英語研修の成果を上げるには学習者の「意識改革」がカギ

株式会社ラーニングコネクションズ 代表取締役 早川 幸治さん(右) 株式会社アルク 営業本部 第4営業リーダー 酒井 俊輔(左)

株式会社ラーニングコネクションズ 代表取締役 早川 幸治さん(右)
株式会社アルク 営業本部 第4営業リーダー 酒井 俊輔(左)

海外でのビジネス展開を進めていくために、社員の英語力向上を目的とした研修プログラムを実施する日本企業が増えています。しかし研修を受ける社員は、現場では英語が不要なケースも多く、英語学習意欲を高められないまま、期待した効果を出せないこともあります。

どうしたら社員の学習へのモチベーションを上げ、英語力を高めてもらえるのか?

企業での英語研修で、多くの方に教えてこられた早川幸治さんに、英語へのマインドセットから具体的な学習法までお話を伺いました。

早川幸治(Jay)
IT企業のSE職から英会話講師に転身。その後、TOEIC対策専門講師として、これまで全国約130社、のべ2万人以上の研修を担当。また、明海大学や桜美林大学オープンカレッジ、明徳義塾高校でも教えている。著書には『2カ月で攻略 TOEIC® L&Rテスト 730点!』(アルク)など40冊以上。学習サポートのための情報発信も行い、単語メルマガは2011年から毎日継続中。また、モチベーションを高めるためのポッドキャスト番組「Jayの英語モチベーションブースター」を毎週水曜日に配信している。

酒井俊輔
今までに100社以上のさまざまな業界の企業を担当。現在も大手企業を中心に研修体系の立案から自己啓発教材の活用、集合研修、留学プログラムの活用まで、目的やニーズに合わせたコンサルティングセールスを行っている。

企業トップと現場で、英語力の必要性への認識に乖離が!
経営戦略などを示し、「英語研修の必要性」も社員に理解してもらおう

酒井 企業の英語研修において、多くの人事担当の方が社員のやる気の低さを課題と考えています。会社のトップは社員の英語力を高めたいのですが、現場では「英語はまだ必要ない」という意識で、学習意欲も高いとはいえない。なぜこうした状況になるのでしょうか。

早川 今の時代、英語が必要か必要ではないかと聞かれれば、誰もが必要と答えるでしょう。そのことについては全社的に同じ方向を向いている。しかし、「今、必要か?」と問われるとトップと現場の認識には乖離(かいり)があるように思います。

企業のトップの多くは、今後は海外のマーケットを目指したビジネス展開が急務と感じ、社員の英語力の必要性を切実に感じていますが、それが現場の社員にあまり伝わっていないようです。

過去に研修を担当したケースでも「英語が今必要だ」というトップの考えに、社員の方々が気づいていないことがよくありました。

企業での英語研修を語る早川幸治(Jay)

酒井 なぜ英語学習をするのかを社員に理解してもらうことが大事ということですね。

早川 英語ができないとビジネスにおいては、機会損失の危険性が増えます。ただ、機会損失は見えにくいんですね。今まで10あったものが8に減れば分かりますが、新規に開拓していくビジネスはもともとゼロですから、ゼロが2になるはずだったのがそのままゼロでも損失として感じられない。そのため英語の必要性を社員は感じにくく、英語学習へのモチベーションが高まらないのではないでしょうか。

英語研修を始めるにあたって、海外進出の事業計画などを含め、経営陣の考えを現場の社員によく理解してもらうことが大切だと感じます。実際、トップと現場が経営戦略や英語力の必要性について同じ認識を持っている企業では、英語研修がうまくいっているケースが多いですね。

忙しい社員が英語研修で成果を出すには?
1日のスケジュールに英語学習時間を組み入れよう

酒井 頭では英語学習が必要だとわかっていても、ビジネスパーソンの多くは忙しくてなかなか学習できないケースも多いです。こういう人たちに、人事担当者はどんなアドバイスをすればいいでしょうか。

数々の英語研修ソリューションを提案する酒井俊輔

早川 時間ができたら英語の勉強をしようと思っても、そのための時間はできません。まず、英語学習時間を1日のスケジュールの中に組み込んでしまうことが大切です。「時間ができたらやる」のではなく、1日の中に学習の時間をなんとか入れてしまうのです。

可能であれば朝、学習時間を取ることをお勧めします。夜中に勉強してもいいですが、睡眠時間を削りがちになりますし、夜より朝のほうが効率はずっと良いですから。少し早く起きて家を出て、オフィスに近いカフェなどで30分だけ集中して勉強する。

