葛飾区には、外国人観光客が注目する観光資源がどっさり

映画『男はつらいよ』でおなじみの帝釈天題経寺と参道

訪日外国人の受け入れ対策や、地域活性化の取り組みについて、東京23区の担当者にお聞きする「東京23区インバウンド事例紹介」。今回は、自然・文化・人気のキャラクターなど、多彩な観光資源を持つ葛飾区にフォーカスし、葛飾区産業観光部観光課にお話を伺いました。


――葛飾区といえば、やはり映画『男はつらいよ』を思い出しますね。

葛飾区 江戸川の右岸に位置する葛飾区は、映画のように、今も下町の人情が色濃く残る地域です。でもそれだけではありません。寅さんゆかりの帝釈天題経寺には、息をのむような木彫刻や、美しい日本庭園があり、海外からの旅行者にも好評です。

寅さん以外にも、葛飾には有名なキャラクターが大勢います。亀有の駅周辺には、漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(通称「こち亀」)のキャラクター像が15体、四ツ木と立石には、サッカー漫画『キャプテン翼』のキャラクター像が9体点在し、区が作成しているマップを片手に銅像巡りをするのが人気です。「こち亀」は台湾、『キャプテン翼』は欧米を中心に、海外からのファンもやって来ます。

©秋本治・アトリエびーだま/集英社 ©高橋陽一/集英社
©秋本治・アトリエびーだま/集英社 ©高橋陽一/集英社

――街の各所にキャラクターの銅像を設置して、観光客の回遊を促しているんですね。

葛飾区 はい。他にも、世界で親しまれているモンチッチが生まれたセキグチ本社のある新小岩地域には、「モンチッチ公園」があります。最近はモンチッチをデザインした、カラフルなマンホールでも話題になりました。また、リカちゃん人形のタカラトミー本社が立石にあります。それらの地域では、キャラクターのラッピングバスも走っています。地元生まれのキャラクターやその他さまざまな観光資源を活用しながら、官民が一体となり、観光を盛り立てていこうとしています。

新小岩エリアにあるモンチッチのマンホール(©sekiguchi)
新小岩エリアにあるモンチッチのマンホール(©sekiguchi)

葛飾区 葛飾柴又は2018年2月に、都内で初めて、関東では2例目となる、国の「重要文化的景観」に選定されました。重要文化的景観は、いわば、風景の国宝。帝釈天題経寺と参道、その周辺の旧家、そして、江戸川に至るまでの昔ながらのなりわいや旧家の佇まい、江戸川の水辺景観が文化財として認められました。この景観そのものが、私たちの大切な観光資源だと考えています。

昭和の下町情緒を体感できる帝釈天題経寺の参道
昭和の下町情緒を体感できる帝釈天題経寺の参道

近年、“昭和を体感する”という感覚で柴又を訪れる、若い人が増えました。また海外からの観光客については、個人旅行が増え、旅のスタイルがモノ消費からコト消費へと移行しつつあります。“体感する旅”に関心が高まる流れの中で、重要文化的景観として、地域人々の生活、なりわいといったものの価値を評価していただいた意味は大きいと思います。

江戸川にある金町浄水場の取水塔。とんがり帽子の形が親しまれている
江戸川にある金町浄水場の取水塔。とんがり帽子の形が親しまれている

――その景観を満喫し、葛飾区を体感するための、具体的なお薦めはありますか?

