外国人富裕層に人気の一棟貸しのお宿

一棟貸しの宿

外国人観光客の間で最近、人気を集める宿泊先について、全国通訳案内士の葛西朋子さんが紹介します。


訪日客の増加に伴い、ニーズも広がる

2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックと、大イベントの開催に加えて、クルーズ船の来航、LCCの地方空港乗り入れなど、訪日旅行客数急増の理由は、枚挙にいとまがありません。

日本を訪れる人の数が増えれば、それぞれニーズも広がります。多様化する宿泊事情から、オーダーメイド旅行にこだわりを持つ外国人富裕層の方々が選ぶ宿について、ご紹介しましょう。

トラベルデザイナーの作る旅行

私は全国通訳案内士に加えて、トラベルデザイナーの仕事もしています。この仕事は、お客さまのリクエストに基づいて旅行プランを組み立てる専門職で、“旅行に関する職人”といえるでしょうか。主なお客さまは、外国人富裕層の方々です。

人目を気にせずゆっくりと過ごしたい

お客さまから旅のプランニングを頼まれると、まずリクエストの聞き取りを行いますが、ほとんどの方が「誰も行ったことのない場所」や「今までしたことのない特別な体験」を求めていることが分かります。混雑を避け、ゆったりと自分たちだけの特別な旅行を堪能したいのですね。

コンシェルジュデスク完備の有名5つ星ホテルや高級旅館は、心地よく安心感がありますが、一方で部屋の外では他の人の目を気にしないわけにはいきません。そこで、今、人気なのが、町家や古民家、武家屋敷や旧家の邸宅を、一棟貸しの宿泊施設として改装した宿に泊まるという選択です。一棟貸しなので一日一組限定、ご家族やカップル水入らずで過ごすことができます。

これまでも町家や古民家に泊まることは、さほど珍しいことではありませんでした。ただ、食事が付いていなかったり、設備が古かったりという不便さはあったかもしれません。

最近はこういった難点をカバーし、デザイン的に美しく、さらには快適な環境も整った宿泊施設が増えていて、注目を集めています。中には、コンシェルジュサービスの機能が付き、食事の手配も可能な施設もあり、「住むように泊まる」体験ができるのです。

建物や地域の魅力も味わえる

下見やお客さまのチェックイン時に、内部を拝見することがあります。例えば、きれいにリノベーションした由緒あるお屋敷は、広い日本庭園や数寄屋造りの母屋があり、伝統的な美の要素が堪能できます。

京都のとあるお宿は、元々お寺の敷地だった場所に建てられた別荘群の一角にあります。著名な作庭家による立派な庭園があり、これらのお庭付きの別荘は別荘庭園群と呼ばれ、周辺にはとても美しい散策路があります。

建築美に加え、歴史の重みも肌で感じられるエリアなので、泊まることでよりその素晴らしさを実感できます。食事はキッチンのある施設なら自炊をしてもいいですし、都市圏ならば豪華にミシュラン三ツ星店へ出掛けるのもいいでしょう。

お値段も人気の秘密

ラグジュアリーな一棟貸しの気になるお値段は、大人2人で1泊3万円くらいからです(※場所や季節、曜日、条件でレートは変わります)。

上げ膳据え膳もよいですが、旅慣れた方はそれを煩わしいと思う日もあるかもしれません。食事の選択肢が狭まるという考え方もできます。欧米圏の旅行者は、滞在日数が長いので、さまざまなチョイスがあると喜ばれるでしょう。

また、新しいマーケティングというだけでなく、土地の再生という観点からも、こういった施設は魅力的ではないでしょうか。特に地方において、宝の山は大いに眠っているように思えるのです。

今はまだ予約を取りやすいところが多いですが、これからはプレミア感も手伝って、人気が加速していくかもしれません。


文: 葛西朋子 (全国通訳案内士・トラベルデザイナー・VIPコンシェルジュ)
イラスト: つぼいひろき

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