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会社が社員に求める英語力――TOEICスコアと実践力を同時に伸ばすには?

アルク 営業本部 第二営業リーダー 池田 宏(右)、アルク 事業運営本部 TOEIC、R&B研修コーストレーナー 斎藤美祈(左)

英語力を測る評価軸として、「TOEIC® L&R TEST」(以下、TOEIC)を活用する企業が多い中、TOEICスコアが上がっても、英語を話すことや使うことに苦手意識が残ったままの社員が少なくありません。

この状況を改善するために、より実践的な英語研修が求められている現状について、アルクで長年、企業研修を担当してきた池田と、講師の斎藤トレーナーに聞きました。

池田 宏……30年以上にわたり、1,500社以上のグローバル人材育成に携わる。研修体系の立案から自己啓発教材の活用、集合研修、留学プログラムの活用まで、目的やニーズに合わせてコンサルティングセールスを行っている。
斎藤 美祈……研修内容や資料の開発、日本人講師のトレーニングに携わる。10年以上の海外業務経験があり、英語を実際に使うことをイメージさせながら学習させるティーチングスタイルには定評がある。英語スピーキングテスト「TSST」評価官の資格も持つ。

TOEICのスコアもコミュニケーション力も迅速に身に付けてほしい…というのが企業の本音

――企業が社員に求める英語力には、どのような傾向があると見ていますか?

池田 ひと言でいうと実践的な英語力をきちんと付けてほしいというニーズが以前にもまして高まっています。TOEICについてはやはりスコアを上げてもらいたいですが、実際に英語が使えないと意味はない。

研修では試験対策ではなく、実力が付いた結果としてTOEICのスコアが上がるようにしてほしいという要望があります。同時に、確実にスピーキング力も伸ばしてほしいというリクエストで、研修の成果がすぐに出ることも求められています。

アルク 営業本部 第二営業リーダー 池田 宏

――なかなか厳しい要望ですね。

池田 それだけビジネスで英語を使う必要性が高まっているのでしょう。以前はビジネスで英語を必要としていなかった企業でも、英語でのコミュニケーションが必要になり、その導入としてTOEICを採用したケースも増えています。

元々アルクでは、TOEICの研修で英語力の根幹を鍛えるR&B(Rhythm & Beat)メソッドを取り入れてきました。

R&Bとは、英語の音のルールを習得した上で、英語を理解する回路を構築するためのトレーニングです。頭の中で英語の「音」「意味」「文字」がつながっていないため、「読めばわかるけど聞くとわからない」「スピードについていけない」ですとか、話すときには「つい日本語で考えてうまく話せない」という状態になります。

「音」「意味」「文字」をつなげるために、シャドーイングやディクテーション、リピーティングなどの発話を駆使したトレーニングを行うことで、リスニング力の向上やスピーキング力の土台作り、自己学習法の体得という3つの効果が期待でき、TOEICスコアアップのためのしっかりした基礎固めができます。

これまでR&Bトレーニングでは、アルクのオリジナル素材を使用して行ってきましたが、昨年より、TOEIC模試の素材を活用して行う研修も開始いたしました。

本プログラムでは、問題すべてに音源素材がついた書籍『TOEIC® L&Rテスト 至高の模試600問』を教材に、これらのトレーニングを徹底して行い、語順理解や聞き取り、発音など英語の基礎力をしっかり付けつつ、同時にTOEICのスコアアップも目指します。

さらに教材を使いスピーキング力を伸ばすトレーニングもできるのが大きな特徴で、昨年12月6日には「TOEIC素材を使ったスピーキング研修」というデモレッスンを開催し、斎藤美祈が講師を務めました。

より実践的になった新形式のTOEICーースコアアップのためにはコミュケーション力が必要

――TOEICのスコアアップのための学習で、スピーキングのトレーニングもできるのですか?

