外国人も引きつける「サブカルの聖地」、中野ブロードウェイの魅力

中野ブロードウェイ

サブカル好きな外国人の注目を集める商業住宅複合ビル、中野ブロードウェイ。訪日観光客でにぎわう施設の現状や取り組みを、中野ブロードウェイ商店街振興組合にお聞きします。中野区のサポートについても、あわせてご紹介します。


――中野区のランドマーク、中野ブロードウェイ。まずその概要を教えてください。

中野ブロードウェイ(以下、NBW) 中野ブロードウェイは、1966年に建設された複合ビルです。今でこそ「サブカルチャーの聖地」などと呼ばれていますが、もともと5階から上は、220世帯が暮らす分譲住宅です。屋上には住民専用の庭園とプール、階下にはショッピングモール、さらにオープン当時には、飲食街、クリニック、理髪店といった施設もあって、時代の先端を行く高級マンションとして脚光を浴びたものです。

――以来およそ半世紀。「サブカルの聖地」として注目されるようになった今、外国人客はどのくらい来館しますか?

NBW 平日で約3万人、土日祝日は約5万人のお客さんが訪れ、そのほぼ半数が外国人です。爆買いが話題になった5年くらい前から、目に見えてインバウンドが増えました。欧米圏はもちろんですが、最近はアジアからの家族連れのお客さんが多いですね。ビル自体はすっかり古くなりましたが、インバウンドに関しては、中野ブロードウェイは最先端にあると思います。

――中野ブロードウェイの何が、それほど外国人を引きつけるのでしょう?

NBW いくらネット社会だ、バーチャルだといっても、ここで売っているものは、この場に足を運ばない限り手に入りません。中野ブロードウェイならではの雰囲気も、面白さも、実際に来てみなければ実感できません。この、「その場に来なければ体験できない」ということこそ、最大の魅力ではないかと思います。

――外国人客のお目当ては何ですか?

NBW アニメやマンガ関係のレアグッズを求めて、海外からも熱心なファンがやってきます。マンガ、雑誌、キャラクターグッズ、フィギュア、トレーディングカード、ビンテージのおもちゃ、DVDにCDなど、あらゆるものを売っていますからね。カプセルに入ったおもちゃが出てくる「ガチャガチャ」も外国人には珍しいようで、これがたくさん置いてあるコーナーでは、みなさんうれしそうにガチャガチャやっています(笑)。

高級品では腕時計目当ての人も多いです。館内には時計店だけで13軒ほどがひしめき、年間220億円を売り上げる会社もあるほどです。お金を使うのは圧倒的に外国人。中野ブロードウェイなら中古の高級腕時計が安心して買えるというので、中国やタイからどんどんやって来て、何百万、何千万円単位で買って行きます。商売で買い付けに来ている人もいるのでしょう。店舗側でも、英語や中国語が話せるスタッフを置いて対応しています。

中野ブロードウェイ中古・アンティーク時計マニアの人にも人気の中野ブロードウェイ

――商店街振興組合としては、どのようなインバウンド対応を行っていますか?

NBW Wi-Fiは区の助成を受けて早い段階で導入しました。また、大型店はすでに対応していると思いますが、小さな商店についても、キャッシュレス化(クレジットカード対応)の促進や、免税店申請を働きかけているところです。インバウンド対応をしっかりやっている店の売り上げが順調に上がっていけば、他の店舗の理解も進むのではないかと期待しています。英会話研修も一度やってみたことがありますが、みんな片言で問題なく商売できているので、結論として、当面英語研修の必要はなさそうです。

――外国人客誘致も含め、地域を巻き込む集客活動を工夫しておられるようですね。

NBW 地域の人たちとのコラボレーションは盛んです。今年は夏に向けて、地元の絵手紙サークルに呼びかけ、うちわに絵を描いてもらい、それを私たちが買い取って展示販売する予定です。外国からのお客さんに、喜んでもらえるのではと思います。

先日はフランスのナント市の副知事さんが、ご夫妻で来られました。中野区には、芸術活動に力を入れている社会福祉法人があって、障がいがある人たちのアート作品が高く評価されています。それでやはり芸術が盛んなナント市とコラボして、中野サンプラザ、中野サンモール商店街、中野ブロードウェイを舞台に、ぜひ一緒に何かやろうと話が弾みました。実現すればとても良い国際企画になるでしょう。

中野サンモール中野駅北口から中野サンモール商店街に入り、中野ブロードウェイへ

――サブカル系のイベントなどでは、地元の若い人たちも活躍していると聞きます。

NBW 年間8万部を印刷する館内ガイドブックの表紙イラストは、大学生の頃から私たちと交流のある、地元のイラストレーターが描いたものです。中野ブロードウェイの新キャラクター「ナノちゃん」も、彼の作品ですよ。

他にもアニメやイラストを使った発信、コスプレイベントなど、中野ブロードウェイの活力を維持する上で、地域の学生や若者の力は欠かせません。若い人たちも、何か面白いことをしたいと、私たちと一緒になって知恵を絞ってくれています。商店街の抽選会でおなじみのガラポンは外国人に大人気なので、今年のサマーセールではもっと盛り上がるように、大きなイラストを描いた板に、抽選器をはめ込んではどうかなどと、みんなで話しているところです。

――インバウンド対策を含む集客活動の、資金についてはどうされていますか?

NBW インバウンド関連事業だけで、年間2000万円以上必要ですが、国、東京都、中野区などの助成金をフルに活用しています。申請できそうな助成金を調べることから始まって、申請手続き、報告書の提出に至るまで、かなりのペーパーワークを要しますが、私たちは事務局があるから対応できているのです。このほか、次々と集客イベントを仕掛けたり、スペースを貸してレンタル料を得たり、各店舗が宣伝料を出し合ったりと、あらゆる工夫と自助努力をしていることは言うまでもありません。

――中野ブロードウェイを基点に、外国人客の行動半径がもっと広がる可能性はありますか?

