TOEIC高スコアなのに英語が話せない? TOEICとスピーキングのギャップを埋める方法はコレ!

事業運営本部 プログラムトレーナー 北島典子(左)アルク教育総合研究所 平野琢也所長(右)

[英語学習ホントのところ]アルク総研に聞きました!: TOEICスコアとスピーキング力の関係

「TOEICのスコアは高いのに、英会話力はそれほどでもない――」。そんな話を耳にしたことはありませんか? 実際のところ、その差はどれぐらいなのか、また両者のギャップを埋める方法について、アルク教育総合研究所(アルク総研)の平野琢也所長と、アルクの北島典子トレーナーに聞きました。


北島典子……アルクの英語スピーキングテスト「TSST」と対面スピーキングテスト「SST」、持っている知識を活用してスピーキング力の向上を図る研修「クリエイティブ・スピーキング」の品質管理に携わる。スピーキングテスト評価官、試験官養成も行う。

平野琢也……入社以来、教材編集や各種テストの開発・運用、英語学習アドバイザー資格認定制度の立ち上げ・運用などに関わり、2014年からはアルク教育総合研究所にて、英語教育関連の調査・研究に携わる。


目次

  • TOEICが同じスコアでも会話力にはばらつきがある?
  • TOEIC学習は無駄ではない。身に付けた知識を使いこなすことが大事
  • 今持っている英語の知識をいかに会話に生かしていくか
  • ビジネスで英語を話すのは当たり前の時代に

TOEICが同じスコアでも会話力にはばらつきがある?

–TOEIC L&Rテストがハイスコアなのに、英語をスムーズに話せない学習者がいるといわれています。

平野 アルクで開発したスピーキング能力を測るテスト「TSST」(Telephone Standard Speaking Test)の受験者2万5559名のデータをもとに、TSSTのスコアとTOEICスコアとの関連を調べたところ、この二つには相関係数0.69という中程度の相関があり※、TOEICのスコアが上がればTSSTのスコアも上がる傾向にあるという結果がでました。

つまりTOEICがハイスコアな人ほど、会話能力も高い傾向にあるのです。

TSSTレベルとTOEIC®テストスコアの関係

ただし、TSSTのレベルごとにTOEICスコアを調べると、非常にばらつきがあります。海外出張を任されるレベルのTOEICスコア 800の人の中には、TSSTがレベル7、6と、かなり話せる人もいれば、レベル4、3で仕事でのやりとりはちょっと厳しい人もいるのです。

TSSTのレベルは本文最後をご覧ください。

つまり同じTOEICのスコアでも、会話力は個人差が見られるんですね。TOEICのスコアから想定される会話力と、実際のTSSTのレベルとのギャップが大きい人と小さい人が混在しています。

–なぜ、ギャップの大きい人と小さい人が混在しているのでしょうか。

平野 個々人の英語学習のやり方の違いが原因だと考えられます。TOEICはリスニング力と語彙や文法など、英語コミュニケーションの基礎知識を測る試験ですので、その対策はインプット中心の学習になります。一方、スピーキング力を上げるには、実際に英語を話すなどアウトプットの練習が必要です。英語学習としては両方の学習をバランスよく行うことが理想ですが、これまでインプット中心の学習をしてアウトプットの練習はほとんどしてこなかった場合は、TOEICで高いスコアを獲得できても会話力が低くなってしまう結果になりがちです。

–企業向けの英語研修クリエイティブ・スピーキング(クリスピ)の講師をされている北島さんはどうお考えですか?

北島 研修の最初に人事担当者や受講者の方にまずお伝えするのは、「英語の知識=スピーキング力ではない」ということです。ゴルフを例にとると、素晴らしいゴルファーのスイングを見て研究したり、よいクラブをたくさん持っていたりしたとしても、実際に自分でクラブを使ってボールを打ってみなければ、ゴルフはうまくなりません。

英語も同じです。TOEIC L&Rテストのために語彙や構文、文法についての知識を学んでも、その使い方を練習しなければ、使いこなすことはできません。つまり話す力そのものとは異なるので、TOEICのスコアが高い人が話せないとしても、そんなに不思議なことではないのです。

事業運営本部 プログラムトレーナー 北島典子

TOEIC学習は無駄ではない。身に付けた知識を使いこなすことが大事

–TOEICは英会話力を高めるうえでは、あまり役に立たないのではないかという意見がありますが、どうお考えですか?

