空の玄関口、大田区のインバウンド対策

羽田空港

東京で唯一の国際空港がある大田区。商店街や銭湯など、日本人の生活を間近に感じられる点が、外国人観光客の注目を集めています。インバウンド対策について、大田区 観光・国際都市部観光課にお聞きします。


――観光という視点から見たとき、大田区にはどのような特徴がありますか?

大田区 一番の特徴は羽田空港(東京国際空港)があることです。都心へも、横浜方面へも足を延ばしやすい便利な立地なので、観光の拠点として最適です。歴史的な名所としては、池上本門寺や空港のすぐ近くにある穴守稲荷神社があります。あとは銭湯と商店街。どちらも23区内で一番数が多いです。「黒湯」といって、お湯が文字通り黒い天然温泉もあります。

もともと観光地として栄えてきた地域ではありませんが、その分、昔ながらの東京の街並みが残っていて、人々の日常的な暮らしが感じられます。外国人旅行者には、それが喜ばれています。

穴守稲荷神社空港のすぐ近くにある穴守稲荷神社

――羽田空港を利用する外国人観光客を、区内に呼び込むためにしていることはありますか?

大田区 2015年から、大田区内に路線がある鉄道事業者など40ほどの関係団体による「大田区観光推進連絡協議会」を設置し、羽田空港周辺を3時間ほどで楽しめるプランを紹介するガイドブック、3 Hours to Enjoy Around Haneda Airport #haneotaなどを作成しました。HanedaとOtaを合わせて、haneotaです。英語版、中国語版、日本語版を作り、空港の観光情報コーナーで配布しました。

銭湯の紹介ページでは、入り方も分かりやすく解説しています。飛行機の乗り継ぎで滞在する方や、帰国前の時間を活用したいという方に大田区の魅力を知り、楽しんでもらおうという狙いです。この冊子は外国人旅行者にとても好評でした。

#haneota

また、昨年はインスタグラムでハッシュタグ「#haneota」を付けて、大田区内で撮影した写真を投稿するキャンペーンを実施し、英語版、中国語版、日本語版の観光PRポスターを作成しました。区内のホテルや銭湯などの施設、イベントなどで掲示されています。

――外国人旅行者への情報発信はどのようにされていますか?

大田区 大田区公式観光サイト大田区観光情報センターの2つのサイトで、情報を発信しています。前者は、日本語、英語、简体中文、繁體中文、韓国語、タイ語、フランス語の7言語。後者は、日本語、英語、简体中文、繁體中文、韓国語、タイ語の6言語を用意しています。この他、Facebookの「Visit Ota – Tokyo」では、英語で旬の情報を更新しています。7600名以上が「いいね」をしてくださいました。

バーボンロード外国人観光客もよく訪れるJR・東急線蒲田駅近くのバーボンロード

――大田区は国家戦略特別区域に指定されていますが、いわゆる「特区民泊」※の状況はいかがでしょう。
※旅館業法の適用を受けず、区が定める条例で一般の住宅を宿泊業に活用できる制度。「大田区国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(特区民泊)について

大田区 2013年12月に法が制定され、2016年1月に全国で初めて大田区が特区民泊の取り組みを開始しました。区としては民泊施設の近隣住民とのルールを制定し、諸条件をクリアした施設を民泊に認定しています。安心・安全をモットーにしていて、今まで大きな問題は起きていません。

2018年5月の時点で認定施設が56、部屋数は330室、定員が1000人を超えました。大田区のホテルなどの宿泊施設は、羽田空港周辺と蒲田駅周辺に集中していますが、空港があることでビジネス利用も多く、特区民泊は今後ますます増加の傾向にある外国人旅行者を受け入れることができる施設として期待しています。

――宿泊以外の取り組みについて、お聞かせください。

大田区 外国人の過ごしやすい環境を整えるために、2011年度に「大田区ウェルカムショップ」と「大田区まちかど観光案内所」をスタートしました。

大田区ウェルカムショップ登録店舗には、ステッカーが掲示されている

大田区ウェルカムショップは、外国人旅行者の受け入れに積極的、または今後受け入れる意思があり、日本人と変わらないサービスを提供する気持ちのある店舗を対象にした制度で、登録すると区の支援ツールを活用いただけます。例えば、「外国人旅行者等おもてなしハンドブック」といった資料や、年に数回開催する「外国人対応おもてなし研修」などへの参加です。

大田区まちかど観光案内所は、外国人旅行者を含めた来訪者への簡単な観光案内や、観光マップ、パンフレットを配布いただける店舗、施設に登録いただく制度で、支援メニューには外国語対応のサポートがあります。

――一番の目玉だそうですね。どんなサポート内容ですか?

大田区 2015年に大田区ウェルカムショップ、大田区まちかど観光案内所の登録店舗に調査をした結果、外国語での対応に不安を感じている方が非常に多いことが分かりました。そこで、2017年9月に「24時間多言語コールセンター」と「簡易翻訳サービス」を開始しました。対応言語は、英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語、タイ語、フランス語、タガログ語です。

外国人旅行者への対応で困ったときに電話をすると、コールセンターのスタッフがコミュニケーションのお手伝いをします。また、簡易翻訳サービスは海外からのメールを日本語に訳したり、メニューや案内表示を各国言語に翻訳したりします。大田区ウェルカムショップ、大田区まちかど案内所に登録した店舗、施設であれば無料で利用いただけます。

この他、観光情報センターでは、接客の簡単な英語表現が学べる「おもてなし外国語講座」を開催しています。また、「外国語対応ヘルプデスク」を設置して、電話での通訳支援を行っています。 英語は常時対応、中国語、韓国語、マレー語の対応はそのときに在席するスタッフによります。年中無休で、午前9時から午後9時まで開設しています。

――観光情報センターでは、外国人旅行者向けにどのようことをしていますか?

大田区 観光案内の他に、日本文化が体験できる機会を提供しています。着物を羽織って写真が撮れる「着物プチ体験」、鶴などを折る「折り紙体験」、和紙で小物入れを作る「和小物手作り体験」などの他、有料の「着付体験」も女性に人気です。

観光情報センター着物姿で神社を参拝するコースも好評

――インバウンドの取り組みの課題と、今後の展望をお聞かせください。

大田区 東京オリンピック・パラリンピックに向けて、まだまだ外国人旅行者が増えると予想されますので、引き続き多言語対応を中心に、受け入れ環境の整備を進めていきたいです。2018年6月14日の時点で、大田区ウェルカムショップの登録が236、大田区まちかど観光案内所が262ありますが、さらに数を増やし、支援メニューも充実させていきたいと考えています。

公式サイトのコンセプトは、Discover authentic Japan。外国人旅行者の皆さんには、古き良き街並みや商店街を散策して、飲食店では地元の人との交流を楽しみながら、「本物の日本」を味わっていただきたいです。


取材・文: 岩崎 唱
写真提供: 大田区

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