葛飾区 先ほど触れた帝釈天題経寺の彫刻と庭園に加えて、水元公園は東京で唯一の水郷公園で、四季折々の水辺の自然を感じることのできる都会のオアシスです。また、大正末期から昭和初期にかけて増改築された、企業家・山本栄之助氏の旧邸宅「山本亭」と庭園は、それ自体が葛飾区の有形文化財ですが、アメリカの庭園専門誌 Sukiya Living Magazine (The Journal of Japanese Gardening) が毎年実施する「美しく、くつろげる日本庭園」の第3位(2017年度)に選ばれました。全国900箇所以上の旧所名跡、旅館、旧別荘が対象となっている同誌の調査において、順位が公表された2003年以降、山本亭は常に7位以内にランクインしており、伝統的な書院式庭園は海外からの訪問客を魅了しています。この庭園は座敷に座った時の目線で見た時に最も美しく見えるように設計されているため、座って眺めていただくことをお勧めします。

区が買い取り、一般公開している有形文化財の山本亭
区が買い取り、一般公開している有形文化財の山本亭

水元公園と堀切菖蒲園で毎年6月に開催される「葛飾菖蒲まつり」や、江戸川の河川敷で打ち上げる大迫力の花火を鑑賞する「葛飾納涼花火大会」は、江戸の風情にも触れられる催しですので、外国の方にも喜ばれると思います。

菖蒲が咲き乱れる都内唯一の水郷公園、水元公園
菖蒲が咲き乱れる都内唯一の水郷公園、水元公園

――外国人観光客を引きつける多様な観光資源がある葛飾区は、インバウンドのポテンシャルが高いエリアと言えそうですね。ただ、立地の面では都心部から少し距離がありますから、観光客に足を運んでもらうために何か工夫されていることがあるのではないですか。

葛飾区 都心のツーリストインフォメーションなどに、葛飾区の観光パンフレットを置く他に、インターネットも積極的に活用しています。葛飾菖蒲まつりの情報は、海外に情報を発信する「IKIDANE NIPPON」に、花菖蒲の写真を中心に掲載したところ、ページビューが約38万、SNSの「いいね!」の数が約5万と上々の反応でした。

また、インフルエンサー(世間に与える影響力が大きい行動をとる人物)を活用したプロモーションとして、昨年の秋には、台湾の人気ブロガーとメディアを招いて、区内の観光名所を回ってもらい、ネットなどでその体験を発信してもらいました。今後は拡散力が高いSNSにより力を入れて、情報を見てもらう段階から、実際に来てもらえるステップへとつなげていきたいです。

――外国人観光客への対応を巡り、外国語の必要性は感じますか?

葛飾区 帝釈天題経寺の参道では、外国語が堪能ではなくても、お店の人と外国人観光客とのコミュニケーションは取れているようですね。カタコトの言葉とジェスチャー、それに伝えたい気持ちがあれば、ある程度は通じるのだと地元の方はお話されています。キャラクターの銅像巡りでは、自国でアニメや漫画を見て内容を知っているので、マップだけあれば案内板が日本語のみでも、皆さん大丈夫なようです。せっかく日本に観光に来たのだから、外国語の表記などがあると逆に残念だという外国の方のご意見もお伺いしています。区では、区内全域のサイン計画の見直しを行っているところですが、こうしたご意見なども踏まえながら、今後とも検討していきたいと考えています。

――さまざまな観光資源があり、国宝級の景観を持つ葛飾区は、今後さらに外国人観光客が増えていくと思われますが、今後の課題と抱負を聞かせていただけますか。

葛飾区 インバウンド誘致については、柴又と他の見どころをセットにしたルートを提案し、さらに大きく区内を回遊してもらえる工夫に努めていきたいです。そのための交通機関の整備は課題となるでしょう。葛飾区は多くの観光資源を抱えているにもかかわらず、その情報が十分に行きわたっているとは言い難いので、今後は、都心とはひと味違う東京に触れてもらえるよう、葛飾区の魅力をより積極的に発信していきたいと思っています。

広域にわたり多彩な見どころが点在する葛飾区「葛飾区観光ガイドブック」2017年3月葛飾区産業観光部観光課発行
広域にわたり多彩な見どころが点在する葛飾区
「葛飾区観光ガイドブック」2017年3月葛飾区産業観光部観光課発行


  • 執筆・取材:田中 洋子
  • 写真提供:葛飾区

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