平野 TOEICに備えるための学習は、英語コミュニケーションの基礎体力を付けるために有効だと思います。スピーキングテストを受けた人の音声を文字に書き起こして分析してみると、TSSTのレベルが上がるにつれて以下のような特徴がみられます。

  1. 1文の長さが長くなり、複文・重文など複雑な文で話せるようになる。
  2. 使う単語の種類が増える。
  3. 一定時間内に話す単語の数が増え、流暢さが上がる。
  4. 誤りの数が少なくなる。

このうち1、2、4については英語の知識が必要で、TOEICのための学習が生かされます。

北島 クリスピの研修の経験から申し上げると、TOEICのスコアが高いほうが会話力の伸びしろは大きい傾向があります。クリスピではその人が今持っている英語の知識を、使いこなしていくための練習をしていきます。TOEICのスコアが高ければ、それだけ会話に使える語彙や構文の数が多く、より幅広い表現が可能になります。逆に使える語彙や構文が少ないと会話力の伸びも限定されてしまいます。またコミュニケーションの場で必要なリスニング力が身に付けられる点でも、TOEICに向けた学習は有用だと思います。

今持っている英語の知識をいかに会話に生かしていくか

–実際に英語を話せるようになるためには、どうしたらいいのでしょうか。クリスピではどのようにトレーニングをしているのですか。

北島 自分が持っている語彙や知識を使い切って英語で話すトレーニングをします。「今日の午後の予定は?」というような質問を投げかけて、多様なトピックに英語で答えていただきます。

また、「質問する」「理由づけをする」「背景を説明する」「叙述する」といったさまざまな「言語機能」を活用したトレーニング方式で、ちょっとしたコツを参加された方がつかむと、すっと英語が話せるようになっていく傾向がありますね。

–自分でスピーキング力を上げるには、どんな練習をするといいでしょうか。

平野 スピーキングは「英語で声を出す」ことと「英語の文を作る」、二つの要素が絡まった作業です。スピーキングの練習をこれまであまりしたことがない人は、この二つを分けてやってみてもいいと思います。

まず英語を口にする、声を出すことから始めましょう。音読やリピーティングがお勧めです。1日15分とか10分でいいので、毎日、英語を声に出す習慣をつくりましょう。

次に英語の文を作る訓練ですが、短い英文を書く習慣をつけるといいです。たとえば英語で3行程度の日記を書いてみる。夕飯に食べたものや、通勤電車で見かけたことなど、内容は簡単なことで構いません。完璧な英語は求めず、とにかく毎日書き続け、アウトプットの量を確保することが大事です。

アルク教育総合研究所 平野琢也所長

北島 可能であれば、英語で話す機会を増やしていきましょう。クリスピでは1日1分、毎日違うトピックで話すことを推奨していますが、皆さんもやってみてください。最初は30秒でもいいです。

トピックは「コンビニエンスストア」「富士山」など、自由です。どんなことを言おうかだいたい決めてから、英語で話します。言いたいことを、持っている知識を使って言う練習をしてください。ただ、話すだけだと何も残らないので、時々英文を書いてみるといいでしょう。

余力があれば、この1分間スピーチを録音して、後で聞き直してみてください。週末にまとめて聞いて、話し方のクセや他の言い方などを考えるだけで、とても力になります。

ビジネスで英語を話すのは当たり前の時代に

–仕事で必要なスピーキング力は、どんなレベルでしょうか。

平野 TSSTの評価軸に沿っていえば、レベル5以上の能力があれば仕事でのコミュニケーションはなんとかできると思います。海外出張して困らないのはレベル6以上ですね。ちなみにTSSTの受験者で最も多いのはレベル4のゾーンで、受験者の4割を占めています。まずはTSSTのレベル5を目指すと良いと思います。

北島 研修の場に行くと、さまざまな業種・職種の人が英語で話すことを求められていると実感します。ビジネスの構造が変わり、スピード重視で世界各地の担当者同士が直接英語でコミュニケーションをしています。仕事で英語を話すことは、ビジネスパーソンにとって、もはや当たり前のことなのだというマインドセットを持つことがまず必要だと感じます。

★TSSTのレベルについて(レベル概要より)★

LEVEL 3:暗記した決まり文句を単に繰り返すところから一歩踏み出し、時には知っている表現を応用して、短い簡単な文を自分で作り話すことができます。しかし、内容は自分自身に深く関わりのある事柄に限られ、全体の半分近くで意味が通じなくなるような文法・語彙選択の誤りが見られます。話を進めるのに大変苦労し、時間がかかることが多く、聞き手を待たせてしまいます。発音は母国語の影響が強く残っている場合が多く、何回か繰り返しても聞き手に理解してもらえないこともあるでしょう。

