グローバルリーダーが集う最新のプログラム ― 世界トップクラスのビジネススクールIMDの強み

IMD 高津氏

スイス・ローザンヌに本拠を置く、世界トップクラスのビジネススクールIMD。その誕生以来、幹部教育に特化した「Executive Education」を提供し、世界中のリーダーが学んでいます。

2018年6月1日に東京・神田で開催した「アルク教育ソリューションEXPO 2018」では、IMD北東アジア代表の高津尚志さんによる講演会が行われ、近年注目されているプログラムの傾向や日本企業だからこそ学んでほしいプログラムの紹介など、Executive Educationの最新事情をお話しいただきました。

高津尚志(たかつ なおし)さん
IMD北東アジア代表。早稲田大学政治経済学部卒業。フランスの経営大学院INSEADとESCP、東京の桑沢デザイン研究所に学ぶ。日本興業銀行、ボストンコンサルティング グループ、リクルートを経て2010年よりIMDに参画。共著に『ふたたび世界で勝つために―グローバルリーダーの条件』(日本経済新聞出版社)、訳書に『企業内学習入門―戦略なき人材育成を超えて』(英治出版)などがある。

求められる「Executive Education」

Executive Educationはマネジャークラス以上の社員を対象に、グローバルリーダーとしての資質・スキル、意識づけなどを学んでいくプログラムです。IMDでは、毎年98カ国から8000名以上が参加し、数日から2カ月程度の短期間のセッションを、スイスを中心にシンガポール、その他世界各地で開催しています。Financial Times紙のFT Executive Education rankingsでは、IMDが7年連続で、短期公開プログラムで世界第1位、Executive Education全体で3位以内を獲得しています。公開プログラムと個別企業向けのカスタマイズプログラムがあり、アルクではビジネススクールへの社員派遣サポート事業で、毎年IMDの公開プログラムに多くの方の派遣を実現しています。

高津さんはIMDの強みについて、こう解説しました。「IMDはExecutive Educationにほぼ完全特化しているのが強みです。また、経営の世界での世界的な課題であるDigital Business Transformationについても、米シスコ社と共同で、ローザンヌに研究センターを作り、AIやデジタル変革、ロボティクス、IoTなどがこれからビジネスにどのような影響を及ぼすか、企業はどのような形で取り組んでいくべきかといった研究と教育に取り組んでいます。この分野に関しても、世界のビジネススクールの中でも最も力を入れていると言えるでしょう」。

日本のグローバルリーダー育成の3つのポイント

IMD 高津氏

「グローバルリーダーに求められるスキルや能力は何か、どのように育成していくべきか?」。世界で通用するグローバルリーダーの育成が急務となっている日本企業にとって大きな関心事ですが、高津さんは重要なポイントは「コミュニケーション」「自己認識」「ビジネスリテラシー」の3つだと指摘します。

「グローバルビジネスで求められるコミュニケーションスキルは、世界の人が集まる中で、自分の意見を言い、かつみんなの意見をまとめていける力。ファシリテーションができないとならない。しかし日本では、多様性の低い中でコミュニケーションが行われがちで、こうしたスキルはなかなか育ちにくいものでした。IMDのセッションに参加する日本人の方がまず苦労するのも、ファシリテーションを含むコミュニケーションですね」。

また日本のリーダーシップ教育で著しく遅れているのが「自己認識(self-awareness)」向上への取り組みです。
「自分自身がどんな人間で、どんな特性があり、どんな望みを持っているのか。どういう特性を生かし、役割や環境に応じてどのように行動を変容させていくか。これらを認識することが、幹部教育の一つの大きなポイントです」。ファイナンスやオペレーション、イノベーションといった基本的ビジネススキルも、残念ながら日本企業のマネジャーは海外のマネジャーに比べると低いそうです。

こうしたスキルや資質を、各人の必要や目標、職階などに応じて育めるプログラムがExecutive Educationには用意されています。IMDではその数は約40にも上り、細分化されています。いわゆる「座学」だけではなく、たとえばコミュニケーションの授業では、俳優学校の講師が登場し、受講者に「あるメッセージを非常に高圧的な態度から、非常に従属的な態度まで10段階の態度で演じ分けなさい」といった演習をさせる、といった経験学習的アプローチも多い、と高津さんは説明します。

