海外からのお客さまが増える今、ザ・リッツ・カールトン東京が大切にするおもてなし

ザ・リッツ・カールトン東京 宿泊部 エクゼクティブ クラブラウンジ マネージャー 香取良和さん

2017年度の訪日外国人数は2,869万人となり、日本を訪れる人の数はここ数年、増加し続けています。さまざまな国からのお客さまを迎えるホテルではどのようにゲストをお迎えし、どんなサービスを提供しているのでしょうか。世界有数のラグジュアリーホテル、ザ・リッツ・カールトン東京の香取良和さんに伺いました。

ザ・リッツ・カールトン東京
2007年に東京・六本木にオープン。運営するザ・リッツ・カールトン・ホテル・カンパニーL.L.C.は約1世紀前に誕生。創始者、セザール・リッツによって確立されたホテルのサービスやホスピタリティーを継承する国際的なホテルグループは現在、世界最大のホテルチェーン「マリオット・インターナショナル」の傘下にある。日本国内は、東京の他、大阪、京都、沖縄に店舗を置く。

アメリカやアジアなど
海外からのゲストの目的はビジネスから観光へ

――外国人のお客さまの割合はどのくらいですか。

香取 2017年度ではお客さまの約60%が海外からいらっしゃいました。内訳は、アジアとアメリカが各25%程度、ヨーロッパが約10%です。

アジアの中では主に中国、香港、シンガポールのお客さまが多かったように思います。中でも、最近は中国からのお客さまが増えているように感じます。

当ホテルで海外からのお客さまが顕著に増えている印象はありませんが、来日目的にははっきりとした変化が見受けられます。2、3年前までは、滞在されるお客さまの大半はビジネス目的でした。しかし、今は観光目的のお客さまが急増している印象があります。以前は、大みそかに宿泊されるお客さまはほぼ100%日本のお客さまでしたが、今年のお正月は、私が働くクラブラウンジでも、お客さまの半分は海外からのお客さまでした。

ザ・リッツ・カールトン東京「クラブラウンジ」。「クラブレベル」宿泊のお客さまに、ワンランク上のサービスを提供している専用ラウンジ
ザ・リッツ・カールトン東京「クラブラウンジ」。「クラブレベル」宿泊のお客さまに、ワンランク上のサービスを提供している専用ラウンジ

外国人旅行者が行きたがるのは
ガイドブックに載っていないディープな場所

――海外からのお客さまが関心を持つ観光スポットは、どのようなところですか。

香取 最近は、「通常のガイドブックに載っていないようなところ」に関心を持つお客さまが増えました。「東京の有名観光スポット」は既に訪れたお客さまも多く、インターネットでは探しにくい、「観光客が知らないローカルな場所で、面白いところはどこか」といった、一ひねり、二ひねりした質問を受けることが多いです。

私たちも良い提案ができるように、雑誌や本を読んで勉強していますが難しいですね。休日など時間のあるときに自分で実際に足を運び、あちこち見聞きして情報収集をしています。

――具体的にどんな場所をお客さまに薦めましたか?

香取 ザ・リッツ・カールトン東京をよくご利用いただくアジアからのお客さまから、「行ったことがないところに行ってみたい。全部任せるから、3泊4日くらいでツアーを組んでほしい」とリクエストを受けたことがあります。もちろん「平凡な場所ではなく、エキサイティングな経験ができるところ」を求められていらっしゃいました。そこで、私の母の実家がある五島列島を提案しました。海がきれいで、海の幸もおいしいく、ノスタルジックな雰囲気があり、外国人観光客はあまり訪れない場所です。航空券からホテル、ガイドまで全てこちらで手配いたしました。お客さまは五島列島でのお時間を非常に満喫されたようで、当ホテルに戻った際には、たくさんの写真を見せてくださいました。

ザ・リッツ・カールトン東京 宿泊部 エクゼクティブ クラブラウンジ マネージャー 香取良和さんザ・リッツ・カールトン東京
宿泊部 エクゼクティブ クラブラウンジ マネージャー 香取良和さん

増加する中国からのお客さまに対応し、中国語研修を開始

――国籍、言語、文化が異なる海外からのお客さまに合わせて、どのようなサービスをされていますか。

香取 「お客さまに心のこもったおもてなしをする」のが、ザ・リッツ・カールトンの基本的な考え方です。文化や言語の違いに合わせるのではなく、お客さま一人一人に合わせたサービスをしています。

海外からのお客さまとは、通常英語でコミュニケーションしていますが、お客さまの中には英語をお話しになられないお客さまもいらっしゃいます。最終的には心が通じればお客さまにご滞在を満足していただけますが、言葉が通じないと本当に100%満足していただけているのか、こちらも少し不安になることもあります。

そこでザ・リッツ・カールトン東京では、外国人スタッフを加えるなど、多言語対応にも力を入れております。

また、社内の語学研修でもこれまでの英語に加えて、中国語が組み込まれました。日本人スタッフも、中国語圏のお客さまにごあいさつだけでも中国語でできるように勉強しているところです。

――スタッフを採用の際は、どの程度の外国語力を求めますか?

香取 採用面接では英語による会話もあり、英語力はホテルで働く上で大事な点ではあります。しかし、それよりもお客さまに共感して、お客さまの気持ちに立ったおもてなしができるセンスや素質を持っているかが重視されます。誰に対してもオープンな心を持っているか、笑顔があるか、思いやりや、相手の気持ちになって物事を考えられるか……といったことですね。

ザ・リッツ・カールトン東京では、先ほど申し上げたように英語と中国語の語学研修を実施していますし、海外からのインターン生には日本語のレッスンも用意しています。加えて、インターネットを通してのe-ラーニングが受けられるプログラムもあり、そこでも語学やホテルで必要とされるさまざまな科目が学べます。

ベジタリアン、グルテンフリー……
「食」への対応がインバウンドのポイントの一つに

――お客さまを増やしていく上で、今後はどんなことが課題になると思われますか?

香取 現場の観点では、海外からのお客さまのニーズが多様化しているので、コンシェルジュのサービスを強化していく必要があると感じています。

また、食についてもさまざまな対応が必要になってきています。

最近ですと、ヴィーガン(厳格な菜食主義)でグルテンフリー(小麦粉などに入っているグルテンを摂取しない食事法)のお客さまが、「天ぷらを食べてみたい」とおっしゃったことがあります。通常天ぷらは小麦粉を使って揚げます。また、つゆにはかつおだしを使いますし、しょうゆにも実はグルテンが入っています。ホテル内の日本料理「ひのきざか」のシェフに相談すると、揚げ油は別にして、小麦粉の代わりに米粉を使って野菜の天ぷらを用意することができる、と提案されました。天つゆの代わりに、グルテン不使用のたまりじょうゆや数種類の塩で、お客さまの念願であった天ぷらをおいしく召し上がっていただくことができました。

ホテルだからこそ、対応できたことだと思っています。今後も、食の制限をお持ちのお客さまに心地よく滞在していただくために、私たちホテル側もさまざまな対応や準備をしていくことが求められるでしょうね。

最近はヴィーガン対応のお店も東京にはできていますが、まだヴィーガンやベジタリアン向けの食事、グルテンフリーに対応した食事を出せるお店は限られていると思います。食の問題は日本のインバウンドの大きな課題ではないかと私は思います。


  • 取材・文:原 智子
  • 写真:アルクplus 編集部

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