大学に求められる地域貢献――特色を生かした語学教育支援に取り組む明海大学

近年、日本の大学も海外と同じように社会貢献活動を求められるようになってきました。小学生と留学生が英語を介してコミュニケーションする国際交流、日本語を母語としない高校生への日本語学習支援など、積極的に地域貢献を展開する明海大学(千葉県浦安市)の取り組みについて、高野敬三副学長にお聞きします。


交流会では、留学生と小学生が各国に伝わる遊びを楽しんだ


地域社会への貢献は大学の重要な使命

――明海大学では、地域の教育に貢献することを目的とした「地域学校教育センター」を通してさまざまな活動をしているそうですね。このセンターは先生が立ち上げられたそうですが、きっかけは何だったのでしょうか?


高野 私は長年にわたって東京都の行政の立場で、小中高等学校の英語教育に携わってきました。そういうバックグラウンドのある私が明海大学に着任することになった時、自分が大学でやるべきことは大学が持っている教育研究の成果を活用して、地域の教育に貢献することではないかという考えに行きつきました。こうした考えを学校法人明海大学に話して設置していただいたのが、この地域学校教育センターです。


皆さんよくご存じのように、大学とは最高学府であり「学問研究」や「教育」が行われている機関ですが、大学の機能はそれだけではないと、文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会は述べています。大学には「世界的研究教育拠点」や「高度専門職業人養成」など、7つの機能があるとされています。私は、その中で、とりわけ重要な機能は「社会貢献機能(地域貢献、産学官連携、国際交流)」だと思います。


この地域学校教育センターは2016年4月にスタートしたばかりですが、明海大学のキャンパスがある浦安市だけでなく、千葉県や東京都にある小学校、中学校、高校や、それらを所管する機関、地域社会などと積極的に連携しながらさまざまな活動を行っています。



足立区との連携で実現した「明海大学あけみ英語村」

――これまでの地域学校教育センターの活動の中でも、11月に行った「明海大学あけみ英語村」は特に注目度が高いようです。


高野 明海大学あけみ英語村は、足立区との連携によって2017年度に初めて実施した活動です。小学校英語は2020年度より3、4年生で外国語活動として、5、6年生で教科として始まりますが、それに向けて今、どこの自治体でも英語教育が大きな課題となっています。


特に足立区は、東京都が実施する中学生の学力テストなどで他教科に比べて英語が低い傾向があると聞いており、外国語学部を持つ本学に、子どもたちの英語力を底上げするための支援が求められました。


そうした中で足立区と本学の両者が検討を重ねて立ち上げたのが、明海大学あけみ英語村です。子どもたちの英語力をアップさせるためには、楽しみながら英語を話せるような体験をさせ、自分の英語が通じたという達成感を得ることが大切です。そこで本学の留学生たちとの交流を通して、自然な形で子どもたちが英語を使い、満足できるような機会をつくっていきたいという思いで企画しました。


当日は足立区立西新井小学校の5年生が87名参加し、それに対して本学で学ぶ16カ国の留学生約80名と日本人学生39名が対応しました。子どもたちは、留学生と英語でコミュニケーションを取りながら一緒にお弁当を食べたり、留学生たちの母国の遊びを教わったりして、行動を共にしました。短い時間でしたが、子どもたちにはとても良い体験になったようです。


――イベント実施後のアンケートは、90パーセント以上の子どもが「楽しかった」と回答していました。そして先生方の狙いどおり、「英語が通じてうれしかった」「もっと外国語を勉強したいと思った」という感想を持った子どもたちが多いようです。活動は今後も定期的に続けていきますか?


