外国人旅行者が「一番期待する訪問先」「満足した訪問先」1位の街、銀座を擁する中央区の訪日客対応

ゆかたで銀ぶら

銀座、築地市場、日本橋、月島をはじめ、観光客に人気のエリアを多数抱える中央区のインバウンド対策を中央区区民部商工観光課に聞きました。


――銀座でショッピングを楽しむ外国人の姿は、近年とても象徴的ですが、ツーリズムから見た中央区について教えてください。

中央区 中央区は今も昔も交通の要衝です。江戸時代には日本橋が五街道の基点でしたし、今は東京駅が陸、晴海ふ頭が海、(成田・羽田空港とをつなぐ)東京シティエアターミナルが空への玄関口となっています。ツーリズムにおいて、これは当区の強みだと思います。

都の調査では、2017年度に東京を訪れた旅行者数は、およそ1337万人でした。そのほぼ半数、およそ700万人が銀座にやってくると言われています。また、同じ都の調査によると、東京に来る外国人旅行者が、「一番期待していた訪問先」は銀座であり、「一番満足した訪問先」も銀座です。

その銀座では、1日に2回、委託業者が街を清掃し、路上でのチラシ配布や呼び込みを禁止するなど、長年、地域ぐるみで街づくりを続けてきました。その結果として、外国人観光客にも、洗練されたショッピングエリアとしての街の魅力が、よく認知されているのではないでしょうか。

とりわけ中国の人の間で人気が高く、中国人旅行者の実に75.4パーセントが銀座を訪れ、買い物を楽しんでいます。買い物自体は日本のどこでもできますが、「銀座でショッピングをする」こと自体に、皆さん特別な意義や魅力を感じているようです。外国人旅行者の間で、すでにGinzaが地域ブランドとして確立しているからでしょう。

銀座で打ち水銀座で毎夏、行われる「ゆかたで銀ぶら」の恒例イベント「銀座涼風計画」

――銀座以外では、どのようなスポットが外国人に人気ですか?

中央区 築地市場、東銀座の歌舞伎座新橋演舞場、人形町の伊場仙浮世絵ミュージアム、水上バスや屋形船は定番ですね。

意外なところでは、日本橋の観光案内所に「街道めぐりのマップが欲しい」という、欧米の旅行者からの問い合わせがときどきあります。東京メトロ三越前駅の地下コンコースに展示されている、200年前の日本橋が克明に描かれた長大な絵巻「熈代勝覧(きだいしょうらん)」を見に立ち寄る方もいるようで、実によく調べているなと驚かされます。

熈代勝覧
江戸時代の町人文化が描かれた「熈代勝覧」

このように、日本の文化や歴史に関心が高い旅行者には、昔ながらの街並みが残る月島や佃界隈の路地を歩けば、昭和の日本にタイムスリップしたような風景に出合うこともできます。

加えて5月の「柳まつり」、西暦の奇数年に本祭が行われる「神田祭」、そして秋には「日本橋・京橋まつり」など、さまざまなイベントも楽しまれているようです。

すずめ踊り
日本橋・京橋まつりでは、全国各地の粋な踊りが披露される

――外国人に向けて、観光情報の提供はどのように行っていますか?

中央区 観光ガイドブックやマップ類は、日本語、英語、中国語、韓国語で、区の観光協会が制作しています。

対面での観光案内は、京橋の中央区観光情報センターをはじめ、銀座、日本橋、築地の観光案内所が、最新情報をご案内しています。観光情報センターではウェブサイトを通じて、複数の言語による情報発信を行っている他、区、観光協会、観光情報センターの三者で頻繁に情報交換を行い、観光案内所に寄せられる問い合わせや利用者の声も、貴重なフィードバックとして共有して、観光施策に役立てています。

こうしたネットワークを軸に、民間の観光案内デスクや関連サービスとも協力しながら活動しています。区としては、各地域の取り組みを大切に、必要なサポートや補助金を提供しつつ、中央区全体の観光振興、インバウンド振興を目指していきたいと考えています。

中央区観光情報センター

――外国人向けの観光プロモーションビデオを作成されましたね。

中央区 3月末に、日本語、英語、中国語(繁体・簡体)、韓国語で、区の観光スポットを紹介するビデオを作りました。15秒のクリップから、3分のフルバージョンまで、複数のバリエーションがあります。

ビデオは観光情報センターや区内観光案内所で流している他、空港から都内に向かう電車の中、一部ホテルのロビーなどでも放映していただいています。もちろんYouTubeでも見られます。

また、ビデオに登場するお店や見どころのリストも合わせて用意し、観光案内所などに問い合わせがあれば、情報提供できるようにしています。

――外国人観光客対応のための講座について、教えてください。

中央区 「外国人旅行者おもてなし接客講座」ですね。中央区商店街連合会との共催で、会員である商店などの皆さんを中心に、外国人旅行者と接する機会が多い方が参加しています。

これは夏場1カ月にわたって実施する全5回の講座です。初回は導入編で、最近のインバウンド事情について学び、2回目以降は英会話と中国語会話を学びます。必要な部分だけ受講することも可能ですので、英語の講座だけを受けるという方もいます。

講座には10人ほどの外国人アシスタントも参加し、受講者とテーブルを囲んで接客の練習をしてくれます。大半が韓国や中国などアジアの方で、日本語も話しますから、受講者の皆さんもリラックスして会話が弾みます。

「ハラル(イスラム教徒が宗教上食べられるもの)について知ることができてよかった。イスラム圏からのお客さまの対応に役立てていきたい」といった感想はよく聞きますね。宗教による食べ物の制約、避けるべきジェスチャー、縁起の悪い色使いなど、国や民族や宗教で異なる文化や習慣を、私たち一般の日本人はよく知りません。それに気付くことが、心の通うおもてなしの第一歩かもしれません。

昔ながらの街並みが残る月島、西仲商店街の裏路地

――インバウンドに関して、今後はどのような取り組みを予定されていますか?

中央区 晴海にはオリンピック選手村ができますので、晴海通りと中央通りに、英語と日本語で観光案内版の新設と更新を行ない、周辺のWi-fi環境の整備を進めます。また、観光客の回遊性を高めるため、例えばコミュニティバス(江戸バス)の認知度を上げ、活用を促進していく工夫も必要になるでしょう。

実は中央区には、日本の都道府県のおよそ半分が、アンテナショップを出しています。つまり区内を歩けば、東京にいながら地方のおいしいものを味わったり、特産品を買ったり、日本各地の旅が疑似体験できてしまうのです。このこと自体が中央区ならではの観光資産ですし、日本全体のインバウンド活性化にも一役買ってくれる可能性もありますので、通常の観光スポットと併せて、多くの方の利用を期待しています。

日本橋


取材・文: 田中洋子
写真提供: 中央区観光協会

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