斎藤 TOEICは2016年に10年ぶりに改訂され、内容が非常にAuthentic(実践的、本格的)になりました。そのためTOEICの学習が、スピーキング力アップにも役に立つようになったんです。

私は以前、オーストラリアの会社で働いていたのですが、TOEICの問題に登場するフレーズや文章は、当時仕事で話したり、聞いたり、読んだり、書いたりした英語ばかり。『TOEIC® L&Rテスト至高の模試600問』を素材にR&Bメソッドで学習し、その表現をしっかり身に付けていけば、TOEICのスコアは上がり、かつスピーキング力アップにつながると自信をもって言えます。

アルク 事業運営本部 TOEIC、R&B研修コーストレーナー 斎藤美祈

――具体的にどのようにTOEICの内容は実践的になったのでしょうか。

斎藤 特に顕著なのがPart 2の応答問題です。音声を聞いて、問いかけの英語に対する適切な応答例を選ぶという形式はそのままですが、内容が非常にリアルなビジネス会話に変わりました。

たとえば「出張はいつですか」という問いかけがあったとします。

これまではwhenで聞かれたら、「日時」についての言葉の入った選択肢を選べばいいといった試験対策が取られてきました。ところが新形式のTOEICでは「その出張はキャンセルされました」といった回答など、ちょっとひねった応答が正解になったりします。

あるいは「赤と黒のドレス、どちらがよろしいですか?」という問いに、「他の色はないの?」と質問で返す応答が正解になることもあります。会話内容や状況を理解する力が求められています。

Part 2を正しく学習すれば、スコアとともにスピーキング力も上がっていく

――かなりひねった内容になっているんですね。

斎藤 12月のデモレッスンでも、Part 2に戸惑う参加者の方が多かったですね。でもひねった問題というよりは、リアルなコミュニケーションにより近くなったのだと思います。質問に直接答えなかったり、質問に質問で返したりといったことは実際の日常会話ではよくありますよね。

これまでの試験対策では解けない問題が増えているので、難しく感じる人は多いでしょう。730点以上を目指す人には、Part 2がスコアアップの壁になるかもれません。

デモレッスンの様子
デモレッスンの様子

――Part 2の対策にはどのような学習をすればいいのでしょうか。

斎藤 音声の内容やその状況を瞬時に理解、推測できる「瞬発力」と、問いかけに対してどのような回答がありうるのかを想像する「発想力」の二つの力を鍛えることが大事です。

「瞬発力」をつけるには、R&Bメソッドによるさまざまなトレーニングをしっかり行うこと。また会話のシチュエーション、話している人たちの関係を推測しながら聞く習慣をつけることも大切です。

「発想力」を鍛えるには、投げかけられた質問に対する回答例を英語でいくつも考えてみること。英語で考えるのが難しければ日本語でもかまいません。まず発想することが大事です。

デモレッスンでは「今年の仕事はいつまでですか」という質問への回答例を考えてもらいました。「28日までです」と具体的な日にちを答える回答以外は、皆さんはじめは悩んでいましたが、やがて「覚えていないので確認してみます」「部署によって違います」といった変化球の回答も登場しました。

こうした瞬発力や発想力をつけていくと、Part 2のスコアも上がると同時に会話力も上がります。ビジネスの場面で必要な英語のフレーズがさっと出てきたり、どんなことを言うべきか考えられるようになるからです。

英語はビジネススキルの一つという時代-英語を自分に引き寄せて、楽しく学ぼう

――今後、ビジネスで英語力はさらに必要になっていくのでしょうか?

池田 英語を使う業種や部署は増えていますね。中でもエンジニアや生産現場などの職種の人が、直接海外の生産現場において英語で説明したり指導したりするケースが増えています。今は英語を使う必要がない人でも、いずれは必要になるかもしれない。英語ができないことでキャリアが限定されてしまう危険もあります。

英語はビジネススキルの一つと考え、仕事を円滑に進めるために積極的に学び、現場では英語をアウトプットするのを楽しむようにしてみてはいかがでしょうか。

斎藤 研修の受講生には突然英語が必要になり、戸惑いやいら立ちを見せている方も少なくありません。そういう方には自分の生活に引き寄せて英語を学ぶことをお勧めします。

Regardless of ~(~に関係なく)という例文を覚えるなら、絶対出席しなくてはならない年度初めの会社のミーティングなどを思い浮かべて、「どんな天候でも、あのミーティングには絶対出席しなくてはならない」というような英文を作ってみると、英語が身近に感じられ身に付けやすくなります。

「この表現は仕事のどんな場面で使えるだろうか」と英語をどん欲に自分自身に引き寄せて学んでください。そして覚えた表現は仕事の現場などでどんどん使ってみましょう。実践的な力がどんどん付きますし、英語を学ぶこと自体も面白くなっていくと思います。


  • 取材・文:原 智子
  • 写真:アルクplus編集部

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