高野 来年度も実施します。今のところは半日もしくは1日のみの予定ですが、将来的にはもう少し別な形のものも検討していくかもしれません。対象も小学生に限らず、いろいろな形で地域や社会に貢献できるのではないかと思っています。


子どもたちの感想には、「外国の人ともっと交流したいと思った」「困っている外国人を
見つけたら外国語で案内して、仲良くできる人になりたい」というものも見られた


都立高校で学ぶ外国籍の生徒に日本語を教える

――英語教育以外の取り組みには、どのようなものがありますか。


高野 都立高校に外国語学部日本語学科の学生を派遣して、日本語教育の学習を支援しています。皆さんもご存じのように、最近は日本語を母語としない外国籍の子どもが増加しています。また、日本国籍の子どもでも、家庭内の言語が外国語である場合もあります。文部科学省では公立学校に通う児童生徒で日本語指導を必要としている数は、全国で4万人を超えると発表しています。


都立高校の中には特例措置を設けて、そういった生徒を特別枠で積極的に入学させているところもあるのですが、実は受け入れ後、言葉の問題で生徒が授業についていくのが難しくなるケースが少なくないのです。


一方、本学には日本語を母語としない方に日本語を教えるための研究、勉強をしている日本語学科の学生たちがいます。それで現在は、都立高校4校に学生たちが出かけて行き、日本語を母語としない高校生に放課後や長期休暇を利用して、日本語を教えています。この活動に関与している学生は、相当な人数います。


――まさに日本語学科を持つ明海大学だからできる活動であり、素晴らしい取り組みですね。


高野 他にも国際交流の機会として、本学の留学生と、中学生、高校生との交流会を年に1、2回設けています。


本学には約20カ国からの留学生が500名ほどいるのですが、希望者はボランティア登録をして、行政や学校から要請があれば彼らを派遣します。例えば、小学校や中学校で交流会を行う時は、留学生が自国の文化や歴史などを紹介し、児童生徒に日本との違いに気付いてもらうことも目的にしているのですが、参加する留学生は必ずしも英語を話す学生ばかりではありません。ボディーランゲージなども使いながら、日本語と母語でやっています。先生が教壇に立って教えるのではなく、子どもたちと年齢が近い学生が話すため、子どもたちはとても興味を持ってくれるようで、評判は上々です。



――2月12日には、英語教育支援と日本語指導支援を軸に、学校教育を充実させるための大学の地域支援について考える「2018明海大学『大学と地域連携の未来』シンポジウム」が開催されますね。


高野 これまで地域学校教育センターで行ってきた活動の紹介を中心に、これからの社会で大学に求められる地域支援の在り方をみんなで考える機会にしたいと思っています。興味のある方ならどなたでも参加いただけますので、ぜひ多くの方にお越しいただきたいですね。


2018明海大学『大学と地域連携の未来』シンポジウム
日時:2月12日(月・振替休日)13:00~16:30(開場12:30)
場所:明海大学浦安キャンパス
定員:200名(先着順)
申込:明海大学ホームページのTOPICS、2017年12月06日、「2018明海大学『大学と地域連携の未来』シンポジウム」の開催についてをクリックし、申し込みフォームに必要事項を記入して送信
 
問い合わせ:明海大学企画広報課
TEL 047-355-1101


違っている人を排除するのではなく、認め合うことが大事

――先ほど先生もおっしゃったように、最近は日本で暮らす外国人も増えていますし、旅行者も年々増加しています。そういった社会で外国人と上手に付き合っていくために一番大切なのは何だと思われますか。


高野 最近はビジネスの世界でもよくダイバーシティ=多様性という言葉を耳にしますが、ますます国際化が進む日本社会で生きていくために大事なのは、人は自分と違う、違っていいんだという考えを持つことだと思います。


日本人同士でも、考え方や価値観が違う人は大勢います。それを排除するのではなく、「違うから楽しい」と違いを認め合う。そして肯定的に相手を理解しようとする。これからの日本を支える若者たちには、ぜひそういう意識を大切にしてもらい、真の意味での国際人になってほしいと願っています。


高野敬三

明海大学副学長。教職課程センター長。地域学校教育センター長。

東京都立高等学校で教鞭を執り、東京都教育委員会指導主事、同高等学校教育指導課長を経て、東京都立飛鳥高等学校長。その後、東京都教育委員会指導部長、同理事、東京都教職員研修センター所長を歴任し、2013年より東京都教育監、2015年3月退職。同年4月より明海大学外国語学部教授。文部科学省「不登校に関する調査研究協力者会議」「教職課程コアカリキュラムの在り方に関する検討会」「中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会」委員。


取材・文:榎本幸子

写真:横関一浩

写真提供:明海大学

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