSやブログから収集してきていているのです。

脱ミシュラン

私が最近ガイドをした30代のアメリカ人男性、お会いするなり、「世界で一番おいしい東京のピザ屋さんに行きたい!」とおっしゃるのです。聞いてみると、ネットで配信されているグルメ番組で中目黒のピザ屋さんを紹介しているのを見て、東京に行こうと決めたのだそうです。開店と同時に店に着き、念願のピザを相伴させていただいたのですが、確かにこれまでで一番おいしいピザでした。

驚いたことに、その一カ月後、まったく同じリクエストがこれも30代男性のお客さまからあり、そのピザ屋さんを再訪することになったのです。同じ動画を見てきた方でした。

これまではレストランのリクエストというと、ミシュランの星が付いているすし屋さんなどが多かったのですが、最近では情報がより特定の好み、年代層を対象にピンポイントで発信され、伝わっていることを感じます。

とにかく身体を動かしたい

もう一つ最近の傾向は、「身体を動かす体験を」という希望が多いことです。例えば富士山登山。毎年富士山に登りたいとのリクエストが増えています。実際、登山期間に五合目に行くと、登山口に入っていく外国人の割合がとても高いのに気付きます。

今年の夏も、富士山五合目観光の予定でアメリカのお医者さまご夫婦をお連れしたのですが、五合目に着いてから、装備は持ってこなかったので登山はできないが、少しでも富士山そばでハイキングをしたいとのリクエストがありました。

そこで思いついたのが、富士山に登るのではなく、富士山の周りを歩くお中道ハイキングです。以前このルートを調べたことがあったので、五合目の手前の奥庭という駐車場の近くからこのお中道コースに入って、五合目まで歩く約1時間半のルートをご紹介したところ、ぜひにとのこと。ご自分たちだけで大丈夫とのことでしたが、途中分かれ道があり、英語のサインがないと聞いていたので、私も同行しました。

森が開けて富士山の頭が見えるところがあり、お客さまは大喜びで記念撮影をされていました。ここは途中ほとんど外国人の姿がありませんでしたが、もう少し道案内の英語のサインを設置し、英語のマップを用意すれば、お土産物屋を見て帰るだけの五合目観光に魅力が加わることでしょう。

ディープな伏見稲荷

この夏、私がお付き合いしたもう一つの「身体を動かす体験」は、「伏見稲荷大社の稲荷山山頂まで登る」というものです。ほとんどの観光客は千本鳥居と言われる一番有名な写真スポットだけしか行きませんが、山頂まで行くとなると往復平均1時間半くらい階段を上り降りすることになります。

大混雑の千本鳥居から30分ほど登ると、出会う人も少なくなり、登ってくる人はほとんどが外国人です。途中あった茶店でその先の道を聞けたので、迷子になる心配はなかったのですが、最初に同行した時はドキドキものでした。皆さまと山頂で記念撮影をし、無事下山できた時は、私も「身体を動かす」ことの喜びを共有していました。

その時、通訳ガイドは?

訪日のお客さまのピンポイントの情報は、日々多様化しています。グルメ関係では、近ごろ世界的に評判の高い日本のウイスキー体験、酒蔵見学、そして料理体験、それもただ作り方を学ぶだけでなく、里山農家を訪問し、自分たちで野菜を収穫し、その土地の家庭料理を作ってみるといった料理+αが喜ばれています。

私たち通訳ガイドも、お客さまの年代や好みにあった情報を探り出し、お客さまに聞かれたら、「それなら知っています。お勧めは……」と即答できるようにしていかなければと思うこの頃です。


文: 松本美江(全国通訳案内士)
イラスト: つぼいひろき

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