新規参入が相次ぐ宿泊ビジネス最新動向――増え続ける訪日外国人を迎える中で

オックスコンサルティングの高橋佑輔さん、福岡拓実さん

日本を訪れる外国人の数(訪日外客数)が毎年増え続ける中、インバウンドビジネスの状況はどうなっているのでしょうか。新法が6月に施行される民泊の最新動向を中心に外国人向けの宿泊施設やサービスについて、民泊関連情報サイト「MINPAKU.Biz」を展開するオックスコンサルティングの高橋佑輔さん、福岡拓実さんにお話を伺いました。

<お話をお聞きした方>
株式会社オックスコンサルティング
ホテル事業部 ホテルプランナー 高橋佑輔さん(右)
民泊事業部 営業統括部 民泊プランナー 福岡拓実さん(左)

インバウンドの拡大を受けて、宿泊ビジネスへの新規参入が活発に

――ホテルや旅館などの宿泊業の開業サポートや、運営代行サービスをされていますね。御社から見て、インバウンドビジネスはどのような状況にありますか。

高橋 昨年、訪日外国人が2,000万人を突破しました。さらに政府は東京オリンピック・パラリンピックが開かれる2020年までに、訪日外国人を4,000万人に増やす目標を掲げていることもあり、宿泊ビジネスはとても活気づいています。日本全国でホテルや、ドミトリー(相部屋)を中心とした簡易宿泊所のホステル、そして民泊施設などが次々と建てられています。

弊社はホテル事業部、バケーションレンタル事業部などに分かれ、宿泊ビジネスの運営代行やコンサルティングを法人向けに行っています。

お客さまはディベロッパー(開発業者)や設計会社が中心です。所有している土地や建物を使って宿泊ビジネスを始めたいというご相談に乗っています。

ディベロッパーや設計会社は建物という「箱」を作るプロですが、その箱を使って、ホテルや民泊をどう運営するかというソフトのノウハウはお持ちではありません。例えば「●●のマンションを民泊施設にしたい」といったご相談に対して、「場所はいいですが、競合相手も多く競争は激しいので、民泊施設にするなら外観を含め際立った特徴を持つことが大事です」といったコンサルティングから始めることも多いです。

民泊新法によって、法人の民泊事業への関心が高まっている

――2018年6月15日に「住宅宿泊事業法」(民泊新法)が施行されますが、これによって民泊はどのように変化していくのでしょうか。

高橋 民泊新法ではホストは届け出制で、営業日数は年間180日以内になります。市町村によっては、条例でさらに短い日数に制限されます。また生活の本拠としない施設をゲストに貸す「家主不在型」の民泊では、専門の管理者を雇うことも義務付けられています。

これまで「家主不在型」は、マンションの一室を貸すといった形で個人でも比較的容易に参入できるビジネスでしたが、新法施行後はコスト面、営業日数面から状況が大きく変わります。

――新法施行後、法人はなぜ民泊がビジネスとして成り立つのですか?

高橋 法人の民泊事業は民泊新法ではなく、従来の「旅館業法」の「簡易宿所営業」などで申請します。民泊新法よりも諸条件は厳しく、既存の建物なら消防署や保健所、警察の規定に合わせてリノベーションも必要になるでしょう。しかし申請が通れば365日、宿泊所として営業ができます。

またこれまでグレーゾーンにあった民泊が新法で法律的に明確に定義されるため、企業としては民泊ビジネスに参入しやすくなりました。不動産の新たな生かし方として、民泊に関心を持つディベロッパーが増えていますね。

文化交流などを目的とした個人が行う民泊は、民泊新法で届け出る形に、ビジネスとしての民泊は旅館業法で申請して営業することになっていくでしょう。

ゲストとのやりとりは海外コールセンターで

――民泊の運営代行では、どのような業務をされているのでしょうか。

福岡 集客から、ゲストとのやりとり、クレームやトラブルの対応・処理、そして部屋の清掃など、必要な業務全般を代行します。集客では10種類程度の宿泊予約サイトに情報を登録し、清掃は清掃専門の会社にお願いするなど、必要に応じて業務委託しながら運営しています。

オックスコンサルティングの高橋佑輔さん、福岡拓実さん

――ゲストとのコミュニケーションはどのようにとっていますか。

福岡 以前はアルバイトのスタッフが英語でコミュニケーションしていましたが、次第にゲストとのやりとりの量が増えて対応しきれなくなりました。

そこで日本の会社と業務提携し、フィリピンのセブ島にあるコールセンターの現地スタッフに対応をお願いしています。日本語・英語・中国語の三カ国語の対応が可能です。

ゲストからの問い合わせは、予約時と現地に到着してからの2種類に分かれますが、予約時は宿泊業一般でよくある問い合わせがほとんど。「シャワールームはありますか?」「小さな子どもがいますが定員4名の部屋に5名で泊まってもいいですか」といった感じのものです。

到着してからは「宿から近いコンビニはどこですか」といった現地情報の問い合わせから「部屋の鍵の開け方がわからない」「トイレが詰まった」などのクレームやトラブルまで、さまざまな内容のものになります。

こうしたゲストからの問い合わせには、コールセンターのスタッフが対応します。もちろんこちらからも必要に応じスタッフに指示を出したり、排水管の修理の手配をしたりなどして動きます。

中国人のお客さまが増えてきたのをはじめ、最近はタイからのお客さまも非常に増えています。ゲストの多国籍化が進む中、言語部分でコールセンターのスタッフとの意思疎通に苦労されるゲストもいらっしゃいます。英語・中国語以外の言語対応のニーズは確実に増えてきております。

直接的コミュニケーションを求める旅行者はホステルへ

――民泊ではホストとゲストの直接的なコミュニケーションは少ないんですね。

福岡 民泊が始まった当初は、ホストとゲストのつながりや交流が一つのコンセプトでしたが、ビジネス色が強くなるに従って直接的コミュニケーションは減っていきましたね。

「ホームステイ型」の民泊では今も直接的な交流がありますが、「家主不在型」で民泊を運営する場合はどこもメールや電話でのコミュニケーションが中心です。ゲスト側も交流を求める人がいる一方、リーズナブルな価格でプライベート空間を確保したいという人も増えています。

現地での交流を求める旅行者は、今はホステルに集まってきています。私たちが運営代行しているホステルでは、スタッフにゲストとのコミュニケーションをするように呼び掛けています。共有部に一人でいる外国人ゲストに声を掛けたり、現地の人しか行かないような飲食店などの情報を紹介したりといったことを積極的にしています。

――御社のインバウンドビジネスについて、今後の展望を聞かせてください。

高橋 インバウンドは2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでは拡大していくでしょうが、それ以降どうなるかは未知数です。いずれは訪日客の増加が止まる時が来るかもれません。弊社としてはそれまでに、宿泊運営代行のノウハウや知見を蓄積し、仕組みをしっかり作り上げておくことが重要です。

日本の接客は世界的に評価されているので、宿泊施設の運用代行をする私たちとしても、5つ星ホテルに引けを取らないような接客を目指していきたいですね。

  • 取材・文:原 智子
  • 写真:アルクplus 編集部

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