国際接遇の達人に聞く、“日本での心地よいおもてなし”<後編>

日本での心地よいおもてなし

ビジネスのグローバル化が進み、海外から得意先や海外オフィスの関係者が来日し、アテンドするケースが増えています。どんな点に心掛ければ、素晴らしい「日本」を思い出深く演出できるのでしょう。お客さまをもてなすヒントを紹介した前編に続き、後編では注意したいことや鉄則を、通訳案内士のランデル洋子さんにお聞きします。


目次

  • 接待で仕事や休息を妨げない
  • 男性のお楽しみにもご注意を
  • 体験のある観光はきっと思い出に残る
  • ガイドも知らない「有名スポット」
  • 「理由を言って説明」が外国人接遇の鉄則

接待で仕事や休息を妨げない

海外からの大切なお客さまを、ホスト側の会社の人々が毎晩ディナー、2次会、3次会とご接待差し上げていたら、日に日に機嫌が悪くなっていきました。わけを伺ってみると、その方は、毎日ホテルに戻ってから仕事をしていたとか! 日本の真夜中は、アメリカなどでは、ビジネスアワーが始まる時間。メールなどを送っているうちに朝になり、日本の会社とのビジネスが始まるというような状況でした。「僕だってちょっとは休みたいんだ。わかってほしい」と言われ、接待側のお金も時間も、もったいなかったと痛感しました。

男性のお楽しみにもご注意を

自己責任に属することですが――。お客さま同士で夜の街に繰り出して、トラブルに遭うことも少なくないと聞いています。歌舞伎町などの女性のつくお店でグラス1杯ずつ飲んだだけなのに、10万円以上の料金を取られたり、ホステスにすっぽかされて、店の前で3時間待っていたり。しょんぼりとしている姿を見るのは、かわいそうですし、日本の印象が悪くなりかねません。盛り場を目指すお客さまには「この街には良くない店が多い」とか「客引きに気を付けてくださいね」といったアドバイスをして差し上げるのもいいでしょう。

体験のある観光はきっと思い出に残る

ビジネスの目的で訪れた方も、1日ぐらいは羽を伸ばして観光! 定番スポットも良いですが、私の経験では、「体験のある観光」は喜ばれます。着物を着たり、和菓子を作ったり。最近人気があるのは、東京・築地のお寿司屋さんが提供しているお寿司を作ってみる体験イベントだそうです。検索サイトで「築地 寿司 体験」などと入力すると、必ずいくつかヒットするはず。

日本での心地よいおもてなし

ガイドも知らない「有名スポット」

日本を訪れるリピーターも増えていく中で、私が聞いたこともない場所に行きたいと希望されることも最近はあります。「高円寺にあるジーンズのビンテージショップ」とか「ガラス張りで毎朝稽古を見学できる相撲部屋がある」とか。日本人の間でもあまり知られていないのに、ブログなどから広がって一部で有名になっているようです。このところ急増しているのが「日本の現代アートを見たい」という希望。スマホなどを片手に情報収集は欠かせません。相手のニーズに合わせて調べながら、同時に知識も増やしていきましょう。

「理由を言って説明」が外国人接遇の鉄則!

海外のお客さまを案内する。そのために配慮しなくてはいけないのは、大きく言えば「心地よくして差し上げる」ことです。打ち解けた空気をつくり、本音や希望が自然と口を突いて出てくるような人間関係を生み出すことが大切です。

さまざまな現実的制約の中で、“No!”と言うべき場面も出てきますが、「できません」と繰り返すだけでは、相互理解にはつながりません。「なぜ、できないか」その理由をきちんとお伝えし、その上で、「その代わりにこちらのアイデアはいかが」と提案するのが大事です。

日本人が苦手なのは“This is for you.(私は、あなたのために動いている)”と口に出すこと。謙遜は日本人の美徳だといわれますが、口にしなければ、外国人には絶対に伝わりません。「これは、あなたのためなんですよ。私は一生懸命考えましたよ」と繰り返すことで、きっと、あなたに感謝してくれると思います。

難しいからこそ、喜んでいただけた時の感動も大きくなるのが、国際接遇なのです。

ランデル洋子さん

NPO法人 通訳ガイド&コミュニケーション・スキル研究会 理事長。通訳ガイド養成の第一人者。外国企業の日本代表業務の経験もあり、多くの企業や自治体で異文化間コミュニケーション、国際接遇マナー、プレゼンなどに関する研修や講演を行う。著書に『外国からの客を迎える英会話――できるビジネスパーソンはここが違う!』(三修社)他。


取材・文: 吉橋 卓
イラスト: つぼいひろき


本記事は、『マガジンアルク』2015年7-8月号に掲載した記事を再構成したものです。

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