コミュニケーション

CLIL(クリル)って何? 上智大学の藤田 保先生に聞きました

上智大学 藤田 保先生

英語の4技能を高める、CLIL(クリル)。ヨーロッパを中心に、世界で注目を集める教育方法です。CLILを通して身に付く力、また授業の進め方を、上智大学の藤田 保先生に教えてもらいました。


目次

  • 子どもの“考える力”を伸ばす教育
  • 英語を学ぶのではなく、英語を使うシーンありきで表現に触れる
  • 未来を生きる子どもたちに必要な力を付ける

子どもの“考える力”を伸ばす教育

――最近、語学学習関連の記事や広告などでCLILという言葉を頻繁に耳にするようになりました。

藤田 CLILはContent and Language Integrated Learning(内容言語統合型学習)の略で、文字どおり教科やトピックなどの「内容」と「言語」を融合して学ぶ教育方法です。1つのテーマをさまざまな角度で扱いながら、学習者同士がいろいろなやりとりを行い、言語を身に付けていきます。実は考え方はそれほど目新しくはありません。基本的な考え方は、以前からあったテーマ学習や内容重視の言語指導とよく似ています。

CLILの一番の特徴と言えるのは、授業の内容が「4つのC」で組み立てられているということです。

  1. Content=内容、トピック
  2. Communication=読む、書く、聞く、話すといった言語スキルや言語知識
  3. Cognition=考える力、認知力
  4. Community / Culture=共同の学び、多文化・国際理解

近年、英語に限らず全体的な教育に関する考え方として、先生が知識を伝えて生徒がそれを覚えるという知識伝授型ではなく、生徒自身に自分の頭で考えさせることを大切にしながら、さらには仲間と話し合って課題を解決させるやり方が推奨されています。CLILはまさにそうした教え方だと言えます。

――CLILを取り入れた英語の授業は、これまでとどう違うのでしょうか。

藤田 これまで英語を学ぶ時には、まず単語と文法を覚えて、まるでブロックを組み合わせるように文章を作っていくというステップでした。でもその結果、大半の大人は英語を自由に使いこなすことができていません。なぜかといえば、英語を学んで何をするのかという目的意識が薄いからです。

言葉を学ぶことによって伝えたいことを表現できるし、相手の言葉を理解できるようになる。そうした目的を持ったやりとりのために言葉があるのだというところに焦点を当てたのがCLILによる授業です。

先生はあるテーマに対して、生徒がどんなメッセージを発信したいのかということを必ず先に引き出し、それを周りに伝えるにはどうすればいいか、考える授業を行います。今までのように「試験に出るから覚える」ことだけでは定着しにくかったものが、言いたいことがある時に「こういう言い方をしたら伝わるよ」と教わることで、生徒は表現がスッーと頭に入っていくのです。

こうした授業の中では先生の役割も変わってきます。今までのように知識を伝えるだけでなく、生徒同士が話し合う時の進行役であったり、時には生徒が考える時のヒントを与えたり。そういう役割を果たしていくことになるでしょう。

私がアドバイザーとして携わっている、アルク Kiddy CAT英語教室の小学校高学年向けテキストでも、CLILの考え方を取り入れています。レッスンでは順を追って、より広い範囲の語彙力や文構造を扱い、最終的には生徒が自分の考えや意見を“自分の言葉で”表現豊かに説明できるようになるカリキュラムを組みました。中学生に負けない英語力や思考力も身に付きます。

CLILの要素を取り入れた、アルク Kiddy CAT英語教室のテキスト
CLILの要素を取り入れた、アルク Kiddy CAT英語教室のテキスト

英語を学ぶのではなく、英語を使うシーンありきで表現に触れる

――小学校の新しい学習指導要領が2020年度からスタートします。英語に関しては、3、4年生が活動、5、6年生は教科になります。文部科学省はどういう授業を考えているのでしょうか?

藤田 2011年度から5、6年生に導入された外国語活動の最大の目的は、英語に慣れ親しむことでした。けれど始めてみると高学年はすでに知的レベルが高く、英語で歌ったりゲームをしたりという内容では満足できなかった。それであればもっと早い年齢で開始するほうがスムーズに行くのではないかということで、活動型は3、4年生で行うことになったのです。

そして英語の基盤ができたら、高学年では文字なども扱いながら、教科として知的好奇心を満たせる内容を取り入れるのがいいのではないか、それが中学英語の基礎にもなるだろうという狙いです。また今回の学習指導要領では、言葉を使う場面や目的を大事にして学んでいこうということが強調されています。どんなシーンで英語を使うのか、必然性が大切なんですね。

例えば、夏休み明けに休暇の思い出を語るテーマでは、どうしても過去形で話すことになります。でも小学校では、go の過去形が went だよという教え方はしません。「~に行ってきました」と言う時は、”I went to …”と言うのだと教えます。また、クラスの友達や家族について話す場合は三人称を使うことになりますが、文法としての「三人称の s」を教えるのではなく、助動詞 can を使って “She can run fast.” といった言い方にすれば、s のありなしを気にせずに済みます。

小学校ではシンプルな形で表現に触れ、中学に進学してから形式としての三人称の s や過去形について学び、実はこうだったんだと理解すればいいのです。5、6年生は教科書があるので、中学のような授業をすると思っている方もいるようですが、そういうことではありません。

未来を生きる子どもたちに必要な力を付ける

――そもそもCLILのような授業は、英語教育だけに当てはまるものではなく、全ての教科で行うべきだと言われているようです。なぜ今、そのような教授法が主流になってきたのでしょう。

藤田 今の子どもたちが社会人になる20年後、30年後はどういう世の中になっているかを考えた時、これまでの教育では不十分であり、今まで以上に自分の頭で考える力が重要であるとはっきりしてきたのだと思います。

もともと学校教育は社会に出るための準備をする場ですから、社会の変化と共に内容が変わるのは当然のことです。そういう観点では、20世紀には工場でベルトコンベアのラインに人が並んで部品を組み立てる方法で車や家電を大量生産して日本は豊かになってきました。この時代には言われたことを間違えずに、素早く作業をこなすスキルが大切だったわけです。ところが21世紀には組み立て作業はロボットがやるようになり、求められるのはロボットに何をさせたらいいのかを考えられる人間になった。そうした時代に適した教育として、日本だけでなく世界的な傾向として子どもの主体性を伸ばすことが求められています。そしてその方法の1つとして、CLILのような教授方法が注目を集めているのです。

上智大学 藤田 保先生

教えてくれた人:藤田 保先生
上智大学言語教育研究センター教授。専門は応用言語学(バイリンガリズム)と外国語教育。アルクキッズ事業アドバイザーを務める。NPO小学校英語指導者認定協議会(J-SHINE)理事。著書に『英語教師のためのワークブック』『先生のための英語練習ブック』(ともにアルク)など多数。


  • 取材・文:榎本幸子
  • 写真:アルクplus 編集部

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