このように1日30分でも英語学習だけに没頭する時間をまずつくるといいですね。

あとは通勤時間や、仕事と仕事の間といった「ながら時間」「すきま時間」をうまく使うこと。電車に乗るために並んだらリスニング学習をスタート、最寄り駅まで歩く際にはシャドーイングをやるというように具体的な学習内容を決めておく。こうすると意外と学習時間は確保できるものです。

酒井 英語学習をルーティン化するんですね。

早川 そうです。意志ややる気に頼ってもなかなか続きません。たとえば毎日出社できるのは意志ではなく、習慣やスケジュールの力によるものです。英語学習も同じです。やる内容を細かく決めたスケジュールに沿って学習していくことで、英語学習は習慣化され、自然と続けていけるようになります。

習慣化するためにも、英語は毎日学習することが基本。疲れてしまった時、忙しい時にも英語に触れられるように、軽めのメニューを用意しておくこともお勧めします。

3日単位で学習を続けると3週間で習慣化
3カ月で学習効果が表れる

酒井 習慣づけなどのキーワードとして、早川さんは「3」という数字をよく出されますね。

早川 人間は72時間、つまり3日周期で生きているんですよ。今、吸った酸素も72時間たったら体内から出ていきます。つまり3日間でさまざまなものが入れ替わる。「よし英語やるぞ!」と決めた強い思いが頭に残っているのも72時間。3日たつと忘れてしまう。それを俗に三日坊主というんです。ですから決心したことは、72時間以内に行動することが大事です。

学習スケジュールも72時間周期に合わせ、3日単位で立てると続けやすい。今日明日、明後日で可能な学習スケジュールを立てる。それが達成したら次の3日分のスケジュールを作って、3日を一単位としたスケジュールで学習を続けていくのです。

これを7回繰り返すと、21日、3週間になります。

基本的には3週間繰り返しやってきたことは習慣になります。意志の力がなくても続けられる状態ですね。

ただ3週間では結果はまだでません。学習効果が感じられるには、3カ月が必要です。3カ月続けると英語が聞きやすくなったり、知っている単語が増えたりといった効果を感じるようになります。ちょっとでも上達したように感じるなら、実際にはかなり実力が伸びています。

3日単位の学習を繰り返し、3週間続けて学習習慣をつけ、3カ月で学習効果を実感する。ここまでいくと英語学習が苦ではなくなってきて、モチベーションも上がってきます。

英語研修で成果を出したことをきっかけに
自信をつけて活躍する社員も

酒井 英語研修をより効果的にするためのアドバイスをお願いします。

早川 上司や周囲の精神的なサポートは大きいですし、学習仲間同士で刺激しあうこともよいですね。そして情報を共有することがとても大事です。

英語研修で成果が上がっている企業では、どんな学習をしたのか情報を共有しています。それぞれ学習スタイルがあるので、その中から自分に合いそうなやり方を選んでいくようにしてますね。

また、英語力を高める目的の共有は繰り返し行うことが大事です。以前の例で、お客さまが英語で対応する必要に迫られ、自分たちも彼らをサポートしようと英語力を身に付けたケースがあります。英語自体ではなくお客さまのサポートが主目的となったことで、学習意欲が上がった社員の方が多かったです。

酒井 英語研修で良い結果を出したことで、ほかにも良い影響があった例はありますか?

早川 研修スタート時に49歳で、今後のためにと英語学習をスタートした方がいらっしゃいました。周囲からは「無理だからやめたほうがいい」と言われていたのですが、着実に学習を続け最終的に730点を超えて、英語を使う部署に異動になりました。その姿を見ていた周囲も、英語の勉強を始めたそうです(笑)。

その方だけでなく、努力して英語力を伸ばした方は「英語学習をきっかけに、いろいろなことに挑戦するようになりました」とおっしゃるんですね。無理だと思ったことを努力して達成したことで自信がつく。これは英語学習の大きな副次的効果だと思います。


今回、お話を伺った早川先生の人事・研修ご担当者向けセミナーが3月8日(木)に開催されます。セミナーでは、学習者のモチベーションをアップさせるマインドセットや、継続のための具体的な学習法などについて講演いただきます。英語研修の効果を最大化するヒントが見つかる貴重な機会ですので、ぜひご参加ください。
残席僅かです。セミナーの詳細・お申し込みは下記リンク先をご覧ください。

英語学習意識改革セミナー
https://www.alc-education.co.jp/business/seminar/kaikaku1803.html


  • 取材・文:原 智子
  • 写真:アルクplus編集部

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