LEVEL4 :日常生活に関わることや自分自身に身近な話題について、簡単な質問に答えたり、自分から質問をするなどして、簡単な会話をすることができます。短い文をいくつかつないで意思を相手に伝えることができますが、適切な語順や語彙を探そうとして言いよどんだり、言い直しをすることが多くあります。自分から積極的に話すというよりは、聞かれたことに対しなんとか答えることに精一杯なことが多いです。発音や語彙にはまだ母国語の影響が強く見られる場合が多いですが、ノンネイティブの英語に慣れている聞き手であれば理解してもらえるでしょう。

LEVEL 5:日常生活に関わることや自分自身に身近な話題について、簡単な質問に答えたり、自分から質問をするなどして、簡単な会話をすることができます。自分から積極的に情報を加えて話すことができますが、文が長くなるにつれ、文法の誤りや言い直しが増えたり、言い終わるまでに時間がかかったりします。適切な語彙や表現を使えないことも多く、発音にもまだ母国語の影響が強く見られる場合も多いですが、ノンネイティブの英語に慣れている聞き手であれば理解してもらえるでしょう。

LEVEL 6:複雑ではないコミュニケーションに難なく対応することができます。英語が母語の文化圏で生活するのに必要な、食べ物・買い物・旅行などについて、具体的なやり取りができます。自分の意図することを特に苦労することなく文をつないで表現できますが、長く複雑な文になると誤りや自己訂正が目立ったり、より適切な語や表現を探そうとして流暢さが損なわれることもあります。時制の混在もまだ頻繁に見られます。発音はネイティブスピーカーに近い場合から母国語の影響が強い場合まで人によって差があります。

LEVEL 7:複雑ではないコミュニケーションに難なく対応することができます。英語が母語の文化圏で生活するのに必要な、食べ物・買い物・旅行などについて、具体的なやり取りができます。予期しない複雑な状況に置かれてもある程度は対処できますが、回りくどい話し方になったり、文法の誤りや言い直しが増え、うまくまとめることができないこともあります。詳細に踏み込んで話したり、使える構文や表現の正確さが優れていたり、ネイティブスピーカーに近い発音など、聞き手に理解してもらいやすくなる特徴を併せ持っています。

※相関係数はマイナス1からプラス1の間で値をとり、一方が上がるにつれ他方が下がるのを「マイナスの相関」、両方とも上がるのを「プラスの相関」といいます。相関係数0の場合は、2つは無関係となります。総関係数+-0.4~+-0.7を「中程度の相関あり」、+-0.7を超えると「強い相関あり」となります。今回、「スピーキング」と「リスニング+リーディング」という性質の異なる2つのものの相関係数として、0.69が出たということは比較的高い値が出ている、つまり、TOEICのスコアが上がればTSSTのスコアも上がる傾向にあるといってよいと解釈できることになります。TOEICがハイスコアな人ほど会話能力も高い傾向にあるのです。


取材・文: 原 智子
写真:アルクplus 編集部


アルク総研について

アルク教育総合研究所は、長年、日本の語学学習者に適した教材や学習サポート、スピーキングテストなどを開発・提供している株式会社アルクが、2015年に語学教育の専門研究機関として設立したものです。
調査・研究の対象は以下のとおりです。

  1. 学習者個人・企業・教育機関の学習に対するニーズや学習実態に関する調査
  2. 教材・学習法の研究と開発
  3. その効果検証など

調査・研究の成果は、『アルク英語教育実態レポート』として以下のページに公表しています。
▼調査レポート
https://www.alc.co.jp/company/report/

関連記事

  1. 東京オリンピック・パラリンピック、11万人のボランティア募集!
  2. 中野ブロードウェイ 外国人も引きつける「サブカルの聖地」、中野ブロードウェイの魅力
  3. 小泉清裕先生 2020年度から小学5、6年生で英語が教科に。今、日本の英語教育…
  4. 社員の英語力を伸ばすために――スティーブ・ソレイシィ先生が教える…
  5. ZEN English 外国人観光客に人気の英語坐禅クラスを体験
  6. Studyinnewzealand グローバルに活躍したい高校生10名をこの夏、NZ体験留学に無料招…
  7. Silvana Richardson 【英語の先生向け】日本人教師の役割とは?
  8. 上智大学 藤田 保先生 CLIL(クリル)って何? 上智大学の藤田 保先生に聞きました
PAGE TOP