「さまざまなレベルの態度を演じ分けてみた上で、『次のシチュエーションではどのレベルのコミュニケーションが適切か』を考察していきます。こうした学びを通して、たとえば拠点リーダーになったときに、その場にふさわしいコミュニケーションの在り方を意識的に選ぶことかできるようになるのです。」

自分の仕事に落とし込めなければ学びにはならないし、役に立ちません。「プログラムの内容は、受講者それぞれの仕事や課題に結びつく内容になっています」と高津さんはIMDのポリシーを説明します。

1日中英語で発信する環境であらゆる経験が学びに

後半では、昨年秋、シンガポールで開かれたExecutive EducationのOWP(※)プログラムに参加したアルク企業営業部大久保裕史が体験報告をしました。

※OWP(Orchestrating Winning Performance) 世界中からエグゼクティブが集い、さまざまなビジネストピックについて共に学ぶ5日間のプログラム。OWP 体験談

OWP Singaporeプログラムは、シンガポールのホテルを借り切って行われました。iPadが全員に貸し出され、スケジュールや参加者のプロフィールも見られるようになっていたそうです。

「50カ国からマネジャー以上のビジネスパーソン150名が参加するダイバーシティな環境でした。授業ではケーススタディーやディスカッション、ゲストスピーカーの話などで構成されました。授業以外にキーノートスピーカーの講演もあります。例えばシンガポールを拠点にする世界的な金融機関、DBS銀行のCEOが、最新のITを活用した取り組みについて話されたのですが、随時質問が飛ぶ双方向的な講演でした」と大久保は具体的にセッションの様子を紹介。

朝8時~夕方5時半までランチを挟んで授業があり、その後に講演、そして夜7時過ぎからディナーという流れ。食事は全てブッフェ形式で、必然的に1日中英語を話し続ける環境になります。TOEIC900の英語力を持つ大久保さんにも、かなりきつかったそうです。

「ランチやディナーがなかなか大変でした。みんな自由に座って食べるのですが、そういう場に入っていくのが日本人は苦手な人も多いのではないでしょうか。でも、意識的に常にクラスメートや教授、ゲストスピーカーに自分から話しかけていくようにしました。教授と雑談した内容を授業でトピックに使っていただいたり、積極的に話したりすることで学びが深くなったと思います。あらゆる経験が学びになりました」。

グローバルなネットワークが構築できるのも魅力

セッションに参加する日本人に対して、高津さんは「自分がどこの誰なのか、何を学びたくて来ているかを積極的に話すこと」をアドバイスするそうです。

「その結果、周囲からのフィードバックも増えて学びのチャンスが広がります。過去に参加した、日本企業でR&D(研究開発)の仕事に携わる方がクラスメートから”もっとマーケティング部門とつながるべきだ”といった意見をもらって、実際に会社の変革のきっかけとなった例もあります。自ら積極的に発信することで、さまざまな学びを引き寄せることができる。自分から積極的に飛び込んでいく意識を持つことが大切ですね」。

最後に、アルク担当者より、プログラム参加の効果を上げるための事前準備の重要性について説明がありました。英語力、そして授業に参加し貢献するClass Contributionの力が、短期間の研修だからこそより必要になるとのこと。積極的に参加するからこそ、持ち帰るものが多いこと。アルクでは英語力に応じた国内事前研修 を実施し、英語力強化をはじめ、ビジネス英語スキルの習得や、ビジネススクールの予行演習などを通して、研修効果の最大化を後押しします。

Executive Educationのセッションという、グローバルな場で自ら発信して、どの程度通用するのかを確認したり、自社や自身の強み、課題を把握することで成長していくことができたりします。さまざまな知識や考え方を学び取り、自らのビジネスに生かすこともできます。また各国からの参加者とグローバルなネットワークの構築ができるのも、このプログラムの大きな魅力です。グローバルリーダーとはどんな人材なのか、その姿が明確に見えてくる講演でした。

IMD講演会


取材・文:原 智子
写真:横関 一浩

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