NBW 町おこしという観点からも、中野区全体の観光振興やインバウンド誘致が進むとよいと思っています。例えば新井薬師梅照院(以下、新井薬師)は由緒あるお寺ですが、そのことを知らない人もたくさんいます。これを、インバウンド向けに大々的に宣伝してはどうでしょうか。

新井薬師を守る十二神将が持っている弓ややりをミニチュアにして、ストラップのようなものを作ってもいいですよね。中野駅から新井薬師まで、歩けば15分か20分かかりますから、そこは人力車やかごで行けるようにすれば、外国人観光客にとっては、それ自体が中野区観光の目玉になるでしょう。魅力的な観光スポットとして注目されれば、情報はSNSでどんどん広がると思います。

新井薬師春の桜、毎月第一日曜に開かれる骨董市も人気の新井薬師

――中野区のこれからのインバウンド展開には、どのような期待をお持ちですか?

NBW 中野区は、サブカルチャーもあれば演劇やアートも盛んな芸術と文化の町です。神社仏閣、商店街、居酒屋と、昔ながらの文化風俗も豊かにあるので、そうした魅力を観光資源として発展させていけるといいですね。

中野区の桜祭りは、東京屈指の素晴らしいものですが、まだじゅうぶん観光に活用されているとはいえません。本気で宣伝をすれば、もっともっと人を呼び込むことができるはずです。当然、外国からの観光客にも、大きな魅力になるでしょう。ニューヨークのように、住民が力を合わせて町づくりに取り組み、行政とも協力し、そのなかで観光やインバウンドが活性化していくと理想的だなと思っています。

民間のインバウンド施策を中野区がバックアップ

中野区都市政策推進室にお話を聞きました。

――「サブカルチャーの聖地」として知られる中野区は、実際にはどんな区ですか?

中野区 住宅地の割合が98.5パーセントを占める中野区は、基本的には住宅地区で、住民の3人に1人以上が、20代、30代の若い街です。おっしゃるようにサブカルチャーの聖地としても知られ、中野ブロードウェイはその象徴といえるでしょう。

――その中野区のインバウンド事情を教えてください。

中野区 中野区を訪れるインバウンド旅行者数は、一日数万人規模ではないかと思います。2016年に3日間かけて、中野駅北口で外国人に聞き取り調査をしたことがあります。中野へ訪れた目的を複数回答で尋ねたところ、92パーセントが買い物、49パーセントが飲食という結果でした。

日本旅行は初めてという人、最初から旅の目的の一つとして、中野を訪れたという人が意外に多かったです。サブカルチャーの熱心なファンが、中野ブロードウェイを目指して、やって来ていると思われます。

――外国人観光客向けの区の施策には、どのようなものがありますか?

中野区 中野駅周辺からより広い範囲へと、旅行者を誘導したいと考えており、区内の大学に通う留学生に協力してもらって、中野区のPR動画とガイドマップを作成しました。観光情報サイト「まるっと中野」からも、それらを見ることができます。

中野区には、新井薬師梅照院や宝仙寺をはじめとする神社仏閣、哲学堂公園、昭和の風情と今風のかわいらしいお店が混在する薬師あいロード商店街など、訪れてもらいたいスポットがいろいろあります。

哲学堂哲学堂公園のシンボル、六賢台。聖徳太子ほか、賢人が祭られている

哲学堂公園は、世界的にも珍しい、いわば哲学のテーマパークです。日本語、英語、繁体字、簡体字、韓国語の5言語でパンフレットを用意したところ、英語と簡体字のパンフレットがよく出ていて、相当数の外国人観光客が訪れているようです。

この春には同じ5言語で、ウォーキングと観光を同時に楽しんでもらうための「中野ウォーキングマップ」を作成しました。区役所と区の施設、東京都観光情報センター、マップで紹介した店舗などに置いたところ、2カ月ほどで7割がはけてしまいました。

中野区ウォーキングマップ

――民間のインバウンド対応に対する支援にも、力を入れておられますね。

中野区 外国人客への対応をめぐる、商店街や商工会の事業支援ですね。例えば、多言語ホームページの作成などについては、自己負担額5パーセント、特にWi-Fiについては自己負担なしで導入できるよう、東京都の補助金に区としての補助率を上乗せしています。中野区のFree Wi-Fiは現在、12カ所で使えますが、これと連携してもらうことで、民間の店舗58カ所でもWi-Fiサービスが提供できるようになりました。

――観光やインバウンド振興には、今後どう取り組んでいかれますか?

中野区 民間の団体や事業者に声を掛け、情報交換できる場の設置を検討しているところです。中野区の観光に関する情報や意見を交換し、テーマを絞ってじっくり話し合える会議体を作りたいのです。飲食店や商店街の人たち、宿泊事業者、旅行会社など、関係者が連携し、ニーズや力をマッチングする場を醸成する必要があると思っています。

住宅地が多い中野区の区民にとって、観光業は主要産業ではありません。このため、行政主体で観光振興をけん引するには、どうしても限界がありますから、このような場を通じて関連事業に携わる人たちをつなげ、民間の活力を引き出すことが重要なのです。

中野区で最も外国人を引き付けている観光施設は、やはり中野ブロードウェイです。行政は裏方として、こうした民間のチャレンジを、全力でバックアップしていきたいと考えています。


取材・文: 田中洋子
写真提供: 中野区(5枚目)、photoAC(4枚目)
写真: アルクplus 編集部

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