訪日客が喜び、街の活性化につながる取り組みって?

インバウンド活性

外国人旅行者が喜び、街も活性化する取り組みとは、どんなものでしょう。数々のツアーを率いてきた全国通訳案内士の島崎秀定さんが考察します。


ツアー運営を困難にする営業時間の短さ

私の仕事は全国通訳案内士です。外国人のお客さまを観光にご案内するのが仕事ですが、その際に感じる不便さの一つに「時間の縛り」があります。ツアーの行程はあらかじめ決まっていることが多く、通訳案内士はその行程表に従ってお客さまをご案内します。

例えば都内観光では、「朝一番で明治神宮を訪問し、その後原宿と表参道を散策する」という行程がよくあります。明治神宮は日の出と共に開門するので問題ありませんが、原宿や表参道に10時前に着いてしまうと、まだほとんど店が開いていません。10時半から11時にオープンする店が多いのです。ですので、朝早くに観光してもお客さまをがっかりさせてしまいます。高級ブランド店の多い銀座も同様です。

夕方にも同じことが言えます。昼間は満員電車並みに混雑する浅草寺では、17時に本堂の扉が閉ざされます。それに合わせて、仲見世商店街も店を閉め始めます。最近では長めに営業する店が増えてきたものの、やはり17時以降に訪れると活気が感じられなくなります。これは、京都の清水寺などにも言えることです。

朝早くオープンする小樽の堺町通り

そんな中で、朝早くから開店している観光地の商店街もあります。北海道小樽の堺町通りでは、ガラスショップなど多くの土産店が朝9時にはオープンしています(実際には、8時45分に開店しているお店も多数あります)。

そのため、前日夜遅くに小樽に到着しても、朝一番でショッピングの時間を取ってから次の観光地へ移動することができるのです。ツアー客のことを考えているなと感じました。私が外国人のお客さまを案内した際も、実際にこの朝一番の時間を利用させていただきました。

夜遅くまで営業している道後温泉の商店街

一方、夜遅くまで開いている商店街もありがたいものです。愛媛県の道後温泉には「道後温泉本館」という日本最古の温泉があります。そこから土産店を中心としたアーケード商店街が続いているのですが、多くの店は夜10時まで開いています。これほど遅い時間まで営業している観光地の商店街は珍しいですが、遅くまで結構にぎわっているのです。

これは営業時間のみならず、街ぐるみで素晴らしいシステムを作っているからだと感じました。周辺のホテルや旅館は、宿泊客が道後温泉本館に行くように誘導しています。フロントに行くと、竹籠入りのタオルとせっけんを無料で貸してくれるのです。そのため、自分が泊まっているホテルに温泉施設があっても、わざわざ外に出掛ける宿泊客が多いのです。

そして道後温泉本館に行ってみると、周辺では多くの土産物屋さんが開いていて、ついでに立ち寄ることになり、街がにぎわいます。そのにぎわいがまた別のお客さまを引きつけることになり、プラスの相乗効果が形成されていくのです。

街全体での取り組みが必要

日本の観光に欠けているものとして、「夜の観光資源の不足」が指摘されています。でも必ずしも新たな観光資源を生み出さなくても、夜遅くまで開いている商店街があれば、それだけでも魅力的なことではないでしょうか。それが認知されれば、より多くの外国人観光客を集めることができるのではないかと思います。

開店時間や閉店時間の問題は、一店舗だけで解決できるものではありません。道後温泉の例のように、中核となる観光施設を中心に街全体で取り組んでいくことによって、観光地としての活性化につながるのではないかと思います。


文: 島崎秀定(全国通訳案内士)
イラスト: つぼいひろき

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